コロナ禍の影響を受けた、2020年の注目トピックは?
小島:2020年に取り上げられたのはどんな内容でしたか。
小野:2020年のレポートによると、設立1年以内のコミュニティにおいても、8割が専任担当を設けているそうです。コミュニティの価値が広く認められるようになっていることがうかがえます。
その一方、2020年のキーノートでは、創設者David Spinks氏が、コロナ禍によって投資ができなくなり縮小・衰退するコミュニティと、戦略的にリソースを投資し成長するコミュニティの二極化が進むと指摘しました。必要な投資を確保するためには、戦略とデータに基づきコミュニティの価値を示し、企業の意思決定の場での発言権を確保することが求められます。
小島:コミュニティの価値を可視化する重要性は、ますます高まっていますよね。第2回のゲストで、Salesforceでユーザーコミュニティをリードする坂内さんも、コミュニティが部門の目標達成にどう貢献しているか、いつでも説明できるようにしているとお話ししていました(参考記事)。
小野:成功指標はコミュニティが所属する部門によっても異なります。そこでCMXでは、コミュニティの目標や価値を経営陣や他部門とすり合わせる際に活用できる「SPACES」というフレームワークを提唱しています。
Support:製品の使い方などの課題をユーザーコミュニティ内で解決する
Product:製品をより良くするためのフィードバックや洞察をコミュニティから得る
Acquisition:コミュニティメンバーの発信などにより新規顧客を獲得する
Contribution:共創コンテンツを増やし、事業に貢献する
Engagement:共通の関心軸を持ったコミュニティ活動により、ユーザーのロイヤルティと継続率を高める
Success:ユーザー同士で成功事例などを共有してもらうことで、ユーザーを拡大する

レポートにみるコミュニティ運営の現在
小野:続いて2020年のレポートから、いくつかのトレンドを紹介したいと思います。全文英語ですが、グラフも多く、眺めるだけでも概要がわかりますので、気になる方はぜひご覧いただければと思います。

まず、コミュニティチームが属する部門やコミュニティの目的は以下となっています。
コミュニティが所属する部門
(1)マーケティング(30%)
(2)カスタマーサクセス/エクスペリエンス(18%)
(3)コミュニティ部門が独立して存在(15%)
コミュニティを創設・継続する目的
(1)サポート(26%)
(2)エンゲージメント(24%)
(3)サクセス(18%)
サポート、エンゲージメントは常に上位です。また、サクセスは今年から追加されましたが3位に食い込んでおり、顧客の成功を重視する企業が多いことがわかります。
続いて、コミュニティ運営において重視する指標のトップ3は以下です。コミュニティマネージャーと経営陣の調査結果を比べてみると、視点の違いが浮き彫りになります。
コミュニティマネージャー
(1)アクティブユーザー数(65%)
(2)新規参加者数(51%)
(3)SNS投稿等の発信(48%)
経営陣
(1)新規顧客数(29%)
(2)既存顧客のリテンション(26%)
(3)アクティブユーザー数(22%)
なお、経営陣にコミュニティの効果を数字で裏付けてレポートできている組織は12%しかありません。コミュニティマネージャーが感じる課題の1位は、依然として効果の定量化(45%)です。