モビリティカンパニー化への変革を担うKINTO
「キッコーマン&KINTOに学ぶ、サブスク参入の現状と今後」と題された本セッション。両社それぞれが日常に浸透する定番の製品を持ち歴史もある中で、なぜサブスクリプション型のサービスの提供を始めたのだろうか。
まずは、KINTOのマーケティング企画部で副部長を務める藁谷氏が「KINTO」のサービス提供の背景を語った。
「KINTOは、トヨタがクルマの会社からモビリティサービスの会社へ変革するという流れの中で、その具体的な1つのソリューションを具現化するために2019年に設立されました」(藁谷氏)
KINTOでは通常、クルマを購入、所有するにあたって発生するイニシャルコストとランニングコスト、任意保険などをすべてひっくるめた月額定額プランを提供している。プランの明瞭さに加え、Webで申し込みから契約までが可能という気軽さもあり、クルマを保有したことがない若年層などを中心にクルマに乗るきっかけを提供しているのだ。高齢者の場合、免許返納のタイミングで解約もできるという。
クルマを保有する中で、その周囲で起こりうる費用やプロセスなどの制約がクルマ離れの要因となる中、KINTOでは体験するユーザーがクルマを純粋に楽しむことを目標としてサービス開発を行っているようだ。
醤油に新しい付加価値を
続いて「BottleBrew」のサービス提供の背景について、キッコーマン食品の花田氏は次のように語る。
「サービス誕生の背景には、醤油の出荷量が減少傾向だったことが挙げられます。過去20年で3割も減少しており、家庭向けに絞ると半減という状況です。共働きなどライフスタイルの変化や和食以外の食の多様化など様々な要因が考えられます。その一方で、家庭における醤油の常備率というのは、ほぼ100%というデータもあります。そのため、新たに醤油を使う人を増やすより、醤油を用いた食シーンに価値を感じてもらうことが重要だと考え、顧客とダイレクトにつながることができるサブスクリプション型のサービスを採用しました」(花田氏)
そして、BottleBrewはキッコーマン食品の新規事業という位置付けで2019年にローンチ。届いた醤油のもと(発酵元液)にしょうゆ種を加えて発酵させることで、醸造過程を楽しみながら、“醤油を育てる”形で醤油作りができるサービスとなっている。
このサービス設計によって、醤油を作る楽しさや発酵度合いなどで味わい・香りが変わる楽しさ、繰り返し発酵を続ける楽しさを新しい付加価値として生み出した。