「SNS疲れ」はウソ。若者にとってSNSは日常のコミュニケーション
崔:一時期、「SNS疲れ」という言葉がニュースなどでよく取り上げられ、「若者は“映え”への執着から精神的に疲れてしまい、ナチュラル志向に切り替わった」と言われていましたが、これは間違った解釈だと思っています。
若者にとってのSNSは、自己表現の場である以前に、友達やフォロワーとのコミュニケーションの場であり、我々にとっての電話やメールの感覚と一緒なんです。
長田:友達と電話をするのにいちいち頑張らないのと同じで、SNSが生活に溶け込んでくるにつれて疲れることも減っていきますよね。
さらに、疲れないような距離感の調節も自らできるのが今の若者です。たとえば、2018年頃から、「知り合ってすぐにLINEを交換するのはちょっと違う。まずはInstagramのアカウントを交換し、ゆるい距離感で仲良くなっていきたい」といった話を若者からよく聞くようになりました。お互いにとって心地よい関係を作っていくために、相手との距離感をツールの使い分けによって調節しているんです。
最近、若者は友達同士でInstagramライブを行い、知り合いや友達の友達など、ゆるく繋がっている人たちに対して配信をしています。「配信しているから、暇だったらコメントしてね」といった感じで、返事を強制しない形で接点を作り出しているんです。
崔:大人からすると、Instagramライブはインフルエンサーが一般ユーザーに向けて配信するイメージが強いですが、若者たちのあいだでは身近な人とのコミュニケーション手段としても使われているんですね。
【2015~2020年 若者トレンドのポイント】・「若者のSNS疲れ」という解釈はナンセンス。コミュニケーションツールであるため、「疲れる」といった感覚はなくなっている
・お互いが心地よく繋がっていられるよう、相手との距離感を調節するスキルを持っている
・SNSツールを活用し、1on1ではない“ゆるい”コミュニケーション環境を自ら作っている
まとめ:SHIBUYA109 lab.所長コメント

SNSに投稿されている写真や動画には、彼らの“今”の価値観がダイレクトに反映されており、若者が共感できる“映え”の定義が日々変化しているのが見て取れます。
こういった変化に気づかないまま企業のマーケティング施策を進行し、SNS上で若者へのアプローチ方法を誤ってしまうのはよくあることなのではないでしょうか。若者が共感できるニュアンスを捉え、ブランドや商品をチューニングしていくことは非常に重要なポイントです。
また、SNSネイティブの彼らにとって、メッセージのやり取りだけでなく、写真や動画の投稿もコミュニケーションの一部だと言えます。SNSのキャンペーン等では、そのキャンペーンが彼らのコミュニケーションの障害になっていないか、特に気を付けていきたいところです。