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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

「イモトのWiFi」からPCR検査事業の支援へ スピード感あるトランスフォーメーション実践の舞台裏

自社の強みを活かして人の役に立つことが理念

——冒頭でも西村さん発案のユニークな企画のお話がありましたが、今回のマーケティング支援の新事業、それも医療領域に関与する業務がこんなにも速いスピードで決まっても、社員の方々は戸惑いなく動けたのでしょうか?

 これまでの事業と違って、概要を理解するのに一瞬の時間は必要だったかもしれませんが、しっかり説明したことで皆がすとんと腹落ちし、とてもてきぱきと動けたと思います。「なぜWi-FiからPCR検査なんだ」と懐疑的に受け止める人は、一人もいなかった。あんなに慌ただしかったのに何とか乗り切れたのは、皆がもたつかず、一丸となって進められたからです。

 その要因は、常日頃から理念を共有しているからだと思います。冒頭で申し上げたように、私たちの会社は世の中の役に立つことをする会社であって、Wi-Fiレンタルの会社というわけではありません。経営理念に掲げる、「当社にしかできない独自のサービスを創り、お客様に喜んでもらえる仕事をすることで世の中を変えていく」ことに共感した人たちの集まりなんです。採用時にも必ず、事業の内容は意識しないでほしい、その時代の社会を生きる人のために汗をかける人にぜひ来てほしい、という話をしています。

——なるほど。だから、これほど急激な転換にも対応できたわけですね。

 そうですね。PCR検査に関しても、これまでの考え方や共有の仕方を特別変えたわけではありません。会社説明会から普段の朝礼まで、私たちのアイデンティティーの本質をいつも共有しているので、今回も社内的には何の問題も感じませんでした。私が今「蕎麦屋をやるよ」と言っても、それが我々の強みを活かして人の役に立つことであり、世の中をよりよく変えていくためのチャレンジであるならば、皆がパッと動けると思います。

まったく異なる領域でゼロからブランドを確立

——すばらしいですね。今、マーケティング業界では「パーパス・ブランディング」に注目が集まっていますが、御社は元々「お客様に喜んでもらえる仕事をする」という理念が明確だから、まさに理念ドリブンで事業を展開できているわけですね。

 そう思います。今、PCR検査はたくさんの方々に利用いただいており、事業の立ち上げとしては“ゼロイチ”のフェーズはもう終えました。コロナ禍が収束すれば検査の需要も減るわけなので、この事業に関しては、早く利用者が減ることが我々の希望です。既に、当社の強みと今回の知見を活かせる次の社会課題を発見し、取り組んでいる最中です。

——今回の新事業を通して得た手応えや、御社の今後のプラスになったことは何でしょうか?

 「イモトのWiFi」で培ったブランドの確立やマーケティングの手法が、「にしたんクリニック」のブランド化に十分活かせたことです。まず母体が違いますし、領域も違う、関連性もまったくないので「イモトのWiFi」にいくら知名度があっても今回の事業には何の関係もありません。既存事業の虎の威を借りず、新事業をゼロベースでブランド化できたことで、これまで自分がマーケティングの本質だと思ってきたことが間違っていなかったとわかった。この先、蕎麦屋でも魚屋でも、誰もが全国で知るブランドを作る自信がつきました。

 私がブランド作りやマーケティングでベンチマークにしているのは、実はコカ・コーラなんです。もちろん独自の製法はあっても、砂糖と炭酸水が主な要素で、テクノロジーを駆使したApple製品などに比べたらシンプルですよね。なのに、世界中どの国でも親しまれ、何ともいえないさわやかさやハピネス感を醸し出している。同じくらいマーケティング力のある競合が広告に巨額を投じても、牙城は崩せていません。また、エステーのエッジの効いたブランディングも引き付けられます。他では見たことのない広告で、口で説明できない同社だけのおもしろさが印象に残ります。

 今後も視野を広くもって、領域にとらわれずにヒントを得ながら、独自の事業や広告を展開していけたらと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/25 06:30 https://markezine.jp/article/detail/36576

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