「グロースマーケティング」を実現するBraze 顧客の“今”に効果的に働きかける
2011年に米国で誕生したカスタマーエンゲージメントプラットフォームの「Braze」が、2020年に日本に上陸。既に、今回の講演に登壇するメルカリUSのほか、楽天やバーガーキングなど名立たる大手企業に導入されている。Braze日本法人代表を務める菊地真之氏は、自社について「テクノロジー活用に極めて長けた企業だが、記憶に残る体験をリアルタイムで提供することで、人と人との心触れあうつながり『Human Connection』の創出を目指している」と語る。
同社が提唱するのは、既存顧客との関係強化によって事業成長を実現する「グロースマーケティング」という概念だ。「グロースCRM」とも表されるが、従来のCRMはあくまで既存顧客との関係を維持することが主目的であるのに対して、グロースマーケティングは緻密なアプローチによって顧客の商品やサービスの利用頻度や額が自然と向上していくことを目指す。
「Brazeは、リアルタイム性、スケーラビリティ、オムニチャネルの3つの要素によってグロース戦略を支えている」と話すのは、Brazeのプリンシパルプロダクトマネージャーの新田達也氏。どれだけ顧客の属性や行動データを精緻に捉えられても、リアルタイムでアクションができなければ、ただの過去分析に留まってしまう。
方やBrazeでは、データ取得からアプローチのチャネル設計、配信までを平均すると1.1秒程で行うことができ、外部システムからデータを取り込む際のAPIのレスポンスタイムも40ミリ秒とほぼリアルタイムなので、顧客の“今”に効果的に働きかけることができる。
メルカリUSの強力なマーケティングプラットフォームに
「このスピード感と、様々な接点に出し分けられるオムニチャネル、また膨大なトランザクションを支えるシステムが実現するスケーラビリティが、Brazeの大きな特徴です。近年はブラックフライデーやサイバーマンデーといった急激にデータ量が増えるタイミングが出てきていますが、これらにおいても機を逃さず個々人に的確にアプローチしてエンゲージメントを高め、結果としてビジネス利益に大きく貢献しています」(新田氏)
最近の事例としては、2019年にバーガーキングがユーザーの位置情報を活用したキャンペーンを実施し、3倍のモバイル売上を獲得、月間ユーザーを53.7%も増やした。Brazeで「アジャイルABテスト」と呼んでいる、配信を自動最適化する仕組みによって実現したものだ。
キャンペーン単位を超えて、3年以上にわたりBrazeをマーケティングプラットフォームとして文字通り“使い倒して”いるのがメルカリUSだ。プロダクトのグロースを担う現王園浩士氏は、自身が希望してCRMチームに異動した3年前を振り返り、「すべてのデータを一元化してBrazeに蓄積し、グロースのためのプラットフォームにしようと意思決定したことが今に生きている」と語る。
メルカリUSでは、次の3つのステップでグロース戦略が進化している。まず、Brazeが導入されていたものの、一斉メールにしか使えていなかった段階。次にデータを一元化し、各顧客の属性や行動――売り買いや「Like」したなどのイベント――に基づいてアクションを重ねていった段階。そして現在はパーソナライズを追求し、同時に離脱予測やアクション頻度の最適化などにも取り組んでいる。