正式リリースから2年 サイト内商品広告ソリューション「S4Ads」
大手ECショッピングモールで、見ない日はなくなったと言っても過言ではないサイト内商品広告。消費者は商品に出会うきっかけが増え、出品者は商品を訴求する場が増え、サイト運営者は収益アップにつながると三者にとってメリットがあることから、ECにおいてなくてはならないサービスになりつつある。
企業のデジタルトランスフォーメーション推進を支援し、アドテク企業としても知られるSupershipは、EC運営者がサイトに商品広告の出稿機能を容易に組み込むことができる「S4Ads(エスフォーアズ)」を2018年11月28日に正式リリース。サイト内検索ソリューション「Supership Search Solution」、通称「S4(エスフォー)」のノウハウを活かして生み出されたもので、au PAY マーケット(当時はWowma!)では「S4Ads」を正式リリース前から導入し、「プラチナマッチ広告」として提供している。
サイト内商品広告ソリューション「S4Ads」の主な特徴
- S4をベースとした、高いCTR・ROASを実現する高精度広告配信エンジン
- 予算切れや在庫切れと連動した自動掲載コントロール
- ウェブ・アプリ両方への実装が可能なAPI配信機能
- 予算設定と商品入札だけで広告出稿が可能な、サプライヤーが使いやすい出稿機能
- 手作業での集計が不要な実績集計・レポート機能
S4Ads導入から3年、プロダクト開発のきっかけや技術的な特徴、サイト運営者、出店者、消費者にもたらすメリットについて、auコマース&ライフ 山田豊氏とSupership 佐野宏英氏に対談してもらった。
au PAY マーケット×Supership対談 導入から3年間を語る
――まずはおふたりの自己紹介からお願いします。
山田(auコマース&ライフ) auコマース&ライフは、消費者向けのEコマース「au PAY マーケット」を提供する会社です。au PAY マーケットは、日用品やグルメ、ファッション、インテリア、家電など、たくさんの商品やお店と出会える総合ショッピングモールです。auをご利用でないお客様も利用可能で、Pontaポイントがつかえるだけでなく、ご購入金額に応じて最大15%のPontaポイントの還元もあり、おトクにお買い物いただけます。
私は、楽天、ミスミ等を経て、2017年にKDDIコマースフォワード(現:auコマース&ライフ)に入社しました。現在は、au PAY マーケットの開発責任者をしています。
佐野(Supership) Supershipは、正確かつ膨大な量を誇るデータと、そのデータを使いこなすためのテクノロジーをもとに、データコンサルティング、DMP提供、AI構築、広告配信プラットフォームの提供を行うことで、企業のデジタルトランスフォーメーションをワンストップで実現する会社です。KDDIグループにおいては、オープンなインターネットビジネスの戦略子会社としての位置付けです。
私は、スマートフォン向け動画広告配信プラットフォームを提供するアップベイダーを創業し、2015年KDDIグループにジョインしてSupershipを立ち上げました。広告配信プラットフォーム事業責任者やDMP事業責任者として、国内大手代理店と広告商品やDMPの共同開発プロジェクトを立ち上げ、現在はデータソリューション事業の責任者を務めています。
Supershipでは、auのポータルサイトである「auポータル」に検索エンジンを提供していて、au PAY マーケットからも検索エンジンをはじめとするサービス開発の相談を受けていました。その流れから、今回のサイト内商品広告ソリューション「S4Ads」の開発に着手することになりました。
――ECサイト内商品広告については、海外ECプラットフォームが先んじて導入して以来、注目のサービスです。S4Ads導入以前、商品広告についてどのようにお考えでしたか?
山田 当時、他モールでは、出店者様が出稿される運用型広告のシェアが拡大していました。au PAY マーケットはその波から遅れていたため、運用型広告の導入は急務だと感じていました。一方で、他モールのプロダクトは、一定の運用知識が必要とされる商品設計になっていました。後発だからこそできるだけわかりやすく、運用負担が少ないプロダクトを導入したいと考えました。また、可能な限り自然検索に連動させたいという思いもあり、検索エンジンの提供を受けているSupershipに協力を依頼しました。
佐野 提供していたS4に派生する形で、SSP/DSP等広告の知見を活かし、さらにau PAY マーケットの成長に貢献できることはないか考えているところでした。当時、海外ではすでにトレンドでしたが、日本においても、ウェブ検索からECサイト内検索への需要の変化が見られていましたし、サイト内商品広告を提供することで、ECサイトは広告を掲載するメディアになり、EC運営者にプラスアルファの収益を生むことができます。こうした点からサイト内商品広告は必須のサービスであると考えました。au PAY マーケットへ提案した際もポジティブな反応を受けました。
ユーザーが求める情報を表示する、価値ある広告プロダクトが完成
――au PAY マーケットで新たに商品広告を提供するため、S4Adsをともに開発していったわけですね。サービスの第一段階が完成した時点での感想をお聞かせください。
山田 プラチナマッチ広告リリース以前は、純広告のみを提供していました。サイト内商品広告は入札方式であり検索連動型であることから、より広い面に消費者のニーズに合った出稿ができるようになるため、出稿される出店者様にとって良いサービスになるのではという感想を持ちました。
佐野 au PAY マーケットにおいては、新しい広告商品を作ることによって、サイトを運営するauコマース&ライフ、出稿される出店者様、そして消費者となるユーザーにとって新たな価値を提供することを目指しました。出店者様にとっては、日々ユーザーが訪れる、媒体力が強いECサイトというメディアにおいてプロモーション手段が増えます。ユーザーにとっては、検索という能動的な行為の後に関連性が高い商品の広告が表示されることで、探していた商品にたどり着きやすくなります。それが良い広告効果を生み出し、EC運営者に収益となって返ってきます。
また、Supershipでは、アドベリフィケーションベンダーのMomentumをグループ内に持つなど、デジタル広告の透明化に向けたアプローチを行い、不適切なクリエイティブやアドフラウドを排除し、デジタル広告の健全化を図っていきたいという想いを持っています。S4Adsは、ユーザーの行動が起点となっていることからUXとしても親和性が高く、商品という明確なもの、かつ、ECサイト内で審査されてから掲載されている画像がそのまま利用できることから、クリーンでユーザーフレンドリーなクリエイティブで広告を配信することができます。このような広告商品を開発したことで、デジタル広告の透明化に向け、ひとつの価値を生み出すことができたのではないかと考えています。
――プラチナマッチ広告のリリースにあたり、苦労した点やSupershipのサポートで印象に残っていることはありますか?
山田 プラチナマッチ広告に必要となる商品データを、検索エンジンを利用するためにすでに共有していることから効率化を図ることができました。また、出店者様向け・社内向け管理画面をSupershipに準備してもらい、当社では掲載面に広告の枠を用意するだけで済んだことから、導入ハードルは低かったと言えます。
佐野 検索エンジン用の商品データから広告クリエイティブを作ることができますし、出店者様が入札される際には、単価を見てボタンを押していただくだけで済むなど、できるだけ運用負荷をかけないことを意識しました。また、Supershipの持つ、検索・広告両方の知見を活かし、広告売上に寄与する機能や掲載場所についても提案し、流通額や収益アップに貢献していきました。このようなコンサルティングができることもSupershipの強みだと考えています。
気持ちの良い提案とチャネルの組み合わせで、豊かなEC体験の提供へ
――導入から3年、出店者や消費者からの反応はいかがですか? また、それを受けての抱負をお聞かせください。
山田 初年度から、昨年度対比で2倍、3倍と売上が伸びています。定期的にご利用いただいている出店者様が増えていますね。もっとも重要な数値のひとつであるROASについても、昨年度対比で倍近くに改善できています。当初の想定よりも、出店者様にとってはるかに良いサービスになっていると言えるでしょう。たとえば機能面では、ワンクリックで入札ができるうえ、一度入札するとその後は自動で入札が行えますし、商品別にレポートを閲覧できる仕組みも整っています。検索連動型だけでなくレコメンド広告も追加したことで、掲載できる面が広がりました。レコメンドについては、検索エンジンと同じエンジンを使っているため、効果も出やすくROASにも影響しているのでしょう。
消費者のお客様にとっては、求めていない広告が表示されるといったことが導入当初から少なく、検索に連動した情報を出すことができていました。消費者の行動データから見ても明らかです。
かなり良いプロダクトになっていますが、これからやっていきたいことはいくつかあります。たとえば、 ROASを設定してそれ以上の成果を出し続けられるようにしていくこと、現時点ではオウンドの媒体のみでの展開であるため、露出先をKDDIグループの媒体を中心に外部まで拡大していけないかといったことです。
佐野 ベースラインとして良いプロダクトができたと実感しています。昨今のマーケティングにおけるキーワードとして「パーソナライズ」がありますが、ユーザーにとって気持ちの良いレコメンドと広告をセットにした提案を行うべく、機械学習やディープラーニングなどの技術を用いてアルゴリズムの高度化を図っていきたいと考えています。一方で、あまりにきっちりとユーザーが求めるものに合わせすぎると、出店者様にとっては露出が減ってしまうことにもなりかねないため、そのバランスを取る必要があります。技術的な開発も必要になりますが、Supershipが今後、取り組んでいくべきテーマだと考えています。
また現時点では、広告主は出店者様に限られますが、たとえばメーカーなど商品提供企業様にも広告主として活用いただけるような仕組みを作っていく予定です。メーカーが広告主になることで、メーカーは自社商品が売れる、出店者様は取り扱う商品が売れる、Win-Winな機能になると考えています。広告主様やau PAY マーケットの流通額をアップし、ROASも上げていく。きちんとサポートさせていただくべく、コンサルティングやオペレーションの代行も含めた高度なサービスに仕上げていきたいですね。
――今後のEコマース業界を見据えたご展望をお聞かせください。
>山田 現状では物販が中心となっているところ、2018年に合併した「LUXA(ルクサ)」の体験型商品を、au PAY マーケットにさらに取り込んでいこうとしています。S4Adsを活用した新たな商品広告に関しても、体験型商品を含め、消費者の皆様にどのような体験を提供するべきか、そのうえでどの商品をご提供すれば良いかという視点から、出会っていただけるようなものを作っていきたいと考えています。
au PAY マーケットは、より多くのお客様に、お買い物を通じて出店者様と出会っていただく場です。そのためにも、S4Adsは重要な役割を担ってくれています。今後はより、購買データやユーザーデータを利活用した自動入札など、出店者様に負担のかからないサービスに進化させていく所存です。
佐野 今、広告を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。CookieやユーザーIDの取り扱いが難しくなる中で、ますます多様化するチャネルを複合的に活用できなければ、ユーザーとの適切なコミュニケーションは難しくなっていくでしょう。さまざまなチャネルを活用するのに加え、実店舗との在庫とも連動し、適切なUXを提供できるよう、新しい、総合的なECサイト様向けのソリューションを企画し、開発していこうとトライしているところです。実店舗をお持ちの企業様にもお使いいただける、ECのトータルソリューションを目指していきます。
――本日はありがとうございました。
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