※本記事は、2021年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』68号に掲載したものです。
SaaS企業からのPRの相談は昨年比3倍に
ビルコム株式会社 プロデュース局 マーケティング部 部長 田中幸司氏
ビルコムへ入社後、BtoB企業へのPRコンサルティング、戦略策定、コンテンツ企画に携わる。その後、BtoB SaaS「PR Analyzer」事業の法人営業、マーケティング、オペレーション統括を経て、現在は代理店事業のマーケティング、インサイドセールスを担当。
私が勤務するビルコムは「統合型PR」のコンセプトを提唱し、SaaS企業を含む様々なBtoB企業のマーケティング・PRを支援しています。統合型PRとは、個別最適でメディアチャネルを分断するのではなく、目的から逆算し統合的なコミュニケーションを図っていくことを指します。私自身は、PRコンサルティングやSaaS事業「PR Analyzer」のマーケティング・営業などを経験してきました。本連載では、そうした経験や直近のトレンドも踏まえ、BtoBマーケターに向けてPR戦略の基礎をお伝えできればと思います。
さて、2020年に日本で新規上場(IPO)したSaaS関連企業は12社とされています。2018年には2社だったことを踏まえると、その活況ぶりがうかがえます。また、SaaS企業の資金調達に関するニュースも頻繁に目にするようになりました。コロナ禍にともなうDX化の追い風もあり、SaaSビジネスはまだまだ伸長する見込みですが、同時に競合プレーヤーも増え、各サービスの競争が激しくなりつつあります。当社においても、SaaS企業からPR支援に関する相談をいただく機会は昨年比で3倍ほど増えており、ニーズの高まりを感じます。
PRが選択肢から漏れていませんか?
マーケターの皆さんは「BtoBマーケティング」にどんなイメージを持っているでしょうか。昨今、THEMODELという体系的な考え方が普及したこともあり、「インサイドセールスに渡すリードの獲得部隊」という認識を持たれている方も多いかもしれません。
また「BtoBマーケティングの戦術や施策」を考えるとき、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。セミナー、展示会、広告、SEO、コンテンツ、MAツールなどがよく挙げられると思います。実際に、コロナ禍でリモートワークが普及したことで、あちこちでウェビナーやeBook配信などが展開されていますね。ちなみに、上記の問いに対して、「PR」を挙げた方はどれくらいいるでしょうか。私の実感では、BtoBマーケターの頭の中から「PR」という選択肢が漏れてしまっていることが多い印象です。「PR」は広報部門が行うものという意識があるのかもしれませんが、マーケティング戦略や戦術を検討する時点で除いてしまっているのは、とてももったいないことです。
最近お話ししたあるマーケターからは「最初からPRに取り組むべきだった」という後悔の声を聞きました。まだうまく活用できているBtoB企業、SaaS企業が少ないからこそ、PRという武器を有効に使えるようになっていただきたいという思いです。そこで本稿では、マーケティングを「サービス価値を認識してもらい、買ってもらうまでの仕組み作り」とより広く捉えて、話を進めていきます。