効果可視化にも役立つテンプレートを紹介!
小島:日本でも、コミュニティの効果を可視化できず悩む声はよく聞かれます。
小野:効果を示す方程式と検証のためのデータを取る仕組みがないと、実施した施策を定性的に報告することしかできません。「裏付けとなるデータがないので、データを取る仕組みをつくる投資判断ができない」というジレンマに陥っている場合もあると思います。
この状況を打破するには、お金や手間をかけずに計測できる指標がないか考えることも大事です。ある会社は、オンラインイベント時のカメラオン率をロイヤルティの指標としているそうです。
小島:今できる範囲で知恵を絞ることも、コミュニティマーケターに求められる資質ですね。私はAWSでコミュニティマーケティングをリードしているときは、活動の価値を伝えるため、本社のエグゼクティブにイベントに登壇してもらい、熱気を直接感じてもらうといった工夫をしていました。
小野:元Salesforceのコミュニティ担当VPで、コミュニティ・ストラテジストのErica Kuhl氏も、コミュニティ立ち上げ期の成功のカギは、CXOたちと、コミュニティの全体像、目指す成果や時間軸をすり合わせておくことだと述べています。彼女はその過程で使えるガイドとして、どんな立場の関係者と、何を調整しておくべきかをステップごとに整理した「ローンチガイド」を発表しました。
このローンガイドでは、詳細ステップ、施策や指標、組織図など、20週間でコミュニティを立ち上げるための具体的手順やテンプレートが、無償で公開されています。特に立ち上げ初期は、MVP(Minimum Viable Product)のような、価値を提供する最小限のプロトタイプを試作し、経営陣とすり合わせることが成功のキモといいます。こういったテンプレートは、迅速な試作と合意形成に役立つのではないでしょうか。
注目は「クリエイティブな個人によるコミュニティ形成」
小島:最後に、小野さんご自身が今注目しているコミュニティに関するトレンドを教えてください。
小野:クリエイティブな個人がコミュニティをつくる「クリエイター・エコノミー」に注目しています。スタートアップやテクノロジー企業の調査・分析を行っているCB Insightsがクリエイターエコノミーのカオスマップを発表しているのですが(参照元)、ここに125社以上が掲載されていることからも、盛り上がりがうかがえます。
たとえば、ニュースレターと呼ばれる、定期的にメールで記事を配信する個人メディアサービスで、何億円もの売り上げを上げる筆者が生まれています。人を惹きつけるコンテンツを発信できる個人が、企業よりも大きなコミュニティを作れるようになりました。
このような、クリエイター・エコノミーを下支えするサービスを提供するスタートアップが、大規模資金調達をする事例も目立ち始めました。FacebookやLinkedInといった既存のプラットフォームも、テキスト以外に動画などにコンテンツ対応の幅を広げています。
日本でもオンラインサロンが活発になり、noteも月額課金のサークルという新機能を追加するなど、兆しは見えていると思います。
米国No.1ライブ配信プラットフォームTwitchのコミュニティ責任者は「人はコンテンツを求めてやってきて、コミュニティのために留まる」と述べています。同社はマイクロコミュニティが生まれやすく継続しやすくする機能を開発したり、公認ミートアッププログラムを設計したりするなど、中小規模の自主的な集まりを企画運営するオーガナイザーの支援を強化しています。
小島:そういったトレンドを先行して把握するのにも、CMXは役立ちますね。
小野:はい。CMX Summitはすべてのセッションが英語字幕つき動画で公開されるので、自動翻訳で大まかには理解できるでしょう。今年は8月31日から9月2日にオンラインで実施します。その後開催するCMX Connect TokyoでもSummitの要点を共有します。コミュニティに携わる方にとって、未来を知れる機会です。いずれも無料なので、気軽に参加してみてはいかがでしょうか。
小島:参考になる知見共有、ありがとうございました。