マーケティングコンサルタントが語る「コロナ不況」対策
今回紹介する書籍は、『不況を乗り切るマーケティング図鑑 成功企業16社でわかるサバイバルマニュアル』。著者は、マーケティングコンサルタントとして活動する酒井光雄氏です。
酒井氏は、日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選出された経験を持ち、また日経BP社が主催する「日経BP Marketing Awards」の審査委員を長年務める人物。『デジタル時代のマーケティング・エクササイズ』(プレジデント社)の執筆、『全史×成功事例で読む 「マーケティング」大全』(かんき出版)の編著をはじめ、書籍等を通じたノウハウの発信も行っています。
今回紹介する書籍では、企業が今まさに直面しているコロナ不況がテーマ。酒井氏がコロナ禍で効果を上げるための対策を紹介しています。
コロナが経済や事業の存続に影響しているのはもはや紛れもない事実ですが、業界によって影響の程度や課題が異なり、一口にコロナ不況と言っても読者によって想像される事象は様々だと考えられます。酒井氏は本書においてどのような課題を前提に、対策を語っているのでしょうか?
相次ぐ経営破綻や買収……変わってしまった「社会の前提」
酒井氏は本書のイントロダクションにおいて、コロナによって経済の落ち込みが長く続くだけでなく、「社会の前提がガラリと変わる」と述べています。
変化のひとつは、既にビジネスモデルにほころびのあった企業が致命傷を負ってしまうこと。実際今回のパンデミックにより、経営破綻する企業が国内外を問わず続出しているといいます。さらに、それら弱体化した企業を安価に買収する企業の出現や、中小企業を支援するクラウドファンディングなど、困っている組織や法人への支援活動の活発化が進んでいくことも予想しています。
また、シャープによるマスク生産や、トヨタ自動車のフェイスシールド生産にも見られるように、社会に必要とされる商品やサービスの開発と供給を迅速に開始する動きにも言及。感染予防のための商品に限らず、在宅ワークに使うIT機器などの需要が高まる中、ビジネススーツや化粧品などの既存需要が減少することにも言及しています。
酒井氏は、これらの社会変化を提示した上で、その影響を受ける企業は先手で対応策を講じる必要があると語っているのです。
事例から見る対策8タイプ 異業種でも活用できる
本書で語られる対策は、次の8つのタイプに分類され、それぞれにつき2社の事例、合計で16社の事例が紹介されています。
<8つの不況対策パターン>
(1)不況耐性型
事例:サカタのタネ、ケンタッキーフライドチキン(2)適者生存ダーウィン型
事例:ドン・キホーテ、トレジャー・ファクトリー(3)顧客との関係づくりを強化し、需要を創造するプロモーション型
事例:JR東海、無印良品(4)キャッシュ・コンバージョン・サイクル短縮型
事例:Apple、Amazon(5)不況逆手型
事例:アパグループ、ニトリホールディングス(6)リアルとバーチャルの融合最適型
事例:Peloton、Bonobos(7)ダイレクトリクルーティング型
事例:Linkedin、LAPRAS(8)働き方支援型
事例:タニタ、助太刀
たとえば(1)不況耐性型では、ケンタッキーフライドチキンがコロナ禍の中でも倒れない耐性を平時のうちに作り上げた手法を解説。「日常使い」のブランドイメージ形成や、利便性を向上させたシステム導入などについて触れています。また、(6)リアルとバーチャルの融合最適型では、米国で人気を集めるフィットネスのサブスクリプションサービス「Peloton」や、メンズファッションのD2Cブランド「Bonobos」から、時代に適応する新たなビジネスモデルの仕組みを紐解いています。
さらに本書で特徴的なのは、事例とは異業種でも応用できるノウハウをまとめたコーナーをタイプごとに設けている点です。ケーススタディではどうしても自分の業界・業態に重ねにくいという人にも理解しやすいよう、重要なエッセンスを抽出しています。
コロナ禍による経済不安の中で、これから自社にできることは何なのか。そのヒントを本書から見つけてみてはいかがでしょうか。