小学生からお年寄りまで、あらゆる人たちが日々接しているWebのデザインは、いま大きな曲がり角に来ていると思います。今回は、ユニバーサルデザインの考え方をWebに取り入れて、日々、新しいWebの形を摸索している濱川 智氏との対談をお届けします。前編はこちら。
遊談相手
濱川 智(
株式会社カレン企画本部 チーフプロデューサー)
Webサイトやパンフレットなど、企業からの情報発信をユニバーサルデザイン(UD)へ改善する「
カレン・ユニバーサルデザインWebサービスの商品企画・コンサルティングを担当。
障害者クリエイター・NPOなど数多くのパートナーとの協業により、実際の障害者や高齢者の視点・立場を取り入れ、情報へアクセスする際の「バリアの発見」と「改善」を繰り返す「スパイラル・アッププロセス」によるデザイン設計・改善による「情報のユニバーサルデザイン」を手がける。さらに「情報のユニバーサルデザイン」普及を目的としたセミナー講師・講演・執筆活動にも積極的に取り組んでいる。
ユニバーサルデザインの発想とは?
四家
前編では、濱川さんとユニバーサルデザインの出会いについてうかがったわけですが、引き続き濱川さんが目指している「Webのユニバーサルデザイン」についてお聞きしたいと思います。そもそもなぜ「ユニバーサル」でなければならないんでしょうか。
濱川
現在、Webを利用している人たちは、小学生から高齢者までと幅広く、ネットの習熟度もさまざまです。Webが、「共通で普遍的なデザイン」=「ユニバーサルなデザイン」を持っていなければ、多様なユーザーのごく一部の人だけしか使いこなせない、不便なデザインになっていまいます。
四家
でも、企業視点に立つと 自社にとってターゲットになりうるユーザーだけ相手をすればいいや、という考え方もできますよね。
濱川
それって実はものすごく非効率なんです。「バリアフリーの発想」と呼んでいるんですが、そういうやり方だと、ターゲットユーザーごとに新しくWebページを作らなくてはいけない。
四家
「バリアフリー」っていいことだと思ってましたが。
濱川
「バリアフリー」を考えるときには、まず「バリア」があることが前提になります。たとえば、地下鉄の駅では階段を上り下りできない人のために、階段の手すりを使った昇降設備をつけているところがありますよね。
車椅子の方の不便さを解消しよう、つまりバリアフリーにしようとしてそういう設備を用意しているんですが、それを使う方は多くはないし、もしかしたら、できるだけそういうものは使いたくないと思ってるかもしれない。
四家
確かに、たまにその設備を使ってると、みんなそっちを見ていることが多いですね。
濱川
目立ちますし、係員を呼ばなければならない。だったら、最初からエレベータを設置しましょう、というのが「ユニバーサルデザインの発想」なんです。
四家
そうか、エレベーターだったら みんな使えて、みんな便利になる。
濱川
それが「ユニバーサル」、つまり「万人共通の」という意味なんです。買い物しすぎて荷物いっぱいのときだってすごく便利ですよ。決して特定の人向けではなくって、みんなで同じように使えて便利。これが「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の最大の違いです。
それに、特定の人向けのデザインが、そのターゲットの人にとって気持ちいいものとは限りません。「高齢者向け」という製品を高齢者が嫌うのは有名な話です。
四家
逆に、若者向けに作られた安いおしゃれなクルマって 結構高齢者が愛用してるんですよね。
濱川
それはWebも同じことなんですよ。本当に大事なのは「ある人たちを特別視しない」ということ。「今までうまくコミュニケーションできなかった人たちとも、上手にコミュニケーションできるようにするには?」というのが「ユニバーサルデザイン」的な発想なんです。