インターネットの登場により顧客企業の行動は変化した
今回紹介する書籍は、『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』(すばる舎)。著者は、株式会社才流 代表取締役社長の栗原 康太氏です。
栗原氏は2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年にBtoB営業・マーケティング活動のオンライン化支援を行う才流を設立し、代表取締役に就任。「才能を流通させる」をミッションに掲げ、カンファレンスでの登壇、業界紙での執筆、取材など精力的に活動されています。
デジタル化が加速する中、BtoBの分野でも同じようにデジタル化の波が起こっています。そんな中、栗原氏は「見込み客の情報の取得先が、企業の営業パーソンからWebサイトへと移り変わっている」といいます。一体どういうことなのでしょうか?
購買プロセスの57%は営業担当者に会う前に終わってる
2010年ごろ、BtoB企業の中では「マーケティング部門」は重要視されていませんでした。ほとんどの企業で郵送やFAXによるDM、展示会、業界紙への広告出稿などといった打ち手しか存在しなかったためです。
しかしこの10年で多くのビジネスパーソンが検索エンジンで情報を探し、SNSで情報を得て、ECサイトやフリマアプリで必要なものを買ったり不要なものを売ったりすることが当たり前になりました。こうしたことはBtoBのビジネスパーソンも行っており、実際の商取引の分野においても、オンラインチャネルの重要性が増しています。
米国のコーポレート・エグゼクティブ・ボードが発表したThe Digital Evolution In B2B Marketingの中で「BtoBでは顧客の購買プロセスの57%が、営業担当者に会う前にすでに終わっている」という事実が明らかにされているといいます。調査が示したものは、現代のBtoB市場の顧客はインターネットを活用して自ら情報収集を行い、自社が抱える課題の解決策を自分で見つけ、さらにベンダー選定まで行っているといえます。「顧客が自ら行うベンダー選定の段階で選ばれなければ営業パーソンは声すらかけてもらえないということです」(栗原氏)
これは「顧客とのタッチポイントが以前より増えている」という観点から実に喜ばしい動きともいえます。つまりマーケターが会社の売り上げ・利益に貢献しやすくなってきており、マーケターの腕次第で顧客とのコミュニケーションの質を大きく変えられるチャンスが増えています。さらに、昨今の新型コロナウイルスの影響によりテレワークが推進され、デジタル化は企業存続のための必須条件となってきました。だからこそBtoB営業・マーケティングプロセスのデジタル化が重要になっているのです。
3年間でリードが30倍になったのにはワケがある
システム開発を行うM社は、栗原氏のマーケティング支援により、テレアポを使ったアウトバウンド施策中心から、顧客誘因型のインバウンド施策を中心としたマーケティングに切り替えました。結果リードの数は約30倍、業界2位に躍進しました。栗原氏は、その1連の流れを6つのステップに分け、解説しています。
STEP1 経営課題・戦略に沿ってマーケティング活動の目的・目標を設定する
STEP2 顧客の解像度が高いメンバーをチームに入れる
STEP3 代表的な顧客をリストアップし、購買プロセスを把握する
STEP4 自他の現状とボトルネックを把握し、勝ち筋を見つける
STEP5 短期施策と中期施策に並行して取り組む
STEP6 定例会議で進捗を確認し、追加施策を検討する
本書ではBtoBマーケティングの基本的な考え方・ケーススタディをベースにBtoBマーケティングの戦略や事例、解決までのステップが書かれています。図も多用されているため今すぐ必要な知識をパッと理解することができます。
マーケターはもちろん、法人営業でオンラインでの営業の方法を考えている方や経営者には特にお薦めの書籍です。オンライン化の加速が止まらない今こそ、本書を通してオンラインで会社をグロースさせていく方法を理解し、受注するために必要なことを見直してみるのはいかがでしょうか。