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MarkeZine Day 2025 Retail

事業成長につながるテレビCMを作る秘訣

テレビCMの成功と失敗、カギは経営者と事業の個性 クリエイターも高度なビジネス理解が必要な時代に

事業を成長させるために、テレビCMで見栄を張るな

 新卒で広告代理店に入社後、約20年にわたって広告クリエイティブに携わってきた。そこで自分が行き着いた挑戦が「事業を成長させるクリエイティブ」だ。スタートアップ企業にとってテレビCMのプロジェクトは、起業後数年の中でも最大級の事業投資になる。だからこそ経営者自身がコミットし意思決定するべきだと思う。

 テレビCMに関する知見や経験の部分は自分がすべてカバーする。そういう形の二人三脚で、クリエイティブを通じて事業成長に関与していきたい。これが目下のテーマだ。

 だから、クリエイターでありながら、ビジネスを学ぶために渡英しMBAを取得し、ベンチャーキャピタルに転職し投資先企業のグロースを担当した。おもしろい広告を作りたいという想いは1ミリもない。もちろん、おもしろい広告を作ることがその企業の成長に寄与すると確信すれば、全力でおもしろい広告を作る。すべて事業の成長のためだ。

 ビジネス観点では当たり前のことだが、クリエイターに圧倒的に欠けているのがROIの意識だ。たとえば、決められた制作費の中でコスト効率を最大化するために、制作見積りと何時間もにらめっこするCDは自分以外に聞いたことがない。「相場」がわからぬ企業が、不必要なもったいない出費をしているケースは頻繁に見受けられる。

 勘違いしてはならないのは安く作れば良いという話ではない。企業と世の中での接点であるテレビCMが、見すぼらしいのは不適当だ。逆に見栄を張りすぎても良くない。最適な頃合いのものを効率的に作る工夫も、クリエイティブ制作における大事な一行程だと思う。

クリエイティブの核は経営者の中にある

 優れた映画監督やミュージシャンは、作る作品に明確にその人の色がある。しかし、テレビCM制作においてはクリエイターの色は不要であると思っている。出すべきは経営者や事業の個性だ。本当に良い企画ができたとき、自分は経営者の翻訳者になっている。社長の心の中でたぎる熱い想い、視界の先に描く未来の景色を、テレビの前の視聴者に届くように翻訳し15秒という時間の中に詰め込むのだ。

 この記事を読んでいる読者の方々はマーケティング担当者が多いと思うが、テレビCMのクリエイティブをプロモーションの視点だけで見てはならない。プロダクト、生産・販路などのバリューチェーン、経営戦略など多面的な視点での価値や課題を、所与の条件として整理しクリエイティブに落とし込む工程が大切だ。そうすることでテレビCMのROIを最大化できる。

 それらのことを本質的に理解しているのが経営者だから、自分は企画の段階で経営者と直接話すことを希望する。広告クリエイターに求められるのは、もはやアイディエーションだけではない。

 そういう意味で、今後、広告クリエイターは2つの言語を使える必要があると思っている。1つはこれまで培ってきた、ディレクターやカメラマンや制作スタッフと「感性」の世界で議論し、クリエイティブを研ぎ澄ますための言語。もう1つがビジネス要件を理解し、経営者と対話するための言語だ。

 過去に何度か経営者の方から「自分はセンスがないから」と及び腰にクリエイターとの議論を拒否されたことがある。しかし、それではテレビCMを成功に導けない。であれば、必要なのは我々が経営者と視座を合わせる努力をすることだ。もちろんそれは、一朝一夕で修得できるものではない。日々、対話の中で勉強させていただいている。

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この記事の著者

北尾 昌大(キタオ マサヒロ)

NORTH AND SOUTH Inc. Founder/Creative Director

2000年株式会社電通入社。クリエーティブ・ディレクターとしてベンチャー企業のブランディングから大企業の世界キャンペーンまで、100社以上の企業の広告コミュニケーションに従事。500本以上のテレビCMを制作。ベンチャー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/12/21 09:00 https://markezine.jp/article/detail/35044

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