トレンドの変遷から“若者の価値観”を探る
本企画では、SHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」が、若者から圧倒的な支持を集めるARカメラアプリ「SNOW」を展開するSNOW Japan協力のもと、ファッション、コスメ、カルチャー、エンタメ、アプリ、SNSの観点から、5年間(2015年~2020年)のトレンドの変遷をたどり、若者の価値観がどのように変化したのか、そして、今後若者がどう変化していくのかを分析します。
第3回となる今回は、5年間におけるSNS・アプリのトレンド変遷について解説します。若者たちのSNSやアプリでの「自己表現」の在り方は、どのように変化しているのでしょうか。
左:SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長 長田麻衣
総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て、2017年にSHIBUYA109エンタテイメントに入社。SHIBUYA109 マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround20(15歳~24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
右:SNOW Japan 事業統括 崔智安(チェ・ジアン)
テレビ番組やPVの演出などを経て、2015年ARカメラアプリ「SNOW」の立ち上げに参画。日本における写真や動画の“盛る”文化を作る。他にも3Dアバターソーシャルアプリ「ZEPETO」や動画編集アプリ「VITA」など様々なジャンルのアプリをリリースしている。
“ビジュアル”コミュニケーションが急激に進化
長田:今回の調査では、SHIBUYA109 lab.の調査データとあわせて、実際に若者たちへのヒアリングも行いました。下記は、SHIBUYA109 lab.独自ネットワーク内の学生4名(2015年~現在、高校生だった学生対象)から聞いた話を参考に、SNSやアプリのトレンドの変遷を年表にまとめたものです。
長田:こうして見ると、本当にたくさんのアプリやSNSが誕生しましたね。
崔:特徴的なのは2016年のPokemon GOの登場ですね。Pokemon GOの流行によって、「AR」という言葉も定着し、空間認識とグラフィックを組み合わせる技術が、一般的なARの代名詞になりました。SNOWでも、2015年にローンチした当時から顔認識という形でARを使っています。
長田:ARの技術のおかげで自撮りの「盛り」が実現されているんですね!
崔:年表にはないですが、日本で「自撮り」という言葉が一般化されたのが2015〜2016年あたりでしたね。
長田:当時、自撮りをするためのセルカ棒が若者のあいだでトレンドになっていましたね。
崔:一人でも写真を撮り、SNSで“ビジュアルコミュニケーション”を図ることが当たり前になりました。これは、SNOWが開発された背景でもあります。
長田:なるほど。Twitterなど、テキストがメインのサービスは2000年代から盛り上がりを見せていましたが、画像を使ったコミュニケーションは、この5年で一気に多様化しましたよね。
崔:そうですね、そして2018年~2019年頃には「カメラアプリの激戦時代」に突入しました。SNOW Japanでも、ビューティー自撮り機能にのみ特化した「SODA」など、ニーズに合わせてSNOW以外にも様々なカメラアプリをリリースしています。
スマホカメラの画質も5年間で飛躍的に向上しました。画質がいいと毛穴なども鮮明に写ってしまうため、「デフォルトカメラで撮るのは怖い」と言う人も増えています。
長田:若者と話をしていると、シーンに合わせて使い分けたり、彼氏のスマホにカメラアプリを入れさせたり、当たり前のようにカメラアプリを活用しているのが伝わってきます。カメラアプリはもう完全に若者の生活に定着したと言えるのではないでしょうか。
崔:いわゆるショートムービーのプラットフォームでいうと、Vineが先駆者となり、その後、MixChannelなど様々な動画アプリが出てきました。
現在はTikTokが広く普及していますよね。動画アプリのマーケットは徐々に成熟しつつあるものの、まだまだ拡大しています。
長田:カメラアプリと比較すると、動画アプリは流行のサイクルが短くなっていますね。
【2015~2020年 若者トレンドのポイント】・ARの顔認識技術により、顔を「盛る」カルチャーが誕生。「自撮り」という概念がさらに広がった
・2018年~2019年頃には「カメラアプリ激戦時代」が到来
・動画アプリはトレンドサイクルが早め。現在もマーケットは拡大中