日本マーケティング学会は、2020年12月11日に「日本マーケティング本大賞2020 受賞記念マーケティングサロン『オムニチャネルと顧客戦略の現在』」をオンラインで開催。編著者の近藤 公彦教授をはじめ著者のうち5名が登壇し、本書に込められた狙いや、現在注目しているテーマなどを議論した。
「消費者行動の理解」がオムニチャネルの出発点
日本マーケティング本大賞2020を受賞した『オムニチャネルと顧客戦略の現在』。推薦理由には、理論的貢献と実践的示唆を両立したこと、消費者行動、マーケティング、組織、サプライチェーンなど多面的な視点から検討がなされ、網羅性と具体性を満たしていることなどが挙げられた。
はじめに近藤教授が本書の全体像を解説した。本書は企業や戦略から論を始める多くのマーケティング関連書籍とは異なり、まず市場環境の変化、消費者行動の変化を説明している。その背景には、オムニチャネルは顧客戦略そのものである、という考えがある。
近藤 公彦、中見 真也(編著)千倉書房
【目次】
第Ⅰ章 オムニチャネル時代の顧客戦略
第Ⅱ章 市場戦略の変化とオムニチャネルの発展
第Ⅲ章 オムニチャネル・カスタマーへの変遷とその理解
第Ⅳ章 オムニチャネル戦略
第Ⅴ章 オムニチャネルにおけるSCM
第Ⅵ章 オムニチャネルにおける決済の戦略と課題
第Ⅶ章 オムニチャネルの成果指標
マーケティングの殻を破る1冊として
次に著者のうち5名が登壇し、パネルディスカッションを実施。本書に込められた狙いをさらに掘り下げていった。
【登壇者】
近藤 公彦教授(小樽商科大学大学院商学研究科)
中見 真也准教授(神奈川大学経営学部)
金 雲鎬教授(日本大学商学部)
太宰 潮准教授(福岡大学商学部)
逸見 光次郎氏(モデレーター:株式会社CaTラボ 代表取締役、オムニチャネルコンサルタント)
逸見:はじめに執筆で苦労した点、本書でおすすめしたい点についてうかがっていきます。
太宰:第Ⅲ章の1節において「マルチチャネルショッパーは本当に優良顧客なのか」という点について、数字に基づいて示すことができました。ここでの議論を基に今年も論文を出しまして、購買をともなわないオムニチャネル行動でも、RFMの「F」が上昇し、結果的に売上が上がることがわかっています。
金:私はバックヤードの隠れた課題を明らかにし、解決することをテーマとしていました。先行研究があまりなく難航し、結果的に問題の提言で終わってしまったのが悔しい点です。
中見:シュルツ先生が提唱するIMC(統合マーケティングコミュニケーション)の考え方を取り入れ、オムニチャネルにおけるブランドについても書いていますし、この本全体にも「俯瞰的に見る」という考え方を色濃く反映させています。
近藤:実はノースウェスタン大学のIMCは、伝統的なマーケティングマネジメントの体系を批判的に見ているんです。典型的なマーケマネジメントの教科書は4Pを中心に構成されていて、消費者行動の話、組織の話、決済の話、サプライチェーンの話、物流の話は扱われていません。しかしオムニチャネルはそれらの要素がないと語れません。本書は、これまでマーケティングとして扱われていなかった領域に踏み込んだのです。そういう意味でマーケティングの殻を破ったものと考えています。
逸見:実務では「顧客」という言葉が出てきたとたん、思考が停止してしまうことがあります。本来は、企業の都合、システムの都合もあって、できることとできないことがあるはずですが、「お客様が言っているなら、やるしかないじゃないか」と。
そんなふうにビジネスシーンで袋小路に陥ってしまいがちな点について、学術の視点から別の様々な見方を提示できた点も、本書の意義と言えるでしょう。
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蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)
東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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