国内電通グループ4社(CCI/D2C/電通/電通デジタル)は、電通が2021年2月に発表した「2020年日本の広告費」の調査結果のうち、インターネット広告媒体費の内訳を広告種別、取引手法別などの切り口で分析。さらに2021年の予測を加えた「2020年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析」を発表した。
インターネット広告費から「インターネット広告制作費」および「物販系ECプラットフォーム広告費」を除いた「インターネット広告媒体費」は、運用型広告のさらなる拡大や巣ごもり需要によるソーシャル広告や動画広告の増加により広告費1兆7,567億円(前年比105.6%)となった。
同調査結果のポイント
ビデオ(動画)広告は3,862億円、インターネット広告媒体費全体の2割超え
ビデオ(動画)広告が前年比121.3%の3,862億円となり、インターネット広告媒体費全体の22.0%となった。ビデオ(動画)広告の内訳は、インストリーム広告46.6%、アウトストリーム広告53.4%の構成比(今回初推定)。2021年にはビデオ(動画)広告は全体で前年比110.4%の4,263億円になると予測。
運用型広告は前年比109.7%と成長、予約型広告、成果報酬型広告は減少
取引手法の主流となっている運用型広告は前年比109.7%で伸長し、インターネット広告媒体費全体の82.9%となった。予約型広告、成果報酬型広告は前年から減少となった。
ソーシャル広告は5,687億円で、インターネット広告媒体費全体の3割超え
SNSや動画共有プラットフォーム上等で展開されるソーシャル広告は前年比116.1%の5,687億円となり、インターネット広告媒体費全体の32.4%となった。
2021年インターネット広告媒体費は、全体で1兆8,912億円(前年比107.7%)まで成長の見込み
2021年のインターネット広告媒体費は昨年から続く新型コロナの影響で見通しづらいものの、継続して伸長し、2021年には全体で前年比107.7%、1兆8,912億円になると予測。
インターネット広告媒体費の広告種別構成比
2020年のインターネット広告媒体費は、1兆7,567億円(電通「2020年日本の広告費」より)。そのうち構成比が高いのは検索連動型広告(38.6%)とディスプレイ広告(32.6%)で、あわせて7割を占める。
ビデオ(動画)広告は前年比121.3%の3,862億円と伸長し、全体の2割を超えた。次いで、成果報酬型広告(5.6%)、その他のインターネット広告(1.1%)と続く。
【広告種別の定義】
・ディスプレイ広告:サイトやアプリ上の広告枠に表示する画像、テキストなどの形式の広告およびタイアップ広告。
・検索連動型広告:検索サイトに入力した特定のワードに応じて、検索結果ページに掲載する広告。
・ビデオ(動画)広告:動画ファイル形式(映像・音声)の広告。
・成果報酬型広告:インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告。
・その他のインターネット広告:上記以外のフォーマットのインターネット広告。メール広告、オーディオ(音声)広告など
インターネット広告媒体費の取引手法別構成比
インターネット広告媒体費を取引手法別に見ると、現在の主流となっている運用型広告はインターネット広告媒体費全体の8割を超え、1兆4,558億円となった。
一方、予約型広告と成果報酬型広告は秋以降に復調の兆しが見られたものの、新型コロナ拡大による出稿控えの影響を受け、「予約型広告」(前年比87.5%)、「成果報酬型広告」(同93.9%)といずれも減少した。
【取引手法の定義】
・運用型広告:検索連動型広告、およびデジタル・プラットフォーム(ツール)やアドネットワークを通じて入札方式で取引されるもの。
・予約型広告:純広告やタイアップ広告として、代理店・メディアレップ経由もしくは直接広告主に販売されるもの、およびデジタル・プラットフォーム(ツール)やアドネットワークを通じて非入札方式(固定価格)で取引されるもの。
・成果報酬型広告:インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告。
インターネット広告媒体費の取引手法別×広告種別構成比
取引手法別×広告種別では、運用型の検索連動型広告が全体の38.6%と最も構成比が大きく、次いで運用型のディスプレイ広告が25.7%と続いた。
また運用型の「ビデオ(動画)広告」が前年比127.2%と大きく伸長し、インターネット広告媒体費全体における構成比は18.3%となった。「ディスプレイ広告」の予約型は前年比80.1%と減少した一方で、運用型は同112.1%で伸長した。
ビデオ(動画)広告市場、取引手法は運用型広告が8割以上
ビデオ(動画)広告費3,862億円のうち動画コンテンツの間に挿入されるインストリーム広告は1,800億円(構成比46.6%)で、ウェブ上の広告枠や記事のコンテンツ面等で表示されるアウトストリーム広告は2,063億円(構成比53.4%)となった。
取引手法別でみると運用型広告が3,206億円となり、8割以上を占めている。
【ビデオ(動画)広告の定義】動画ファイル形式(映像・音声)の広告。以下のようなものを含む。
・インストリーム広告:動画コンテンツの前、中、後に再生する動画ファイル形式の広告。
・アウトストリーム広告:ディスプレイ広告枠等の動画コンテンツ外で表示される動画ファイル形式の広告。ウェブ上の広告枠や記事のコンテンツ面等で表示されるインフィード広告で動画ファイル形式のものも含む。
ソーシャル広告市場、動画共有系での広告が大きく伸長
ソーシャルメディアのサービス上で展開されるソーシャル広告は前年比116.1%の5,687億円と高い成長率で推移し、インターネット広告媒体費全体の3割を超えた。
また、ソーシャルメディアの種類別に「SNS系」「動画共有系」「その他」に分類すると、「SNS系」が2,488億円で最も規模が大きい。前年と比較すると「動画共有系」が大きく伸長した。
【ソーシャル広告の定義】
「ソーシャルメディア」のサービス上で展開される広告でユーザーが投稿した情報をコンテンツとし、ユーザー間で共有・交流するサービスを提供するメディア(プラットフォーム)<JIAA「インターネット広告掲載に関するガイドライン集/基本実務・用語集 2020年度版」より>
ソーシャルメディア例:SNS/ブログサービス/ミニ(マイクロ)ブログ/動画共有サイト/ソーシャルブックマーク/電子掲示板など
【ソーシャル種別の定義】
SNS系はSNSプラットフォーム、動画共有系はユーザー投稿型動画共有サイト、その他はブログや電子掲示板等
推移予測
インターネット広告媒体費総額、2021年も継続した成長が続くと予測
2021年のインターネット広告媒体費は昨年から続く新型コロナの影響で見通しづらいものの、前年比107.7%、1兆8,912億円まで拡大し、継続した成長が続くと予測される。
ビデオ(動画)広告市場の推移、2021年には4,263億円まで拡大
2021年のビデオ(動画)広告は前年比110.4%と伸長し4,263億円まで拡大すると予測される。
【調査概要】
調査主体:CCI/D2C/電通/電通デジタル
調査時期:2020年12月~2021年2月
調査方法:以下の調査に基づき、推定作業を実施
1)インターネット広告媒体社等を対象としたアンケート調査(郵送調査/web調査)
2)同、追加ヒアリング調査
3)各種データ収集・分析
※資料内グラフにおける数値は、表示単位未満を四捨五入して表示しているため、計算値が一致しない場合がある。
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