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MarkeZine Day 2021 Spring(PR)

「Braze」が支える、メルカリUSのグロース戦略とリアルタイムエンゲージメントとは

 昨年に日本上陸したカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Braze」は、既存顧客との関係強化によって収益を高める「グロースマーケティング」の実現を支援するソリューションとして、世界で有数の企業に導入されている。3月2日~4日に開催されたMarkeZine Day 2021 Springには、Braze日本法人代表の菊地氏とプロダクト責任者の新田氏、そしてBrazeを活用するメルカリUSの現王園氏が登壇。Brazeがいかにマーケターを助け、事業成長を後押ししているかが明らかにされた。

「グロースマーケティング」を実現するBraze 顧客の“今”に効果的に働きかける

 2011年に米国で誕生したカスタマーエンゲージメントプラットフォームの「Braze」が、2020年に日本に上陸。既に、今回の講演に登壇するメルカリUSのほか、楽天やバーガーキングなど名立たる大手企業に導入されている。Braze日本法人代表を務める菊地真之氏は、自社について「テクノロジー活用に極めて長けた企業だが、記憶に残る体験をリアルタイムで提供することで、人と人との心触れあうつながり『Human Connection』の創出を目指している」と語る。

 同社が提唱するのは、既存顧客との関係強化によって事業成長を実現する「グロースマーケティング」という概念だ。「グロースCRM」とも表されるが、従来のCRMはあくまで既存顧客との関係を維持することが主目的であるのに対して、グロースマーケティングは緻密なアプローチによって顧客の商品やサービスの利用頻度や額が自然と向上していくことを目指す

(左)Braze 代表取締役社長 菊地真之氏
(中央)Mercari US Growth Marketing/CRM 現王園浩士氏
(右)Braze プリンシパルプロダクトマネージャー 新田達也氏

 「Brazeは、リアルタイム性スケーラビリティオムニチャネルの3つの要素によってグロース戦略を支えている」と話すのは、Brazeのプリンシパルプロダクトマネージャーの新田達也氏。どれだけ顧客の属性や行動データを精緻に捉えられても、リアルタイムでアクションができなければ、ただの過去分析に留まってしまう。

 方やBrazeでは、データ取得からアプローチのチャネル設計、配信までを平均すると1.1秒程で行うことができ、外部システムからデータを取り込む際のAPIのレスポンスタイムも40ミリ秒とほぼリアルタイムなので、顧客の“今”に効果的に働きかけることができる

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出典:講演資料より(※タップ/クリックで拡大)

メルカリUSの強力なマーケティングプラットフォームに

 「このスピード感と、様々な接点に出し分けられるオムニチャネル、また膨大なトランザクションを支えるシステムが実現するスケーラビリティが、Brazeの大きな特徴です。近年はブラックフライデーやサイバーマンデーといった急激にデータ量が増えるタイミングが出てきていますが、これらにおいても機を逃さず個々人に的確にアプローチしてエンゲージメントを高め、結果としてビジネス利益に大きく貢献しています」(新田氏)

 最近の事例としては、2019年にバーガーキングがユーザーの位置情報を活用したキャンペーンを実施し、3倍のモバイル売上を獲得、月間ユーザーを53.7%も増やした。Brazeで「アジャイルABテスト」と呼んでいる、配信を自動最適化する仕組みによって実現したものだ。

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出典:講演資料より(※タップ/クリックで拡大)

 キャンペーン単位を超えて、3年以上にわたりBrazeをマーケティングプラットフォームとして文字通り“使い倒して”いるのがメルカリUSだ。プロダクトのグロースを担う現王園浩士氏は、自身が希望してCRMチームに異動した3年前を振り返り、「すべてのデータを一元化してBrazeに蓄積し、グロースのためのプラットフォームにしようと意思決定したことが今に生きている」と語る。

 メルカリUSでは、次の3つのステップでグロース戦略が進化している。まず、Brazeが導入されていたものの、一斉メールにしか使えていなかった段階。次にデータを一元化し、各顧客の属性や行動――売り買いや「Like」したなどのイベント――に基づいてアクションを重ねていった段階。そして現在はパーソナライズを追求し、同時に離脱予測やアクション頻度の最適化などにも取り組んでいる。

出典:講演資料より

“今”の在庫を確認して的確にリマインドする

 現王園氏がメルカリUSの成長において「重要だった」と強調するのは、前述のリアルタイム性と、それをベースに膨大なABテストを実施して仮説検証ができることだ。

 リアルタイム性は、たとえばこのような形で施策に生きている。カートに入れたものの放置されている場合、メルカリではほとんどの商品が1点もののため、リマインダーを送るにもその時点での在庫の有無を確認する必要がある。既に売れているのにお知らせしてしまったら、ユーザーは不快感や不信感を抱き、エンゲージメント毀損につながるだろう。

 そこで、カート放棄から2時間後、などのリマインダーを送りたい設定時間になった時点で自動で在庫を確認し、売れていなければお知らせと、加えてその時点で購入可能な関連商品のレコメンドを送る……といったことをBrazeを通して実現している。

出典:講演資料より

 この一連は、Brazeの複数の技術と極めてスムーズなAPI連携が下支えしている。セグメンテーションも自由自在で、アプリまたはWebのユーザーのみ、買ったことはあるが売ったことがない人のみ、といった切り分けも容易だ。そのため、マーケターが考える様々なアイデアを設計、施策に落とし込むことができる

 実際に現王園氏のチームでは、エンジニアと連携して多種多様なグロースのアイデアを設計し、BrazeでABテストを回して効果を引き上げている。

顧客に受け入れられるアプローチが重なるとLTVに効いてくる

 「プロモーションの実現時にカギになるのは、やはりリアルタイムの状況を捉えられる点と、セグメントとの連携」と現王園氏。メルカリUSでは、現在までのテストの積み重ねでグロースの定石をいくつも見出し、ひとつずつ機能実装しているという。

 現在、Androidのプッシュ通知の開封率を業界平均と比較すると40%ほど高くなっている。この状況も、地道に、そして相当量の施策のアイデアを設計し、PDCAを回して得られた結果だ。「Brazeをグロースのプラットフォームとして位置づけていろいろなアイデアを試し、顧客に響くものを積み上げたことが数字に表れていると手応えを得ています。CRMの分野はエンジニアリングの力で大幅にパフォーマンスを高められる分野だと実感しています」(現王園氏)

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出典:講演資料より(※タップ/クリックで拡大)

 さらに今、よりパーソナライズした施策を模索している。メルカリUSの顧客志向がよく表れている一例が「数多くLikeしてくれているなど、メルカリをよく使う人ほど、値下げ通知なども多く届いてしまう状況は果たして良いことなのか?」に着眼していること。厳密に言うと、通知が多くてもかまわない・逐一チェックしたいという人と、通知が多いのはイヤだという人が存在し、かつ心地よい頻度も人によって異なる。もちろん、メッセージの種類によっても反応が違ってくる。

 「そこで今、通知の開封率の予測モデルを立て、顧客ごとに配信頻度を変えるテストを実行しています。総配信数が減るので開封の絶対数は下がるのですが、開封率は上がり、同時に通知拒否の割合は減っているので、顧客の気持ちを汲んだ接触がLTVに効いているとみています」(現王園氏)

出典:講演資料より

WHOとWHATを見極めと施策実行がグロース戦略の肝

 現王園氏の解説に加えて、セッション後半では菊地氏、新田氏を交えたディスカッションも設けられた。メルカリUSの事例から「誰に何を送るか、つまりWHOとWHATを見極めることがグロース戦略の肝だとよくわかった」と菊地氏。それができる環境を作ることが、これからグロースマーケティングに取り組む日本企業にとって最初のステップになるかと問われた現王園氏は、「WHOとWHATを見極め、かつ“膨大に送れる/試せる”ことが必要」と答える。

 「グロース戦略で難しいのは、何が当たるかはやってみないとわからないことです。つまり、試す手数の差が成果に直結します。WHOとWHATの戦略と、どうアプローチするかの施策を組み立てても、実行できなければ絵に描いた餅で終わってしまう。どんどん回せる状態が大事だと思います」(現王園氏)

 また、「業界平均よりもプッシュ通知の開封率が40%も上がっているデータをどう受け止めているか」という新田氏の質問に対しては、率直に「チームとして誇りに思った」と現王園氏。

 Brazeを本格的に使い始めて以降、リアルタイム性やパーソナライズのインパクトを確かめるために、一斉配信なのか、それともイベントベースなど顧客によって異なるダイナミックメッセージなのかをタグ付けし、開封率の差や推移を確認していったという。すると一斉配信は送れば送るほど開封率が下がるが、ダイナミックなメッセージは送信数が増えても開封率が上がる状態に。「やはりパーソナライズは重要だと確信しました。最適な人に最適なタイミングで最適な内容を送れるよう追求した結果、開封率の高さにつながっていると思います」と現王園氏。

エンゲージメント構築からグロースまで、一気通貫で実現

 現王園氏の話からもわかるように、マーケターの発想力を引き出し、アイデアのスピーディーかつ容易な実現を技術で支えるプラットフォームだからこそ、BrazeはメルカリUSのマーケティング基盤になりえたのだろう。本セッションでは、Brazeの優れた操作性や直感的なインターフェースについても新田氏から紹介された。

 Brazeでは統合マーケティングプロファイルとして、顧客プロファイルを一人ひとり管理する。属性や行動などの情報が集約されており、これをセグメント作成時の条件に利用できる。

出典:講演資料より

 たとえば顧客の位置情報を利用した店頭キャンペーンなら、地図上で直感的にジオフェンスを設定した上で、「アプリを30日で一度も使っていないユーザー」といったセグメント条件を設定。Brazeではこの段階で、該当するユーザー数や、どのチャネルが最も効果的に配信できるかも確認できる。また、以降のアクションやメッセージ内容の設定も、Brazeのカスタマージャーニーツール「Canvas」上で専門知識なく進められる。

 「ドラッグ&ドロップで使えるCanvasでは、最終的にどのような内容を顧客に表示するかまでスムーズに設計できます。リアルタイムでの顧客エンゲージメント施策を非常に簡単に実現でき、かつ高速PDCAを回せるのはBrazeの大きな強みです」と新田氏。

出典:講演資料より

 Brazeのサイトでは今回紹介したメルカリUSのほかにも複数業界の事例や、Canvasなど各ツールの詳細を確認できる。顧客に寄り添い、受け入れられるアプローチを重ねてエンゲージメント構築からグロースにつなげる「グロースマーケティング」の第一歩に、Brazeが強力なパートナーとなるだろう。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/26 10:00 https://markezine.jp/article/detail/35739