企業Webとユニバーサルデザイン
四家
ここまでの話で、企業Webサイトにおいてユニバーサルデザインを施す意義が見えてきたと思いますが、実際にはまだまだ普及していない印象があります。それはなぜだと思いますか?
濱川
企業全体で見たときには、まだ認識が浅いところはあります。ただし、最近の傾向として、高齢者への配慮というニーズが高まっていると思います。でも、どうすればいいのかわからないというパターンが多いようですね。
四家
それは成人人口の半分が50歳以上という「超高齢社会」の問題でしょうか。トリガーがないと、企業は動きにくいですからね。
濱川
これに先行したトリガーとしては、2004年に出た「JIS X8341-3」があります。障害者・高齢者に対しても利用可能なWebコンテンツを提供しなさいという規則です。基本的に官公庁・自治体のWebサイトはこの「JIS X8341-3」を尊重しなければならないために、公におけるWebアクセシビリティが加速した経緯があります。
四家
尻に火がついたともいえますが、画期的ではありますよね。
濱川
こうしたきっかけで前例が増えてきたのもJISの大きな効果です。でも、このJISに定められた規格をもとに企業のWebを見直そうとしても、けっこう難しいのが現実です。
四家
それはなぜですか?
濱川
実際にどうデザインすればいいのか、運用体制はどうすればいいのか、検証をどのように行うのかといったことが、JISには記載されていないんです。
四家
なるほど。JISはあくまで規格だからノウハウではないと。
濱川
そうです。
アクセシブルで使いやすいWebサイトを構築・運用するためには、ルールブックだけではなく、もっと具体的なノウハウが必要になってきます。どんなワークフローで制作・運用するのかといったノウハウです。完成したあとも、また
PDCAで改善し続けなければいけないし。
四家
「スパイラル・アップ」ですね。ユーザー視点で仮説と検証の繰り返し、スパイラル・アップがサービス品質を向上させる。
濱川
コミュニケーションって、継続してなんぼですからね。だからこそプロセスが大切なわけで。