↓照井氏、鈴木氏を迎えた「マーケティング戦略の大転換」第6回のダイジェストはこちら↓
コミュニケーションの深化にゼロパーティデータを活用
1987年創業、老舗の通販化粧品企業として知られるオルビスは近年、抜本的なリブランディングに取り組んでいる。掲げるのは、通販会社からビューティーブランドへの転換だ。従来からの高い商品力をベースに、2018年10月にリブランディングの象徴プロダクトとして「ORBIS U」を発売。本シリーズを軸に、顧客の共感と憧れを醸成する広告クリエイティブや、ブランドの“中の人”の愛が伝わるSNS上のコミュニケーションで着々とファンを増やしてきた。
今回は、Web広告代理店を経てオルビスの広告戦略立案などに携わる照井真規子氏と、同社で商品企画を経験した後にPRグループのマネジャーを務める鈴木奈々絵氏を迎え、いかにして顧客心理を把握し、コミュニケーション施策につなげているかを掘り下げた。
本セミナーのテーマは「ゼロパーティデータから導くインサイトの可能性」。はじめにホストを務めたチーターデジタルの加藤氏が、顧客の心理や、顧客に尋ねて初めてわかるようなパーソナルな情報=ゼロパーティデータをしっかり把握できれば、その人により喜ばれて受け入れられる発信や提案が可能になることを説明した。
「たとえば化粧品ブランドを想定したカスタマージャーニーを考えてみると、そこに好みのメイクや色味、あるいは誕生日や卒業式などの“ハレの日”はいつなのかといったゼロパーティデータを掛け合わせることで、コミュニケーションをぐっと深めることができます」(加藤氏)
動画本編【5:38~】では、ゼロパーティデータの定義と活用イメージ、事例をまとめて解説しています。視聴はこちらから!
信頼感と楽しさを提供するEC上のコンテンツ
では、オルビスではどのように顧客心理を理解し、それをコミュニケーションに反映させているのだろうか。照井氏は、顧客が望んでいることとして、まずは信頼性のあるコンテンツの提供を重視していると話す。
「コロナ禍の影響でECの利用が増えていることや、生活スタイルの変化によって時間の大切さを改めて実感されている方が多いといったことから、ECサイト上で楽しく的確な買い物ができるよう、コミュニケーションを工夫しています」(照井氏)
具体的な施策では、AIを活用した「パーソナルメイクAIメイクアドバイザー」や「AIアイブローシミュレーター」は特に反響が大きいという。また、なかなか店舗に行けない状況を踏まえて、Instagramでのライブコマースや、「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」からインフルエンサーとオルビス社員が商品を紹介する企画なども実施した。
信頼性という観点では、企業からの発信だけでなくUGCも重視している。
「お客様のリアルな口コミや一般の方のお声を、LPで展開しています。これによって、より信頼性を感じていただけると考えています」(照井氏)
さらに顧客が何に感動して投稿という行動にまで結びついているのか、オーガニック投稿をしっかり分析していくことで、心理を捉える努力をしているという。
“中の人”の個人アカウントから顧客理解が進んだ、オルビスの新たな気づき
続いて2つ目のトピックは、顧客心理の把握がもたらす効果について。加藤氏は、オルビスが実施している各施策が、認知から検討・購入、再購入に至るまで、カスタマージャーニーを漏れなく網羅していることに着目。中でもPR担当の個人アカウントがSNSコミュニケーションに新たな気づきを与えた事例に焦点を当て、具体的な施策に顧客理解の成果がどのように活かされているか質問を投げかけた。
SNSを中心としたオルビスの発信で特徴的なのは、公式アカウントに加えて、PRの鈴木氏が“中の人”として身分を明かした上で、直接コミュニケーションを図っている点だ。たとえば鈴木氏は個人のプライベートアカウントでオルビスのスタッフだと明記し、開発の舞台裏や熱のこもった思いを伝えたり、商品を紹介してくれたインフルエンサーとやり取りしたりしている。こうした公の場でのコミュニケーションも、顧客や潜在顧客の興味を引くきっかけになっている。
また、コロナ禍の状況下で「店頭で自由にテスターを使えない、色味などがわからない」ことが顧客の課題になっていたため、鈴木氏自身がメイクのアレンジを投稿し、購入意欲を刺激した事例もあったという。加えて、ブランドとは直接関係のない、美容の習慣やよく行くお店などプライベートな内容を投稿することもあり、こうした話にも共感が集まるそうだ。
PR感の強いSNSの場合、ユーザー視点では情報収集には役に立っても、自分に照らし合わせて共感したり親しみを抱いたり、あるいは「私もこれが好き/私もそう思う」といったパーソナルな情報をあえて開示する気分にはなりにくいだろう。SNS運用は日々の地道な活動だが、顧客が心を開きやすいような場の設定や雰囲気をつくることで、継続的に距離を縮め、また新しいファンを捉えることもできる。
加藤氏は、「ブランドのPRだけでなく、鈴木さんの人柄や関心の方向性も感じられる内容を交えることで、総合的に共感が高まっているのですね。リアルにフォロワーさんとつながることを重視する姿勢がわかります」と分析した。
動画本編【15:23~】では、プライベートアカウントを通じた気づきの3つの事例を紹介しています。視聴はこちらから!
ゼロパーティデータ収集のファーストステップは?
顧客心理やゼロパーティデータの取得には、オルビスが明かしたSNS活用のほかにも、さまざまな方法が存在する。たとえばオーソドックスなアンケートやプレゼント企画、特別なオファーや、クイズやコンテスト形式の企画なども有効だ。「ただしどんな方法を採るにしても、カスタマージャーニーのどの段階で態度変容を起こしたいのか、目的を見定めるべき」と加藤氏。Why:目的を決め、How:どのように収集するかを選択し、What:何のデータを収集するのかを絞り込む。このステップで検討すると、ゼロパーティデータ収集施策を計画しやすくなるという。
AIDMA、AISASに続く消費者認知のモデル「DECAX」に注目
照井氏、鈴木氏から多岐にわたる具体策が共有されたところで、話題は3つ目のトピック「顧客心理で進化するコミュニケーション」に移された。鈴木氏は「消費者認知のモデルとして、AIDMA、AISASに続く“DECAX(デキャックス)”に注目しています」と話す。
DECAXは、電通デジタル・ホールディングス(当時)の内藤敦之氏が提唱したモデルで、消費者とコンテンツとの接点に注目したものだ。具体的にはDiscovery→Engage→Check→Action→Experienceの順に進むと想定されている。オルビスにおいても、ブランドのセンスと、ブランドへのスタッフやインフルエンサーの愛を体験し、ファン化と口コミ創出につながって好循環が起きていく流れを目指しているという。
本セミナーではさらに、DECAXを踏まえたこれからのコミュニケーションの構想が語られている。ぜひ動画本編【25:00~】をご覧いただきたい。
動画本編の視聴はこちらから!
主なトピック【5:38~】ゼロパーティデータの定義と活用イメージ、事例
【9:34~】オルビスの顧客心理の捉え方と、コミュニケーションへの落とし込み
【15:23~】プライベートアカウントから進んだ顧客理解
【21:31~】ゼロパーティデータ収集・活用のステップ
【25:00~】これからのコミュニケーション戦略
Webセミナーシリーズ「マーケティング戦略の大転換」は全編アーカイブ視聴が可能!
過去のWebセミナーレポート&アーカイブ視聴も配信中。それぞれ約30分間で学べます。
(一例)
【第1回】CMOたちが注目する現状の“チャンス”8項目とは?チーターデジタルが30分で学べる動画セミナーを公開
【第3回】生活者と共に変化できる企業には、強固なブランドパーパスがある 川添氏が説く急激なEC化を乗り越える術
【第4回】ガンバ大阪が“スタジアム以外”で見出す勝機 場所の制約が強かったビジネスこそデジタルで大きく進化する