小売、EC+小売、メーカー、不動産……業界別CDP活用事例
気になるCDPの事例はどのようなものがあるのだろう? 伊藤氏は、「小売」、「EC+小売」、「メーカー」、「不動産」の4種類を紹介した。
DWHからCDPへ(小売)
小売の事例は、CDP導入によりコストの削減、業務効率化、データの活用領域を拡大するというもの。
それまでは、ID-POSや会員カードなどのデータなどをDWHに格納し、中間サーバーを経て分析やDM配信などを行なっていたが、DWHの老朽化にともない維持費がかさみ、専門の業者しか扱うことができないという問題を抱えていた。
CDPを導入することで、維持費を削減した。また、CDPは容易に使えるので、セキュリティポリシーに基づき扱うことができる人は簡単に操作できるように。さらには、新しいデータ軸の追加も簡単なので、活用領域が広がったという。
ECと店舗の顧客ID統合(EC+小売)
ECも展開する小売業では、CDPを導入して店舗とECでの顧客IDを統合(1ID化)した。具体的には、ECシステムとPOS会員システムの会員データを1ID化し、マーケティングオートメーション(MA)との間にCDPを入れ、メール、LINE、プッシュ通知などのツールと接続するという形だ。
「CDP導入前は店舗側ではデジタルマーケティングツールを使っていなかった。店舗とECとの会員データを1ID化することで対象となるデータの母数が増える」と伊藤氏。
また、会員データを直接MAツールに入れるよりも、データを整理してから各ツールにつなぐほうがコストも抑えられるという。
顧客の態度変容などを把握し、施策へ(メーカー)
消費財メーカーが持てる顧客データは、商流の関係からあまり多くはない。しかし、年に数回打つ大型キャンペーンやプロモーションを通じて顧客情報を取得している。
売り上げや認知への効果はある程度測定できるものの、どのように意識が変わったのか、購買行動はどう変わったのか、Webサイトの回遊パターンに変化はあるのかといったことは測定できずにいた。そこでCDPを導入し、プロモーションの管理を改善することに。結果、プロモーションの分析を次に活かしたり、継続的にオンライン広告で顧客とコミュニケーションを取ったり、セグメント作成をしたりできるようになったという。
デジタルとアナログの顧客データを集約(不動産)
不動産の事例は、新築不動産を販売するために購買ファネル分析や、コミュニケーションの改善を目的としたCDP導入だ。
新築不動産を購入する顧客の多くは、事前の情報収集で意思決定はかなり進んでおり、さらに細かい情報がほしくなれば資料請求、展示場への来店と進む。つまり、認知と興味関心はオンライン、コンバージョンはオフラインであることが多い。
課題は、データが利用しにくいという点だ。各フェーズでデジタルのデータを収集する一方で、契約書など紙の作業が入ってくるためだ。そこで、CDPに情報を集約することで「フェーズごとのデータを、お客様に紐付けて見られるようにすることで商談までの流れにあるボトルネックを分析でき、改善につなげられている」という。
ズバリ、導入のポイントは?
CDPが必要になる背景、CDPの仕組み、メリットと事例まで説明した後、伊藤氏は導入に当たって注意すべきポイントを紹介した。伊藤氏によると、代表的な失敗として次の3つがあるという。
- データを集めてみたが活用方法がわからない
- データを可視化するのみで止まってしまう
- データ統合のシステムの費用が高すぎる
このような失敗を招いている原因を、「CDPという言葉が一人歩きしてしまい、イメージありきで目的が不明確なまま製品導入プロジェクトとしてスタートしてしまったケースが非常に多い」と伊藤氏は分析する。
実際に、目標が明確ではないために、無駄に多機能・高機能の製品を選択しているケースも多いという。そこで、「こういった施策をして、こういった効果を狙いたいと具体的な目標を決めてスタートすべき」と伊藤氏は見解を示す。
「データ統合も1つのプロジェクト。中長期的なゴールと、ステップごとのゴールを設定しておく必要があります」(伊藤氏)。
CDPを導入する目的やタイミングの例として、「システムコスト削減・柔軟な環境を作りたい」「顧客エンゲージメント向上と売上向上を実現したい」「顧客との直接コミュニケーションが出来る環境を作りたい」「プロモーションの計測・評価ができる環境を作りたい」などが挙げられるという。
実際にCDP製品を選定する際の注意点として、「やりたいことに向けた目標を最低限クリアできる安価なものを選んだ方がいい」と伊藤氏。機能が重複するツールが何種類も入っているというケースをたくさん見てきたという伊藤氏は、「スモールスタートの方がトータルのコストが安くなる」と助言した。
最後に伊藤氏は「EVERRISEはプロダクトの提供、統合データ統合基盤の構築などの大型プロジェクトのコンサルティングから実装、そして運用後のサポートまで広く手掛けています。知見やノウハウもあるので、お困りの際は声をかけていただければ」と語り、講演を終えた。
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