ニーズが枯渇している今、求められるアプローチとは?
JX通信社は、データインテリジェンスプラットフォームの提供を通じて第三の通信社を目指す報道ベンチャーだ。ビックデータとAIを使い、コンシューマー向けには速報特化型ニュース速報アプリ「NewsDigest」を、法人・行政向けにはリスクをいち早く伝える「FASTALERT」を提供している。後者は政府、自治体だけでなく、電力、ガス、通信、鉄道といったインフラ企業にも使われており、先の熱海・伊豆山地区の土石流では、テレビ局・新聞社等の初報よりも早く土砂災害を検知して配信していたという。
さらに同社はマーケター向けのプロダクトとして、顧客の解像度を高めるために活用できる「FASTALERT for Marketing」を開発。本セッションではJX通信社のマーケター・行動経済学の研究者として活躍する松本氏が、インサイトと消費者理解の重要性に触れながら、プロダクトの特長を説明した。
そもそも今日のマーケティングにおいて、なぜ消費者のインサイトを得る必要があるのか。松本氏はその背景に「ニーズの枯渇」があると指摘する。これまでのモノやサービスは、消費者の欲求や不満(ニーズ)を解消・改善するために開発されてきた。しかし1990年代からは強いニーズが少なくなり、モノが先行するマーケティングが成立しない場面も出てきている。店頭で様々な商品を前に「何を選べばよいかわからない」という気持ちになる消費者も少なくない。
だがニーズがまったくないわけではない。「消費者が気がついているかどうか」「今の技術で解決可能かどうか」をそれぞれ軸に取って二軸四象限で表すと、「気がついている/今の技術で解決できない」「気がついていない/今の技術で解決できる」の領域に可能性があるという。前者は技術力が、後者は課題設定力が鍵となる。
消費者よりも先に「これが欲しい」を言語化する
技術力が重要であるのは言うまでもないが、消費者をよく観察し、「これが欲しいと思っているのではないか」という課題設定を適切に行うことで、今ある技術を使って消費者のニーズを満たすことができる。
課題設定力を発揮し、「消費者が気がついていない欲望」を掘り当てヒットした商品として松本氏が紹介したのが、母親向け電動アシスト自転車だ。女性誌が「ママチャリがもっとオシャレだったら」という欲望を発見し、自転車メーカーと一緒に高額なママチャリを開発したところ、大ヒットした。
「消費者が気がついていない、言語化できていないパターンにフォーカスを当て、マーケターが先回りして言葉にする。それを提示することで、消費者に”そうそう、これが欲しかった”と気がついてもらうことができます。そのために必要なのがインサイトであり、それを得るためのファクトなのです」(松本氏)
続いて松本氏は隠れたニーズをどのように見つけていくか、具体的な手法について解説した。