売上だけでなく、『Hanako』ブランドを成長させることも必要
田島:経営目線だと、売れ行きのいいものや広告の入るものになるでしょう。ですがそれだけではなく、中長期的に考えて『Hanako』のブランドを成長させることができるかが非常に重要だと捉えています。
先ほど「チャーミングで頼りがいがあって、時には真面目なことを語るような人格」だとお伝えしましたが、その人格を感じ取ってもらえる号を意図的に作っています。部数や集広を意識しすぎると、楽しいときにだけ一緒にいる子、という人格にしかならない。それって、この先も寄り添っていける「友達」ではない気がしていて。ハナコさんは、読者と友達になりたいので。ただの遊び仲間ではなく。
たとえば、創刊30周年の2018年には「働くことと、生きること」という特集を仕掛けました。実はHanakoは創刊2号目に、女性ニュースキャスターのライフスタイルを特集する企画をやっていて。小池百合子さんや安藤優子さんに取材し、女性の働き方について向き合った特集を作っていた。そういったレガシーもちゃんと継承した企画をずっとやりたいと思っていて、お店を紹介する記事は一切なし、46人の女性に対するインタビュー企画のみで構成しました。

ですが正直、他の号に比べると売れ行きはよくありませんでした。しかし、読者の方から「こんな特集もやるんですね、おもしろかった」と言われたり、広告代理店や広告主の方から「こんな特集もHanakoでできるんですね」とご賛同を頂き広告出稿につながったりと、長らく情報誌として認識され続けた『Hanako』の、ライフスタイル誌としての新しい可能性を引き出すことができました。
時代に寄り添いつつ、新しい気づきを与える
中川:この特集は世の中に対して半歩先の提案をしていたと思いました。このような世の中に対して問いを投げかけるような特集はときどき行っているのでしょうか。
田島:先ほど時代に寄り添うという話をしましたが、それは半歩後をついていくという意味ではなく、半歩先にいて新しい気づきを与えたいということ。もちろん、『Hanako』の情報に触れることで楽しい気持ちになってほしいというのが一番なので、世の中に問いかけるような特集を組むときには、それがいかに説教くさくならないか、あくまでも「楽しい」という読後感を大切にできるかは意識しています。
このような特集を女性誌で組もうと考えたのは、自分が19年間、男性誌である『BRUTUS』の編集に携わってきたからだと考えています。
中川:それはなぜでしょうか。
田島:前述した、部数を売るための号・広告を集める号・ブランドを作るための号という特集の幅の持たせ方が、『BRUTUS』の編集で培ってきたことだからです。この経験を、女性誌『Hanako』でも活かしたいと思っていました。
中でも『Hanako』に必要だったのが、ブランドを作るための号。これが雑誌を「習慣化」してもらうためには重要だと考えています。単に売れる号狙いだけだと、特定の号の単品買いになってしまう。先ほどお話しした、「遊び仲間ではなく、友達になりたい」という話ですね。「働くことと、生きること」を皮切りに、学びや防災、SDGsといった硬派な内容の特集も織り交ぜるようになりました。