モバイルデータを活用し、広告媒体の価値を定義・モデル化
――LIVE BOARDさんのDOOHでは、3A基準をどのように実現されているのでしょうか。
神内:まずAccountable(広告価値がわかる)に関しては、以下の流れで定義、モデル構築を行っています。
(1)スクリーンの設置場所ごとに「視認エリア」を定義
(2)広告配信時の「広告接触可能者数=OTC」を推計
(3)広告視認者数(=インプレッション)の推計モデルを構築
(4)NTTドコモデータが有する属性データを付与
スクリーンの最大視認距離範囲からビルや木などの障害物で見えないところを省き、設置場所ごとに視認エリアを定義します。次にNTTドコモのモバイルデータや移動手段(徒歩、自動車など)に応じた人流モデルの構築などにより、広告に接触可能な人数(=OTC)を推計します。
また別途調査を実施し、広告に接触可能な人の中で、実際に広告を「視認」したと想定できる人数を導き出すための「視認率」を算出。広告1配信ごとの「視認者数」を推計するモデルを構築します。接触可能者数が100人でも視認率50%という結果であれば、インプレッション数は50と計算されるわけです。
また、Addressable(最適な広告枠を必要なタイミングで購入できる)については、屋外広告、交通広告、商業施設広告など、様々な環境に設置されたDOOHを「LIVE BOARDマーケットプレイス」と呼ばれるプラットフォームに一元化。従来のDOOHとは異なり、自由な期間かつ様々な環境のDOOHをワンストップで購入することができます。さらにオンライン広告では当たり前になっているプログラマティックと呼ばれる広告取引手法にも対応しており、広告主が設定したターゲットに対して、最適な場所で最適なタイミングの広告枠を1配信単位で取引することが可能になっています。
――これから掲出しようとしている媒体の広告価値がわかると、安心できますね。残るAttributable(広告効果がわかる)についてはいかがでしょうか。
神内:広告接触者へのアンケート調査が可能です。今までのOOH広告では接触者を見つけるのが大変でしたが、ドコモのデータを使うと広告配信日時で広告接触の可能性のある人をピックアップできるため、その人にアンケートの協力をお願いしています。全ドコモユーザーではなく許諾をいただいている人のみですが、数千万の人にプッシュ通知が可能で、「認知」「興味」「利用意向」といった項目に対して、広告接触者と非接触者でどのような差があったかを算出できます(図6)。
最近では、テレビ・オンライン・DOOHの広告接触から商品購買の効果測定をID単位で可能にした「docomo data square(ドコモデータスクエア) 」の提供も開始しました。広告プランニングにおいて、それぞれのメディアがどう寄与したかを計測するトータルキャンペーンにふさわしい仕組みや、広告接触者がその後実際に来店したかを調査するキャンペーンも整備しています。
ターゲティングの実現により、接触者の関心が平均8.8%上昇
――LIVE BOARDさんの仕組みを用いると、どのような配信が可能になるのでしょうか。事例を教えてください。
神内:モバイルデータの活用で位置情報からターゲットセグメントを構築し、ターゲットに対して最適な場所とタイミングで自動的に広告を配信。効果測定までログベースで実施できます。たとえば、インテル様が行った”See It All”キャンペーンでは(図7)、4業種(小売り・ヘルスケア・IT事業者・製造業)のビジネス意思決定者をターゲットとして設定。ターゲット企業の所在地や各業界向けカンファレンスが開催されていた期間中、会場で取得されたモバイルIDを基にターゲットを定義しました。そしてその人たちが目にするであろうDOOHの場所とタイミングを自動的に選定し広告配信を行いました。
具体的には各DOOHに時間帯別のターゲット含有スコアを算出。ヒートマップを作成して行動パターンを分析します。次にプログラマティック取引で、スコアが高い「広告枠」だけを自動的に買い付け・配信しました。
広告配信後、ターゲットの中でDOOH広告接触者と非接触者のモバイルIDを抽出し、そのIDと同一人物が利用していると推定されるCookieに変換してオンライン上の活動をモニタリングすることで、広告の効果検証を行いました。すると、インテル様のサイト上での関心度の差違について、広告接触者の方が非接触者より平均で8.8%高いという結果が出ました。