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サイバーエージェントに聞く、3DCGがもたらすマーケティング・PRの進化

 本記事では、サイバーエージェントグループで3DCGを活用してイベント・マーケティングのあり方を変革している芦田氏、大木氏、岡村氏にインタビュー。3DCGを活用したPRイベントの事例やマーケティング活用の可能性を聞いた。

マーケティングに活用できる3DCGとは?

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回はサイバーエージェントグループが取り組む、3DCGを駆使したクリエイティブ活用についてうかがいます。まず、3DCGがどういった技術か教えてください。

株式会社サイバーエージェント/株式会社Cyber Human Productions 取締役 芦田 直毅氏

芦田:CGと言えば、映画や全編CGで構成されたアニメーションなど、様々なところで使われています。中でも、3DCGは奥行きや光、影など現実世界に近いものを再現したり、現実ではありえない演出をしたりすることが可能な技術です。

MZ:3DCG技術における御社の強みはなんでしょうか?

芦田:大きく3つあります。1つ目は、CGに関する知見と広告・コンテンツに関する知見を持っていることです。CG技術に強い企業は数多くありますが、多くが先述のような映画やアニメーションなどでの活用となっています。我々はインターネット広告の知見を持つサイバーエージェントの強みを活かして、広告やコンテンツ、PRイベントでの3DCGの提案が可能です。

 2つ目は、設備に対する投資です。我々は3~4年前から設備投資を強化しており、人物などを3DCGモデル化するのに必要なフォトグラメトリスキャン用のスタジオを自社で保有しています。保有している企業は数少なく、日々様々なトライアルができているので強みになっています。

 3つ目は、AIと掛け合わせた活用です。サイバーエージェントにはAI事業部が存在し、事前に広告配信効果を予測する「効果予測AI」を開発しています。効果予測AIと3DCGの相性は非常に良く、予測結果を的確に再現したクリエイティブを3DCGで制作することができます。

3DCGで変わるイベント・PRの形

MZ:CyberHuman Productionsでは、3DCG・XR技術によるPRコンテンツ・企業イベントの開催を起点とした、ユーザーに新しい価値体験を提供するイベントテックサービス「FUTURE EVENT Basics」の提供を4月に開始するなど、イベントでの活用にも力を入れてますね。それはなぜでしょうか。

株式会社サイバーエージェント FutureLiveGroup Creative Director/Producer 大木 拓郎氏

大木:大きく2つの背景があります。1つは新型コロナウイルスの影響です。リアルイベントの開催が以前に比べても難しくなっており、さらにリアルで行っていたイベントの模様をオンラインで配信するだけでは顧客が満足しなくなっています。

 もう1つは技術の進化です。3DCG技術の進化によって、これまでのように膨大なコストや時間をかけて美術セットを撮影したり、条件にあった場所を探したりせずとも、ニーズに合わせた空間がバーチャル上で用意できるようになりました。

 今後リアルイベントの開催は少しずつ戻ってくると思いますが、オンラインならではの価値もあります。そのため、我々としては3DCG技術を駆使してオンラインでの企業イベントやPRイベントを開催することで、これまでとは違った体験の提供とリーチ(参加者)の拡大ができると考え、イベントテックにも力を入れています。

岡村:私はリアルイベントの企画提案を経験してきたことがありますが、当日起点になっていることが多いので、オンラインイベントを通じて事前・事後の施策も拡張できればと考えています。

株式会社Cyber Human Productions 新規事業開発室 室長/プロデューサー 岡村 圭太朗氏

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Y's、ソニー、Zホールディングス事例でわかる、イベント×3DCGの可能性

MZ:企業の活用事例を紹介いただけますか。

岡村:大きく3つの事例があるので、それぞれについて紹介していきます。

プレスイベントやVRコンテンツを1つのCG空間で実現

岡村:たとえば、CyberHuman Productionsの取締役である桐島ローランドが手掛けたアートプロジェクトに合わせて、Y's(ワイズ)様とパナソニック様のコラボレーションによるイベント施策を3DCGにて行いました。

 VRコンテンツを起点にプレスイベントを開催し、Y'sの表参道のショップをバーチャルコンテンツ化しました。ポップアップストアをリアルで開催するのが難しくなっていたため、その代わりとなるものを開催したいというニーズから実施に至りました。

 結果、メディア掲載も多く、実店舗に行く動機作りが難しい中、店舗でアートを体験することをオンライン上で実現することができました。1つのCG空間をVRコンテンツやプレスイベントの会場など、マルチユースできるのは3DCGの特長だと思います。

ダイナミック演出の製品発表会を開催

岡村:2つ目はソニー様のスマートフォンブランド「Xperia」のグローバル製品発表会での事例です。発表会の舞台を3DCGで再現することで、巨大サイズの架空のディスプレイに製品を表示し、リアルではできないような照明の演出も行いました。

 リアルイベントの場合、会場の都合などで難しい演出などが出てきますが、3DCGを活用すれば、柔軟な演出が可能になるため、各企業様のニーズに応えられると思います。

インナー向けの施策でも活用可能

大木:3つ目は、Zホールディングス様が行ったメディア向け戦略発表会並びインナーカンファレンスでの事例です。メディア向けの戦略発表会は、事前にヤフーとLINEの統合に関して経営陣がバーチャル上で説明する動画を収録しました。

 そして、内部のインナーカンファレンスでも、戦略発表会で活用した3DCGを活用しました。こちらはライブ配信で、途中社員の顔を背景に映すなど、リアルではできない演出を盛り込みながら行いました。

 インナーカンファレンスをバーチャルで開催することで、地方や海外の社員の方も参加できますし、一般の方が参加できるような設計にすることも可能だと思います。

岡村:バーチャルイベントで使用した3DCGを活用した社内研修用の動画制作や、採用向けコンテンツの制作など、二次利用に関するお問い合わせも増えています。

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ポルノグラフィティのライブでも採用

MZ:御社はファッションショーやオンラインライブでも3DCGを使った演出を担当されていますね。

大木:最近では、ポルノグラフィティさんのライブ配信のAR演出・制作も担当させていただきました。通常の半分の収容人数でしか有観客ライブが開催できない状況だったため、配信とのハイブリッドでライブを開催したのですが、オンラインのライブ体験もおもしろいものにするために3DCGを駆使したAR演出を手掛けました。

 メンバーのお二人をスキャンして制作した3DCGモデルを配信画面上に映したり、楽曲「アゲハ蝶」を演奏する際には、Twitterで事前に集めたメッセージがアゲハ蝶になって会場を舞う演出を行ったりと、様々な取り組みをしていました。こうすることで、ライブを配信で見るだけではない、新しい体験をオンラインライブにも付与することができ、好評いただきました。結果として、国内と世界のTwitterのトレンド1位を獲得しました。

MZ:オンラインならではの演出があると、配信ライブ市場もより盛り上がりそうですね。

業界のスタンダードを作る

MZ:最後に今後の展望をお願いします。

左:3DCGの背景を合成する前
右:合成後

芦田:新型コロナウイルスの影響もありましたが、今後イベントを起点にしたコミュニケーションの表現はよりアップデートされると思っています。それはエンタメだけではなく、企業イベントやPRイベントでも起きうることです。たとえば、プレゼンテーションソフトを使わずにプレゼンすることも今後は増えていくかもしれません。

 私たちは今後も様々なイベントのDXを3DCGやXR技術の力で推進し、業界のスタンダードを作る存在になりたいです。そのためにも、1つひとつのプロジェクトで品質を突き詰めると同時に、新しいサービス化も進めなければいけないと感じています。

大木:オンラインイベントの強みであるリーチの広さだけではない、新しい強みを作っていきたいです。3DCGを活用すると、動画としてみるだけではなく、没入できるポイントを作ることができると思っています。リアルイベントならではの参加メリットや没入感があるように、オンラインイベントならではの強みを作れるよう、今後もサービスを改善していきます。

岡村:今回イベントのDX支援の足掛かりとして「FUTURE EVENT Basics」の提供を開始しました。同サービスでは、3DCG・XR技術を用いた高クオリティなバーチャル会場でのイベント開催をより簡単にできるよう開発しましたが、我々はフルスクラッチでカスタマイズしたイベント企画も可能です。

 そのため、より革新的なチャレンジも行いつつ、3DCGを活用したイベント開催へのハードルを下げる取り組みにも注力できればと思います。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/25 14:56 https://markezine.jp/article/detail/36409