「#大人の発達障害グレーゾーン」に見る、SNSに求められる変化
「#大人の発達障害グレーゾーン」は、成人で発達障害の疑いがあることを意味するハッシュタグです。専門医に罹って「○○傾向である」と診断された人々以外にも、専門医には罹っていないが発達障害に該当する言動がある人々が、このハッシュタグを使用しています。
投稿者は、大人の発達障害グレーゾーンにある本人や、夫や妻などの身近な人が発達障害グレーゾーンである人です。主にエピソードを紹介したり、少しでも気持ちが楽になるための工夫を紹介したりする内容が多くなっています。生きづらさを感じながらも生き抜かなければならない人々が、互いに閲覧・応援できるハッシュタグとして注目されています。


このハッシュタグがついたn=1の投稿を詳しく見てみます。

- ・30代女性(推定)、2児の母
- ・発達障害グレーゾーンと診断済みで、ASD・HSP気質。パニック障害、会食恐怖症でもある。
- ・写真は様々だが、基本的には自分の精神状態や体調について言及する投稿が多い。自分に言い聞かせるように自己を肯定する投稿もある
- ・コメントには「自分もそう/そうだった」「こうしてみたらいいかも」など、優しいコメントが多い。
- ・自分の特性を認めてもらうことで、自分でも自分のことを認めてあげたいと思っている
「#大人の発達障害グレーゾーン」というキーワードが注目される理由です。
【既存路線の価値】
自分の強みをほめられる満足
↓
【新路線の価値】
自分の弱みを認めてもらえる満足
SNSは、自分の強みではなく、弱みを認められることが求められる時代になっているのです。これまでSNSでは、自分が既に自信をもっている強みを発信して、それを人に認めてもらうことで、「やっぱり自分はすごいんだ!」という満足感が得られていました。しかし、ここに来て自分でも認めることができないような自分の弱みをあえてSNSでさらけ出す人が出てきました。そうすることで、他の人と弱い者同士で共感しあったり助け合ったりできる。そこに価値が見出されはじめています。
このキーワードに共感する人たちは、日常生活では、自分の特性を周りにいる人々には言えない、認めてもらえないと感じています。だからそれを自分でも認めることができません。しかし、そのように思っていた人自身が、「これで良いんだ」とその特性を認めることができるようになっています。結果的にポジティブに生きることができる流れができることで、日常生活にも還元されています。
価値観や性格が多様化し、ダイバーシティの考え方も浸透しつつありますが、まだ日常生活の中ではそうそううまくいかないのが現実でもあります。そんな中で、ありのままの自分を肯定できる点で注目されています。
このキーワードからアイデアの方向性を導くと、以下のような例が考えられます。メディアのカテゴリーでは、投稿に対して「いいね」だけではなく「あるある~」「大丈夫大丈夫!」など、投稿者の悩みを軽くするようなリアクション機能など。教育カテゴリーでは、「今日うまくいかなかったこと」を投稿したら、オンラインカウンセラーからコメントを貰えるキャンペーン、などです。
