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ネスレ日本・富士フイルム ヘルスケア ラボラトリーが語る、マーケティング投資の最適化

 COVID-19パンデミックの影響を受け、あらゆるもののオンラインシフトが加速した2020年。生活者のライフスタイル・消費行動に変化が起きたことで、企業はマーケティング投資の再考に迫られている。2021年1月28日に開催された「MarkeZine Day Special Webinar powered by Salesforce Datorama」には、ネスレ日本の小堺吉樹氏、富士フイルム ヘルスケア ラボラトリーの笹原千江里氏、竹内正也氏が登壇。「メディアプランニング」「PDCA改善」をキーワードに各社の取り組みが語られた。本稿ではその様子をお届けする。

メディアプランは「KPI」ではなく「顧客」から考える

 まず登場したのは、ネスレ日本 媒体統括部の小堺氏だ。小堺氏が所属する媒体統括部は、「キットカット」や「ネスカフェ」など同社が持つ20以上のブランドについて、メディアプランを考え、効果改善のための施策を練り、実行することをミッションとしている。

 小堺氏からは「メディアプランニング」と「PDCA」という2つのテーマについて、同社の取り組みとともに語られた。まずメディアプランニングについて。小堺氏は「メディアプランは『KPI』から考えず、『顧客』から考えることが重要」と話す。中でも、顧客起点でメディアプランニングを行うために重要なことが2つあるのだそうだ。

 「1つ目はレセプティビティ(受容性)です。つまり、消費者が私たちのメッセージに関心を示してくれる時と場所に合わせてコミュニケーションすることが重要ということ。Media Behaviorを詳細に探り、ユーザーのレセプティビティを見つけることによって、効率的かつ効果的なコミュニケーションを取ることができます」(小堺氏)

ネスレ日本株式会社 マーケティング&コミュニケーションズ本部 媒体統括部 小堺吉樹氏
ネスレ日本株式会社 マーケティング&コミュニケーションズ本部 媒体統括部 小堺吉樹氏

 たとえば、受験勉強で疲れたときに偶然見たYouTubeに「キットカット」の動画広告が流れていたら人は共感するし、朝眠い目をこすりながらテレビをつけたとき「ネスカフェ」のCMが流れていたら製品が欲しくなるだろう。そのような人間の心理状態や行動、タイミングを詳細に分析して、レセプティビティが高まる顧客とのコンタクトポイントを探ることが重要だという。

 2つ目に重要なのが、コミュニケーションだ。ネスレ日本では、下図のようにマーケティングファネルごとにコミュニケーションの果たす役割を定義づけていくという。

 レセプティビティとコミュニケーションにおける役割を決めたあとは、双方の観点からメディアの候補を洗い出し、「ブランド・製品・キャンペーンとの親和性」や「実現可能性」などを検討し、最終的に出稿メディアを決定していくという。

 「このように、担当者の感覚でメディアを選定するのではなく、自社なりの選定基準を作り、ロジックを立ててどのメディアに出稿するか判断することが重要です」(小堺氏)

ライブモニタリングでPDCAサイクルを短縮

 次に、効果的なPDCAを実現するための方法が語られた。ネスレ日本ではメディアのPDCAにおいて3つのキーワードを重視しているという。それは(1)ライブモニタリング(2)アドベリフィケーション(3)効果計測だ。

 まず、ライブモニタリングについて。同社では、広告出稿の効果を“リアルタイム”で把握できる体制を整えているという。

 「数年前は、出稿から1ヵ月ほど経ってから広告会社から送られてくる、エクセルで作られた複雑なパフォーマンスレポートを確認していました。それではレポート内容を翌々月の施策にしか活用できませんし、上司からのレポート依頼に迅速な対応もできません。またレポートの数字に関しても、媒体レポートから正しく転記されているかがわからず透明性に欠けると感じていました」(小堺氏)

 そこで小堺氏はセールスフォース・ドットコムの「Datorama」を導入。これによりImpressionやCPC、クリック数など、主要なパフォーマンス数値とその増減率がひと目でわかるようになり、データ分析におけるフレキシビリティが格段に向上したという。

 また、ダッシュボードは広告会社の担当者にも共有し、広告効果を双方でリアルタイムに確認する体制を整えた。これにより、レポートを作成するリードタイムが削減され、キャンペーン期間中に意思決定とアクションを取ることができるようになったという。

アドベリフィケーションで効率を改善

 2つ目に重視しているのはアドベリフィケーションだ。自社の配信する広告がどの面に配信され、本当に人が見ているのかを把握することは、ブランド毀損のみならず、効率改善のための絶対条件だという。

 「あるDSPで、15秒の動画広告が3秒間しっかり見られた割合を計測したところ、全体の35%だったという結果が出ました。そこでIn-ViewRateを80%に設定変更したところ、完全視聴単価は設定前の44%まで下がったのです。アドベリフィケーションはリスクを防ぐという点だけではなく、効率の良い広告出稿を行うために必要不可欠な指標と考えるべきです」(小堺氏)

適切な効果計測でパフォーマンスを明らかにする

 そして3つ目に重要なのが、効果計測だ。Google Analyticsや媒体レポートから読み取れる数値には限界があり、購買意向のリフトなどユーザーの態度変容を詳しく理解するための指標にはなり得ない。

 コロナ禍でユーザーの行動は変わり、コンタクトポイントも増え続ける一方だ。しかもYouTubeやAmazonをはじめとする大手プラットフォーマーは情報を囲い込むため、広告主側がサイト内にタグを埋め込むことは難しい。媒体横断でのマーケティング予算の最適化が難しい状況が続いていた。

 そこでネスレ日本では、MMM(マーケティングミックスモデリング)という手法を取り入れ、売り上げに影響するであろうあらゆる因子を収集、売上予測モデルを構築。広告が売り上げにどれぐらい寄与しているか導き出している。

 以上、3つのPDCA方法を紹介した。とはいえ、自社だけでこれだけ多層的かつ幅広い取り組みを行うのは難しいだろう。小堺氏は「様々な強みを持つ外部のパートナーと適切にコラボレーションすることがメディアプランニングとPDCAサイクル改善に必要なポイント」だと述べ、セッションを締めくくった。

富士フイルムのマーケデータ・LTVデータ統合プロジェクト

 後半は富士フイルム ヘルスケア ラボラトリーの竹内正也氏、笹原千江里氏による「マーケティングデータとCRMデータの活用法」というセッションが行われた。

 同社では現在、化粧品ブランド「アスタリフト」とサプリメント「メタバリア」のオンライン・オフラインマーケティングデータからLTVデータまでをDatoramaで統合している最中だ。マーケティング全体を一気通貫で俯瞰し、効果的かつ効率的な広告予算の投資と付加価値を生み出すための業務効率化を目指している。

株式会社富士フイルム ヘルスケア ラボラトリー 営業推進本部 CSソリューションG 兼 ダイレクトマーケティングGマネージャー 竹内正也氏(左)/同 営業推進本部 ダイレクトマーケティング 新規獲得・戦略担当 笹原千江里氏(右)
株式会社富士フイルム ヘルスケア ラボラトリー
営業推進本部 CSソリューションG 兼 ダイレクトマーケティングGマネージャー 竹内正也氏(左)
営業推進本部 ダイレクトマーケティング 新規獲得・戦略担当 笹原千江里氏(右)

 同社では従来、複数の広告代理店によってオンライン広告、新聞・折込広告、通販番組のデータなどを管理してきた。そしてLTVデータは分析ツール「Tableau」から取り出し、手作業で入力・転記している状態だった。

 「Datorama導入前は旧来型のPDCAを実施していたためレポート作成だけで数百時間もかかっていました。しかもタイムリーな予算の付け替えやレポーティングができず、複数のパートナーからレポートを受け取る必要があったため、CVRを改善しにくかったんです」(竹内氏)

 Datorama導入の目的は、業務効率化を行いレポーティングに取られている時間を半減させることと、リアルタイムでキャンペーンデータを確認し、広告予算をタイムリーに配分、CPR2%改善を目指すことだったという。

 そのためにDatoramaを導入していったが、取り組みを行っていく中で笹原氏は壁にぶつかったと話す。

 「導入にあたって社内外で丁寧な調整を行い、数値の定義を洗い出し統一していきました。ところがその過程で、同じ指標なのに定義が異なっているケースが判明しました。異なる定義の指標をもとに商材間のアロケーションや投資判断を行っていたため、指標の定義をこのタイミングで合わせたほうがいいということになりました。部署ごとに同じ言葉の指標なのに微妙に定義が異なっていましたし、部署異動などで担当者が変わると見るべき指標もそれぞれ少しずつ変わっていたのです」(笹原氏)

 そこで同社は「ツール」「指標」「計測ツールの運用フロー」の3つを見直すことに。年間を通じた壮大なプロジェクトに取り組むこととなった。

 「マーケティングデータとLTVデータを統合し、LTVから逆算して広告媒体やクリエイティブを評価していきました。そして、最も売り上げへの貢献が高い指標に予算をアロケーションしていきました」(竹内氏)

ユーザーの行動を見据えたデータ活用が重要に

 まだこのプロジェクトは道半ばだが、既に大きな成果が出ていると笹原氏は言う。現在、Tableauのデータを、Datoramaに取り込んでいるというが、そもそもなぜマーケティングデータとLTVデータを統合する必要があるのだろう。

 「当社のような通販型のビジネスモデルの場合、ローリングが肝となるため、獲得するユーザーのこれからのポテンシャルを認識した上での投資判断が重要になります。にもかかわらずCPRなどのマーケティングデータのみで投資判断を行うと、実際は離脱率が高く長期的には売り上げが上がらなくなってしまうことも考えられます。よって『どの媒体からどの商品を購入したユーザーがどれぐらい顧客として定着しているか』などのTableauのデータを考慮した上で運用することが非常に重要なのです」(笹原氏)

 今では獲得効率の高いメディアへ柔軟に予算をアロケーションできるようになったと笹原氏は考えている。

 また、Datoramaの導入によって複数の広告代理店とダッシュボードを共有し、コミュニケーションを円滑化することが可能に。レポート作成業務を大幅に削減できた。

 「当社で特徴的なのは、定例会のやり方が大きく変わったことです。今まで週一回の定例会で、何が起こっていて、どのような打ち手を実施していくのかすり合わせていましたが、今は、広告代理店がどのような戦略でどうアクションをしたのかDatoramaのダッシュボードで把握できるため、状況把握に割く時間が減り、これからの戦略企画・立案に時間を使えるようになりました」(笹原氏)

 今後はDatoramaの運用を完成形に近づけながら、テレビCMやPR、店舗売り上げといった、別の部署が管轄している数値ともデータを連携し、全社的なマーケティングの最適化を目指したいと意気込んでいる。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/02 10:00 https://markezine.jp/article/detail/35516