既存事業との相乗効果や価値の棲み分けといったメリットも
サブスクリプション型のビジネスモデルとして製品そのものの価値を提供するだけにとどまらず、体験する価値の提供を始めたKINTOとキッコーマン食品。KINTOにはトヨタの自動車があり、キッコーマン食品には醤油という既存の代表的な製品、事業が存在する。
では、既存事業との関係はどうなっているのだろうか。
藁谷氏によれば「KINTOによってトヨタのクルマに乗っていただく機会、すそ野を多少ではあるが広げることができている」という。
「クルマを使って豊かな生活を送っていただきたい、楽しんでいただきたいといった考え方の根底はトヨタ自動車と同じです。KINTOによって、クルマとの付き合い方に新たな選択肢が増えたと捉えています。クルマを保有し十数年と大切に乗っていただく価値ももちろんありますが、3~7年の間で色々なクルマを楽しむ、必要なタイミングで乗り換えることも価値の一つです」(藁谷氏)
藁谷氏によれば、実際にKINTOの提供を開始してから初めてクルマに乗る人や、これまでトヨタ以外のクルマに乗っていたがKINTOを契約する人が増えてきているという。
一方で、花田氏は既存事業で販売を行う醤油とBottleBrewの関係について、「棲み分け」を重視していると述べる。
「BottleBrewの大きな目的として、醤油の価値向上があります。醤油が発酵し、味が変化する過程を楽しむことや、BottleBrewを通して生まれる会話で、家族団らんをより良い記憶にしていきたいという思いがあります。マーケティング施策として醤油の価値の理解を得ることが重要とお伝えしましたが、専用Webサイト経由によるオンライン販売に加えて、トライアルキットの販売先に関しても醤油の専門店などを選定しています。既存事業の醤油が販売されているスーパーなどでは取り扱わず、棲み分けて販売する方針です」(花田氏)
BottleBrewもKINTOと同様に既存事業との間で対立することはなく、それぞれがアプローチできない部分を補完しあう状態を目指しているのだ。
サービスの普及・浸透に向けた課題と展望
最後にKINTOとBottleBrew、それぞれのサブスクリプション型のサービスとして普及・浸透を目指す上での課題となっていること、そして、今後の展望について藁谷氏と花田氏がそれぞれ想いを語った。
「KINTOというサービス一点張りになるのではなく、モビリティマーケットのようにモビリティという体験を総合的に提供しサービスの輪郭を広げていきたいです。そのためには、これからもお客様のニーズを吸い上げて応えていく必要があると思っています」(藁谷氏)
ローンチ間もないサービスであるものの、認知拡大やサービス改善など経て着々とサービスを成長させてきた藁谷氏が見据えるのは、単なる「クルマのサブスク」ではなくモビリティの全体を捉えたサービスの提供だ。
そして、花田氏は次のように語り、今回のセッションを締めくくった。
「サービス利用の全体観をイメージできることを目指していきたいですね。たとえば、醤油そのものだけでなく、醤油を使って料理を作る楽しさなども含めて提供していきたいです。また、製品を購入するだけでなく育てるという独自のおもしろさについても、利用いただいたお客様の声などを通して伝えていき、サービス自体も大きなものにしていきたいです」(花田氏)