コロナ禍において、先進的な消費者はどのようにソーシャルメディアを利用したのか
最後に紹介する論文は関西学院大学の西本章宏准教授、大阪大学の勝又壮太郎准教授、横浜国立大学の本橋永至准教授による「急激な環境変化に対するイノベーションの源泉としての創発的消費者―COVID-19のアウトブレイクにおけるソーシャルメディアの利用動向分析―(PDF)」です。
この論文は新型コロナ禍の消費者の行動に着目した非常にタイムリーな研究であるのと同時に、ENC(emergent-nature consumers)とLU(lead user)の相違点を分析しているため、理論的にも大きな貢献があります。拙著『キーパーソン・マーケティング』でも触れましたが、消費者の中には高い能力やスキルを持った特別な消費者がいます。ENCやLUも消費者のキーパーソンの一形態と考えられます。
ソーシャルメディアは誰でも無料で利用できますが、その利活用の在り方は消費者セグメントによって異なります。本研究ではENCセグメントに着目し、質問調査票とアプリ起動ログの二つの側面からソーシャルメディアの利用動向を分析しています。本研究の分析結果は、ENCは同じ先端層であるLUよりも環境変化に対して頑健であり、新しい生活様式に適応した消費者であることを示しています。
これまで簡単に4本の論文を紹介してきましたが、関心を持たれた論文は是非ご一読ください。この記事では紹介しきれなかったポイントやヒントも数多く発見していただけるものと思います。