「データ送付の自由度」が実装のポイント
――では、CAPIの実装の様子を教えてください。
黒川:実装にあたっては、データの取得場所が変わる点や、セキュリティや個人情報の取り扱いについて問題がないかどうかを、コンプライアンス部門に相談しながら進めていきました。電通デジタルさんにサポートいただいていましたので、実装にあたって当社で行った作業はサーバー上のタグ設置など、限定的なものでした。導入まで2ヵ月程度で、非常にスムーズに完了した印象です。
――電通デジタルの三谷さんは、どのようなサポートを提供されたのでしょうか。
三谷:主にどのデータをどのように取得し、送付するかの設計を行いました。送付できるデータ自体は、受け口となるCAPI側で定義されている“規定演技”ですが、そのデータをどのような技術で取得するかは実装者、つまり広告主に任された“自由演技”になっています。
取得には様々な方法があり、場合によっては「手間を掛けて実装したのに、従来のピクセルタグと取得できる情報がほとんど何も変わらず、パフォーマンスに良い影響が出てこない」というケースもあります。そうならないために我々は、持続可能性の高い取得方法の研究も行いました。
セゾン自動車火災保険さんのケースでは、サーバーに送るデータはアクセスログとフォーム入力情報に大きく分かれていたのですが、後者は個人情報にあたるため使用せず、今までピクセルタグで取得していたデータのみを送る選択をしました。具体的には、既に導入されていたGoogleタグマネージャーに設置したタグから得た情報を、クラウド環境上で処理し、サーバー側のログとしてアクセスログを集めるようにしたのですが、既存ツールを用いることでタグの設計を大きく変えることなく完結できました。
――個々のビジネスに合わせた対応が必要なのですね。
三谷:はい。自由度が高くいろいろなやり方ができるからこそ、当社ではその中から一番クライアントさんに負担をかけず、かつ実装することで取得できる情報量が増える“持続可能な形”をご提案するよう心がけています。ちなみに個人情報の利用が必要な場合は、法的な論点整理のコンサティングや同意管理プラットフォームの構築を含めたサポートも提供しています。
規制によるデータ欠落は既に始まっている
――では、導入後の成果について教えてください。
黒川:Facebookピクセルのみを活用したキャンペーンと、CAPIを併用したキャンペーンの結果、2つのパターンを比較したところ、CAPIとピクセルを併用したキャンペーンは、CV件数送付量が16%増加、さらにCPAが14%削減という結果が出ました。
正直なところCookie規制によって困難になる従来の計測の代替手段として、“防御”という思いでCAPIを取り入れた側面が強かったので、かえってパフォーマンスが向上したことは嬉しい誤算でした。
三谷:Cookieが使えなくなるのはまだ先の事と思っていらっしゃる方も多く、CAPIも将来の備えという位置づけで捉えられがちですが、今回の結果は、それが現在進行形で進んでいる話だということを如実に示していると思います。
現時点でこれだけ数値が改善したということは、既に開始されている規制によってイベントの一部が欠損し、広告配信にもその影響が及んでいる可能性が高い。今対策をとるかどうか悩んでいるというのは、例えるならば「既に雨が降り出していて濡れているのに、傘を差すかどうか悩んでいる」状態に近いでしょう。だからこそ、CAPIの対応も急務ではないかと思っています。