“クリエイティブ”なトレンドや遊びが活発に
長田:自由な時間が多かった分、新しく何かを作る若者が多く見られました。トレンドや遊びに見られる若者のクリエイティビティは、自由な時間が生み出しているんだな、と今まで以上に感じました。
崔:加えて、彼らデジタルネイティブがクリエイティブな活動を好むのは、みんなと同じように何かを作ることで、共感が生まれるからという理由もあると思います。
お菓子を作り、SNSでシェアをするまでの過程で、自分と友達が同じ体験をしているのが感じられるので、同じ時間を過ごした気分になれるのではないでしょうか。
トレンドに乗ることで、疎外感から逃れられるというメリットがあるんですよね。興味がなくてもやってみたら、人と話せるようになって仲間外れ感が減りますし、コロナ禍では、トレンドに乗ることが社会や周囲のコミュニティと繋がるための重要な接点になっていたと思います。
長田:みんなと同じようにダルゴナコーヒーを作ることで、意識しないうちに孤独感を解消していたのかもしれませんね。どんなトレンドも、近年はSNSに投稿することありき。すべての行動は友達にシェアして完成、という流れがあります。

長田:SNS投稿を「自己顕示」や「自慢」など否定的に捉える方もいますが、若者たちにとっては「おしゃべり」のような感覚に近いのだと思います。
コロナ禍では、SNSで自分の行動をシェアし合う、この“おしゃべり”に救われた若者もきっと多いはずです。
【2020年以降の若者トレンドのポイント】・自由な時間が増加したことで、若者のクリエイティブなトレンドや遊びが活発に
・コロナ禍では、SNS上のトレンドに乗ることが社会との接点になっていたと考えられる
“オンラインで繋がる日常”を知り、価値観が変化
長田:オンライン上での人間関係については、コロナ禍で価値観がアップデートされたのではないかと思います。
崔:学生って本来、クラス替えや進学のように、交友関係が増える機会が多いはずですが、現在それが失われているので、すごく切ない気持ちになります。
長田:そうですね。でも当の本人たちは、SNSを使って同じ大学の子たちとハッシュタグで繋がったりもしていますよね。上手にデジタルを駆使し、自分たちのやり方・生き方を作り上げ、乗り越えようとしている印象です。
まだ直接会ったことはないけど、クラスメイトとZoomで仲良くなったといった話はよく聞きます。学校が再開し、リアルで初めて会ったときに「はじめまして」なのかというとそんなこともなく、昨日も会っていたかのように接しています。
「はじめまして」がオンラインでも人間関係をきちんと育むコミュニケーションは、今の若者世代のほうがより自然にできるのかもしれませんね。

崔:そうですね。背景には、オンライン上の匿名性が少しずつ和らいで、リアルとの関係性が変わってきたという状況もあると思います。
これまでは、リアルとオンラインが別々の道を歩いてきたから、「オンラインは危ない場所」という認識がありました。でも、今は「○○大学○○学部の○○です」と明かすなど、リアルのコミュニティと混ざり合った状況でSNSを利用していますよね。
長田:そうですね。入学前からSNSで友達を作るといったカルチャーは、何年も前からありました。
若者を中心にオンラインで育まれてきたカルチャーが、この未曽有の事態において、彼らの助けとなり、大人のあいだでも一般的になっていきましたね。
崔:これからは、むしろ私たちが若者たちのカルチャーを理解し、取り入れていかないといけないですね……。
長田:本当にそう思います。コロナ禍では、オンライン上でのコミュニケーションが増え、「目的を決めてお出かけをするようになった」といった話も若者からよく聞きますね。
「せっかくオンラインで友達と会うから、しっかりプランを立てて遊びたい」と考える一方で、お家ではLINE通話を繋ぎっぱなしにしたまま、各々好き勝手にゲームなどを楽しんでいたりします。
オンラインでのコミュニケーションが軸足となり“リアルな場=非日常、オンライン=日常”といった状況が生まれています。
【2020年以降の若者トレンドのポイント】・コロナ流行を経て、オンライン上で人間関係を築くカルチャーが若者のあいだで定着
・SNS上での匿名性が薄れつつあり、オンラインとリアルのコミュニティが混ざり合っている