Z世代は社会課題に対する感度が高いのか?【現役大学生へのアンケート結果】
新規事業開発チームは、あらためてブランドパーパスを整理するため、いわゆるZ世代にあたる大学生との対話に踏み出しました。MarkeZineでも、デジタルネイティブのZ世代に関する記事や事例をよく見かけますよね。
世界的にも、社会課題への意識が高く、かつ広告嫌いなZ世代には、短期的な広告キャンペーンではなく長期のエンゲージメントを視野に入れたパーパスドリブンなマーケティングは相性が良いと言われています。
では日本においてはどうかというと、長年この世代に関わってきた筆者から見て、まさにここ数年で大きく変わってきたと感じます。
日本でも2020年からSDGsが小中学校の学習指導要綱に組み込まれていますが、その前後から中高生は授業でSDGsについて教わりはじめています。また大学進学も推薦入試が増加しており、その入試の面接や小論文対策で企業の社会貢献活動がテーマとして選ばれることが増えていることなどから、今の高校生以下の世代は全体的に社会課題に対する感度がとても高いです。
一方、大学生は自分が興味のあることだけが流れてくるソーシャルメディアにどっぷり浸かっていて、その感度には個人差があります。
ただ、近年はメディアやインフルエンサーがエシカルファッションやヴィーガン、ジェンダー、気候変動に関する話題などを取り上げる機会が増えており、意外にもトレンドに詳しい学生ほど社会課題への感度が高かったりします。
この世代に対して「企業の社会的活動」に対する意識を知るために、2021年1月に上智大学経済学部の学生(1~4年)に対し、企業のCSR(corporate social responsibility:企業が社会的責任を果たすために行う活動)についての調査を行いました(多くの学生は「CSR」という言葉にはなじみがないため、説明してから調査しています)。
その結果として、いくつかのデータをご紹介したいと思います。

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1位のサントリー、2位のユニクロは、社会貢献をしている(していそうな)企業名を挙げさせた時にもよく出てくる2社です。
サントリーの場合、コーポレートブランディングに積極的に投資しており、広告で環境保全活動を見たことがあるという意見がよく挙げられます。ユニクロは今の若者にとって非常になじみ深いブランドであり、店頭で古着のリサイクル活動や、リサイクル素材を活用した服を見たという意見がよく出てきます。
3位のスターバックスも、今の若者にとって非常に親しみのあるブランドと言えます。脱プラスチック運動もスターバックスの紙製ストローで知ったという学生が多く、コーヒー豆産地とのフェアトレードに積極的であるというイメージもあるようです。
この3社は、単純に認知が高いということだけではなく、サントリーは企業広告、ユニクロとスターバックスは店頭という接点を活用することで、イメージ形成に成功しているように思います。
次に、学生たちが企業のCSR活動のどこに注目しているのか。対象は1年から4年まで幅広いのですが、学生たちは切実さが増し、自分ごととしてとらえやすくなるように「どんな企業に就職したいか」を聴取してみました。
40%を超えたのが「LGBTやマイノリティなどの人権に配慮している」「環境保全への取り組みを行っている」「大きな不祥事がない」「仕事上での男女格差がない」「子育てしやすい環境(復職率や育休制度、育児支援制度など)がある」「社内の教育やキャリア支援制度が整っている」「労働時間や休日が適正である」など、環境、社会、ガバナンスのいわゆるESG要素がしっかり入ってきています。
一方で、寄付活動に関しては支持率が低く、冒頭でご紹介したCSR優良企業の理由でも「収益となる形でCSRを実行している(ネスレ)」「環境に配慮した事業を行っている印象(トヨタ)」「自社製品を生かして途上国における衛生観念の普及に取り組んでいる(ユニリーバ)」など、学生の多くは寄付ではなく本業での社会貢献を評価する傾向があり、理由として「なぜ」その企業(ブランド)がその活動をやるのか、という理由を大事にしているようです。
多くの学生はまだ「CSV (Creating Shared Value)」という言葉を知りませんが、ある意味Z世代はCSV志向が強いのかもしれません。
また、授業などで企業のCSR活動などを紹介する際、必ず挙がるのが「こういう活動をしているなら企業はもっと言って(知らせて)ほしい」というものです。実際、企業のCSR活動について知りたいかを聞くと、90%以上が「知りたい」と回答しています。

しかし、積極的に調べるわけではなく行動としての優先順位は低いので、企業側から積極的にアプローチしない限り、このギャップは埋まらないと思われます。
これらを筆者の視点でまとめました。
Z世代へのCSR価値伝達には、本業(モノやサービス)と接着する文脈が必須
SNSネイティブなこの世代は「誰が」発信するかに重きを置きます。それは発信者が有名かということではなく、その発信が「その人(企業)らしいか」「なぜこの人(企業)がこれを発信しているのか」ということを重要視しているからであると思います。
そのため、スターバックスにおけるストロー、ユニクロやパタゴニアにおける服の素材といった、企業の本業における社会活動は理解されやすいようです。
「その企業は人を大事にしているか」が最大の関心事である
多様性への配慮。特にジェンダー格差などについてこの世代は非常に敏感です。マーケティング施策においても、パンテーンの「#HairWeGo」のように多様性を認めようというメッセージがあるものは受け入れ性が高いです。
そして、このようなメッセージが「口だけ」ではないということを、その企業が従業員をどう扱っているかという点で確認しています。この世代は企業の情報収集をする際、OB・OGなどの声やネットでの評判などを必ず確認します。
企業の情報発信においても、従業員を前に出してコミュニケーションしたり、SNSで対話したりという姿勢は好感度につながるようです。もちろん今回のストーリーのように、Z世代とワークショップをすれば、たくさんのフィードバックが得られます。
ビジョン、パーパスと社会、環境への取り組みがつながって見えると価値が高まる
SDGsについて教育を受けてきたZ世代はサステナビリティへの感度が高いのですが、企業の取り組みは断片的にしか知りません。パーパスから社会、環境への取り組みまで一貫してそのブランドらしさを貫き、それぞれの活動に納得性を持たせることで、より信頼性が高まるようです。
今回から次回にわたり、Z世代にも受け入れられるようなブランドを考えるためのフレームワークをご紹介したいと思いますので、ぜひご期待ください。