QRコードでWebに集客、ライブ配信広告と組み合わせ…クロスメディアの最新動向
――DM閲読後の行動については、いかがでしょうか。
椎名:2019年は16.3%の人がDMを受け取った後に店舗へ出かけたり、商品を購買したりと行動を起こしたそうですが、2020年は15%程度と微減しています。新型コロナウイルス感染症の影響でイベントや店頭などリアルな場へ出かけられないことが、行動喚起率にも影響したといえるでしょう。
一方、Webサイトの閲覧についてさらに絞り込んだ調査をしてみると、おもしろい結果が見えてきました。たとえばQRコードとの組み合わせを見てみると、6~7割の生活者がQRコード付きのDMを受け取ったことがある、と回答していて、3~4割の方は実際にQRコードを経由してWebサイトを閲覧したことがあると答えています。
松本:たとえば住宅展示場などではリアルな場に集客することができなくなって、QRコードを用いてWeb上に集客するケースも増えているようですね。
――昨今オムニチャネル戦略に力を入れる企業も増えていますが、DMはメールマガジンや電話など他のメディアなどとどのように組み合わせて活用されているのでしょうか。
松本:多種多様な施策が組み合わせられていますが、多いのは、ポスティング広告、SNSでの広告、店内・店頭の広告やPOPなどですね。特にポスティング広告とSNS広告については、新規顧客を獲得する目的で、DMと組み合わせられているケースが多いです。
松本:続いて、企業に施策実施の満足度を聞いたところ、DM×通販カタログ、DM×ラジオ広告、それからDM×ライブ配信サービスの広告(ツイキャスなど)が高い結果となりました。特にライブ配信サービスとの組み合わせは、8割以上の企業が、施策の実施に関して「満足」と答えています。
今回用意した設問の多くがいわゆるプッシュ型の広告だったため、さらに詳細な分析が必要ですが、新しい傾向として興味深いです。
椎名:たとえば自社メディアやオウンドメディアといったDM送付後の「受け皿」となるような施策と組み合わせて調査してみると、また違った傾向が見られるかもしれませんね。
松本:そのような調査も行いたいですね。私たち日本郵便はこれまで、Eメールとの組み合わせのベストプラクティスについて特に力を入れて発信してきましたが、今後はより多様なチャネルとの組み合わせについても分析し、みなさまに発信していきたいと考えています。
組み合わせにおける悩みは?
――様々なチャネルとの組み合わせが見えてきましたが、施策を行う上で難しいのはどのような点なのでしょうか。
松本:今回の調査では、「複数の媒体・ツールから得られたデータの活用ができていない」が最多の20.9%、続いて「効果検証方法がわからない」が19.5%で僅差でした。
椎名:DMの悩みは、効果測定の難しさに尽きますよね。QRコードやメールマガジンをはじめとするデジタルメディアとの組み合わせの設計によって、DMの開封率を測ろうと工夫はしているものの、生活者へのアンケート調査頼みになってしまう側面はあります。
クリティカルな解決策はなかなかないのですが、まずDMから何らかのデジタルプラットフォームへ誘導することで解決していく体制を整えることが先決だと思います。その点、現場でデジタルとアナログについて、部署を越境して横串で見る役割の人が必要なのではないかと思います。