富士フイルムのマーケデータ・LTVデータ統合プロジェクト
後半は富士フイルム ヘルスケア ラボラトリーの竹内正也氏、笹原千江里氏による「マーケティングデータとCRMデータの活用法」というセッションが行われた。
同社では現在、化粧品ブランド「アスタリフト」とサプリメント「メタバリア」のオンライン・オフラインマーケティングデータからLTVデータまでをDatoramaで統合している最中だ。マーケティング全体を一気通貫で俯瞰し、効果的かつ効率的な広告予算の投資と付加価値を生み出すための業務効率化を目指している。
同社では従来、複数の広告代理店によってオンライン広告、新聞・折込広告、通販番組のデータなどを管理してきた。そしてLTVデータは分析ツール「Tableau」から取り出し、手作業で入力・転記している状態だった。
「Datorama導入前は旧来型のPDCAを実施していたためレポート作成だけで数百時間もかかっていました。しかもタイムリーな予算の付け替えやレポーティングができず、複数のパートナーからレポートを受け取る必要があったため、CVRを改善しにくかったんです」(竹内氏)
Datorama導入の目的は、業務効率化を行いレポーティングに取られている時間を半減させることと、リアルタイムでキャンペーンデータを確認し、広告予算をタイムリーに配分、CPR2%改善を目指すことだったという。
そのためにDatoramaを導入していったが、取り組みを行っていく中で笹原氏は壁にぶつかったと話す。
「導入にあたって社内外で丁寧な調整を行い、数値の定義を洗い出し統一していきました。ところがその過程で、同じ指標なのに定義が異なっているケースが判明しました。異なる定義の指標をもとに商材間のアロケーションや投資判断を行っていたため、指標の定義をこのタイミングで合わせたほうがいいということになりました。部署ごとに同じ言葉の指標なのに微妙に定義が異なっていましたし、部署異動などで担当者が変わると見るべき指標もそれぞれ少しずつ変わっていたのです」(笹原氏)
そこで同社は「ツール」「指標」「計測ツールの運用フロー」の3つを見直すことに。年間を通じた壮大なプロジェクトに取り組むこととなった。
「マーケティングデータとLTVデータを統合し、LTVから逆算して広告媒体やクリエイティブを評価していきました。そして、最も売り上げへの貢献が高い指標に予算をアロケーションしていきました」(竹内氏)
ユーザーの行動を見据えたデータ活用が重要に
まだこのプロジェクトは道半ばだが、既に大きな成果が出ていると笹原氏は言う。現在、Tableauのデータを、Datoramaに取り込んでいるというが、そもそもなぜマーケティングデータとLTVデータを統合する必要があるのだろう。
「当社のような通販型のビジネスモデルの場合、ローリングが肝となるため、獲得するユーザーのこれからのポテンシャルを認識した上での投資判断が重要になります。にもかかわらずCPRなどのマーケティングデータのみで投資判断を行うと、実際は離脱率が高く長期的には売り上げが上がらなくなってしまうことも考えられます。よって『どの媒体からどの商品を購入したユーザーがどれぐらい顧客として定着しているか』などのTableauのデータを考慮した上で運用することが非常に重要なのです」(笹原氏)
今では獲得効率の高いメディアへ柔軟に予算をアロケーションできるようになったと笹原氏は考えている。
また、Datoramaの導入によって複数の広告代理店とダッシュボードを共有し、コミュニケーションを円滑化することが可能に。レポート作成業務を大幅に削減できた。
「当社で特徴的なのは、定例会のやり方が大きく変わったことです。今まで週一回の定例会で、何が起こっていて、どのような打ち手を実施していくのかすり合わせていましたが、今は、広告代理店がどのような戦略でどうアクションをしたのかDatoramaのダッシュボードで把握できるため、状況把握に割く時間が減り、これからの戦略企画・立案に時間を使えるようになりました」(笹原氏)
今後はDatoramaの運用を完成形に近づけながら、テレビCMやPR、店舗売り上げといった、別の部署が管轄している数値ともデータを連携し、全社的なマーケティングの最適化を目指したいと意気込んでいる。