最も外注したいのは「家事を考える負担」
フリーランスとして働いているHさん(27歳)は、家事代行を週に二回使うヘビーユーザーです。彼女はインタビューの中で、家事代行に依頼する事項として日用品の在庫の点検まで依頼していることを話してくれました。
「家事代行には日用品の管理までお任せしています。たとえば醤油など調味料がなくなったら、これがなくなりそうですよって伝えてもらうようにしています」(Hさん)
他にも日用品や宅内在庫の管理を家事代行にお願いしている方はいて、掃除や洗濯を終えてもらうことと同様に重要な依頼として捉えていました。この「次にどんな家事をやればいいのかを考える」ことが、家事を考える負担です。在庫管理は最もわかりやすい例ですが、たとえば料理を例に取っても、冷蔵庫の中の食材を使い切るためにどんなレシピで、どの順番で作ればいいかを考える手間は、場合によっては調理そのものより大変です。
私は、この「家事をこなすこと」と「家事を考えて組み立てること」をそれぞれ、ハウスキーピングとハウスマネジメントと呼び分けています。そして、家事アウトソーサーが家事代行に依頼したい、最も外注したいことがこのハウスマネジメントです。IT企業に働く共働きのTさん(28歳)は、家事を考える手間に関して次のように説明していました。
「洗濯物を干さなきゃなっていうのを頭に入れておくのが嫌なので乾燥機を買ったし、大物の布団を干したりしなきゃなって考えるのが嫌なので家事代行に頼みます」(Tさん)
もちろん、干すという行為にかかる時間や手間が面倒という側面も大いにあるでしょうが、共働きで忙しい日々を送っている中、育児までしているとなると、頭の中に家事のことが少しでもちらついてしまうという状態を極力回避したいのだそうです。

求めるのは「総務部」のような存在
この「考える負担」はコロナ禍以降、特に生活者のストレスになっていると感じます。これまでは家の家事のことを職場で考えるということは少なかったですが、在宅で常に家にいると仕事中にどうしても家事のことが頭をよぎってしまう。午前中に昼食の準備のことを考えたり、仕事をしながら洗濯物を回す時間を考えたり。あるインタビュー対象者は、この考える手間のことを「マインドシェアを奪われたくない」と表現していました。目の前の仕事や趣味に没頭する時間を確保するためには、頭のメモリを10%でも家事に割いてしまう環境から逃れたい、というニーズが確かに存在するのです。
この考える負担、ハウスマネジメントの外注は、家事代行に頼む範囲として今はまだ一般的に家事と言われる域を出ていませんが、今後はその範囲を拡大していくのではないかと考えています。たとえば家に足りない商品を洗い出すだけじゃなく購買まで済ませてくれることや、もっと言えば家のWi-Fiの調子が悪いと思えば通信会社に連絡を取ってくれる、といったことまで。つまり、「家庭内総務部」のニーズです。
こちらから指示を出した仕事を受けてくれる下請け的な立ち回りではなく、先んじて家庭に必要なものややるべきことを洗い出してくれる存在が、今後の家事において求められてくるでしょう。