未来の社会を見据えて。BMWのブランドパーパス
MarkeZine編集部(以下、MZ):遠藤さんは3月にフェラーリジャパンからBMWジャパンにジョインされました。ご担当される領域やミッションに変化はありましたか?
遠藤:フェラーリジャパンには5年ほど在籍し、ディレクターとしてブランドコミュニケーション、ディーラーマーケティング、リテールマーケティングのマネジメントに従事していました。特に力を入れていたのは、既存顧客のロイヤリティを醸成するブランドアクティベーションの取り組みと、セールスとマーケティングの連携に向けた取り組みですね。ラグジュアリーブランドのマーケティングというところで様々な経験を積ませていただきました。

BMWはもともと大好きなブランドだったので、よりたくさんのお客様を対象にこれまで培ってきた経験を活かしたいと思い、転職を決めました。現在はBMWジャパンのマーケティングの責任者を務めています。ラグジュアリーブランドという極めてターゲットが限られたお客様向けのダイレクトマーケティングとマスコミュニケーションを並行して行っています。
MZ:今回はBMWジャパンの40周年を記念して現在展開されているキャンペーンについてお話しを伺っていきますが、前提部分として、BMWが掲げているブランドパーパスについて教えてください。
遠藤:“ブランドパーパス”は、今マーケティング業界で一種のバズワードのようになっている印象がありますが、BMWは長年にわたり“サステナビリティ”をコア戦略と位置づけて活動してきました。サステナビリティにおいてはパイオニア的な存在であり、1972年のミュンヘンオリンピックでマラソンの先導車として電気自動車を提供した歴史もあります。
これに関連して、我々はもうひとつ、「モビリティを通じて、すべてのお客様にJOYをお届けする」というパーパスも掲げています。ブランドアイデンティティとして「駆け抜ける歓び」があるように、ただ車を提供するのではなく、それを通してお客様に歓びを提供することをゴールとして日々活動しています。
MZ:キャンペーンでは「次の世代によって大切なもの」を問いかけられています。BMWにとって“サステナブルな社会の実現”は、従来より注力してきたテーマだったのですね。
遠藤:はい。これは電気自動車の製造提供に限ったことではなく、“BMW自身をサステナブルな企業ブランドにする”という明確な約束もあります。2030年までにCO2の排出量を2億トン削減する、工場でのプロダクションを80%削減するなど意欲的な目標を掲げているほか、従業員全体でビーチクリーニングやフードロスのボランティア活動を行ったり、試乗イベントでは走行1キロごとに100円を環境保護団体へ寄付するといった企画を行ったりもしています。

パーパスを具現化した40周年の通年キャンペーン
MZ:続いて、今回のキャンペーンについて概要をご説明いただけますか。
遠藤:BMWジャパンは、日本での創立40周年を記念して、2021年4月より「世界は大切なものであふれている」をキーメッセージとした通年のキャンペーンを展開しています。このコピーは、先ほどお話しした「モビリティを通じて、すべてのお客様にJOYをお届けする」というパーパスに基づいたものです。

車を運転する人、車に乗っている人、その周りにいる人、すべての方々に大切な時間や大切な人、大切にしている気持ちがあるはずです。BMWジャパンとして、みなさんの大切なものを問いかけ、“対話をする”というのが今回のキャンペーンのコンセプトです。実際に、ソーシャルメディア上で「あなたが大切に思っているものはなんですか?」と問いかける取り組みも始めています。

MZ:“対話”が重要な軸になっているんですね。
遠藤:ええ。我々としては、お客様が自由でいられること、未来に向かって前向きでいられること、家族を大切にすること、友だちと楽しい時間を過ごすことなどを大切にしたいと思っています。これに対し、実際にお客様はどのようなものを大切にしているのか、対話しながら教えていただくということを主眼に置いています。
MZ:まさにパーパスを具現化したキャンペーンですね。冒頭でパーパスドリブンがバズワード化している印象があるとおっしゃっていましたが、そうした状況をどのようにご覧になっていますか?
遠藤:パーパスはあえて探し出すものではないと思います。これは私個人の考えですが、BtoCであろうとBtoBであろうと、すべての企業に「ビジネスを起こして、社会に貢献したい」という思いがあったはずです。自分たちの会社が何のために存在しているのかを社員全員で見つめ直して、共有することができれば、特別なことをせずとも、自然にマーケティング施策のテーマや方向性に表れてくると思います。