データ活用でDMを使った休眠層の掘り起こしに成功
山上:JTBもようやくTwitterを始めたところで、KPIや効果を売上と結び付けて指標化して、周囲を説得することに苦労しているのですが、御社ではどうやってそこをクリアしていますか?
梅原:年々、InstagramなどのSNSでもインフルエンサーをきっかけに来場される方が増えているのが調査からわかっているので、そうしたデータを基に、SNSとそこでのエンゲージメントの重要性を訴え続けていますし、それは理解してもらえていると感じています。
エンゲージメント率が最終的にITV(intention to visit)につながるというのは、共通理解としてできているんです。
福田:SNSの活用の施策の他に、近年の成功事例を伺えますか?
梅原:2020年秋ごろでは、Go to イベントに絡めて、「Go To USJ」という期間限定チケットを販売し、これが大爆発的な人気を得ました。
Go toイベントでチケット代が20%オフになるのに加え、パーク内で利用できる1,500円分のクーポンがセットになっているものなのですが、初日はサイトに繋がりづらい状況が続くほどのアクセスをいただきました。ニューノーマルな時代にお客様の気持ちを発散できる場として、パークを認知いただいている結果かと思っています。
豊島:私の方では、データを活用して休眠層の再来場の促進に成功した例をご紹介します。
来場履歴を見て、前回から一定期間以上経っているお客様に焦点を当てて、先ほどの来場者データなどと掛け合わせて分析してみたところ、来場時の満足度が何かしらの理由で低い傾向にあり、期待値に見合った楽しみができていなかったという顧客像が浮かんできました。
そこで、たとえばアトラクションの待ち時間を短縮できる「エクスプレス・パス」などの有益な情報を、「いらっしゃっていない期間にパークがこれだけ進化していますよ」というメッセージと共にDMで送りました。

豊島:リアルなDMにしたのは、プレミアム感を出すためと、そういった方々の場合、こちらがメルマガを打っても興味を持ってもらえることが少なかったからです。
結果として、開封率はもちろん、実際にパークに訪れてくださったお客様の割合も、送らなかった場合と比べ2倍近い結果となりました。下がっていたであろう好意度の底上げだけでなく実際の来場まで含めてカバーできたのは良かったと思っています。
「超刺激」と「快適」を両立した体験へ
――最後に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの今後の展望を教えてください。
梅原:2021年でパークは開業20周年を迎えます。それにあたり、テーマを「NO LIMIT!」に進化させ、他のどこにもない突き抜けるような超感動、超興奮などの超刺激体験を提供し、ゲストの皆さまに明日への活力を感じてもらうことがミッションになります。またそれを体現する新しいエリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」もいよいよ開業いたします。
コロナがどうなるか見通しは立っていませんが、こんな社会背景だからこそ日本を超元気にするためにも、テーマパークとして常にゲスト中心のコミュニケーションで全国から多くのゲストの皆さんに興味を持っていただき、その高い体験価値が多くの方へ拡散していく仕組みを含め、マーケティング本部全体で作っていけたらと思います。
豊島:今後、アプリを活用した体験価値の開発は重要なポイントだと思っていますので、現状では足りていない機能があれば随時追加して、ゲストにより快適に楽しんでもらえるプラットフォームにしていきたいと考えています。
データの観点からは、パーク内をより楽しんでいただくことに加えて、一人のゲストがパークに訪れるまでの旅行計画から、移動中・ホテル宿泊・お帰り後までのテーマパークジャーニーの中でより楽しんでいただけるようにしたいと思っています。この部分は、自社の持つタッチポイントでできることには限界があるので、様々なパートナーさんと共同で新たな体験価値を作っていくことで、我々ならではの価値を作っていきたいです。