個人を特定できる情報は収集しない
消費者のプライバシーへの配慮については、「プライバシーは我々の重要な特徴」とMironiuk氏。Cosmoseが収集するのは位置データ、タイムスタンプ、SDKの性能を改善するために収集するメタデータと診断情報のみ。これらを、ユーザーに合意を得てから収集する。名前、電話番号、メールアドレスなど個人を特定できる情報は一切収集しない。IDは匿名化されており、最低でも100の匿名IDのグループで分析を行うという。収集した広告IDは”OMNIクッキー”として暗号化されるが、OMNIクッキーから個人を特定することは不可能だという。ユーザーは合意後、いつでもオプトアウトできる。
Mironiuk氏は「プライバシーに関する我々の考え方は、ユーザーにオプトアウトできる選択肢をしっかりと提示し、透明性を維持することだ」と述べる。顧客は、匿名化した自分のショッピング行動についてのデータを共有することと引き換えに、オファーを受け取ったり、欲しい製品を早く見つけるなどのショッピング体験を改善できる。これに応じる人は今後増えるとMironiuk氏は見ている。
「規制遵守そのものはテクニカルなことで難しくはありません。重要なのは、顧客が安心できることです。わかりやすい日本語で、データの共有について説明していきます」(Mironiuk氏)
また高橋氏はこれまで個人情報のデータ利活用における問題に取り組んできた経歴をもつ。「すでに経産省や個人情報保護委員会にはコンタクトをとっており、私個人の理解でもCosmoseの手法は日本の法に抵触しない」と述べている。
コロナ禍での学びは「ショッピングは体験」
世界の小売事情を知るMironiuk氏、このところの傾向として「ショップの販売員に与える権限が大きくなっている」と述べる。これまでは会計をしたり、商品を探すのを手伝うという位置付けだった販売員だが、顧客との関係を構築し維持する役割をより強化している傾向があるという。
新型コロナは小売に大きな影響を与えたものの、「ECはそれほど増えなかったことに個人的に驚いた」とMironick氏。各国のEC比率は中国が最も高く30%、シンガポールは15%だが、ラグジュアリーやコスメでは10%以下という。
これらから言えることとして、Mironick氏は「顧客は単に製品を買いにショップに行くのではない。体験を求めており、その重要性は思っていたよりも高い」と述べる。
中国、オーストラリア、シンガポールなどではアフターコロナを見据えた動きが進み始めているというが、「ECとオフラインのコマースは共に残る。小売業はこの2つのチャネルをうまく活用する方法を見出す必要がある」とアドバイスする。
高橋氏は日本市場への抱負として、「日本のEC化率はかなり低いにも関わらず、(オンラインの行動は把握できていても)オフラインはほとんど計れていない。コロナ禍が収束すると店舗に顧客が戻ってくることを考えると、今この時期にオフラインのマーケティングや戦略を見直す必要がある。その点を支援していきたい」と語った。