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MarkeZine Day 2021 Autumn(AD)

【JX通信社松本氏が解説】マーケティングでもっとも重要な「インサイト」と「消費者理解」を手に入れる

 消費者の強いニーズが少なくなった昨今、モノありきのマーケティングは立ち行かなくなっている。そんな中、ソーシャル上のユーザーを「観察」することで潜在的なニーズを引き出すプロダクト「FASTALERT for Marketing」を開発したのが、JX通信社だ。9月8日(水)に開催されたMarkeZine Day 2021 Autumnでは、同社のマーケティング責任者を務める松本健太郎氏が、ソーシャルリスニングの説明を交えながら、新しいマーケティングを提案した。

ニーズが枯渇している今、求められるアプローチとは?

 JX通信社は、データインテリジェンスプラットフォームの提供を通じて第三の通信社を目指す報道ベンチャーだ。ビックデータとAIを使い、コンシューマー向けには速報特化型ニュース速報アプリ「NewsDigest」を、法人・行政向けにはリスクをいち早く伝える「FASTALERT」を提供している。後者は政府、自治体だけでなく、電力、ガス、通信、鉄道といったインフラ企業にも使われており、先の熱海・伊豆山地区の土石流では、テレビ局・新聞社等の初報よりも早く土砂災害を検知して配信していたという。

 さらに同社はマーケター向けのプロダクトとして、顧客の解像度を高めるために活用できる「FASTALERT for Marketing」を開発。本セッションではJX通信社のマーケター・行動経済学の研究者として活躍する松本氏が、インサイトと消費者理解の重要性に触れながら、プロダクトの特長を説明した。

株式会社JX通信社 マーケティング・セールス局 マーケティング マネージャー 松本 健太郎氏
株式会社JX通信社 マーケティング・セールス局 マーケティング マネージャー 松本 健太郎氏

 そもそも今日のマーケティングにおいて、なぜ消費者のインサイトを得る必要があるのか。松本氏はその背景に「ニーズの枯渇」があると指摘する。これまでのモノやサービスは、消費者の欲求や不満(ニーズ)を解消・改善するために開発されてきた。しかし1990年代からは強いニーズが少なくなり、モノが先行するマーケティングが成立しない場面も出てきている。店頭で様々な商品を前に「何を選べばよいかわからない」という気持ちになる消費者も少なくない。

 だがニーズがまったくないわけではない。「消費者が気がついているかどうか」「今の技術で解決可能かどうか」をそれぞれ軸に取って二軸四象限で表すと、「気がついている/今の技術で解決できない」「気がついていない/今の技術で解決できる」の領域に可能性があるという。前者は技術力が、後者は課題設定力が鍵となる。

ニーズの枯渇に対するアプローチの可能性
ニーズの枯渇に対するアプローチの可能性

消費者よりも先に「これが欲しい」を言語化する

 技術力が重要であるのは言うまでもないが、消費者をよく観察し、「これが欲しいと思っているのではないか」という課題設定を適切に行うことで、今ある技術を使って消費者のニーズを満たすことができる

 課題設定力を発揮し、「消費者が気がついていない欲望」を掘り当てヒットした商品として松本氏が紹介したのが、母親向け電動アシスト自転車だ。女性誌が「ママチャリがもっとオシャレだったら」という欲望を発見し、自転車メーカーと一緒に高額なママチャリを開発したところ、大ヒットした。

 「消費者が気がついていない、言語化できていないパターンにフォーカスを当て、マーケターが先回りして言葉にする。それを提示することで、消費者に”そうそう、これが欲しかった”と気がついてもらうことができます。そのために必要なのがインサイトであり、それを得るためのファクトなのです」(松本氏)

 続いて松本氏は隠れたニーズをどのように見つけていくか、具体的な手法について解説した。

隠れたニーズを見つけるためのマーケティングリサーチ

 ニーズを言語化していくためには、元となるファクトが重要だ。松本氏は「自社商品を売りたいがために、そのようなファクトがないのにネーミングセンスで勝負してもヒットはしない」と言い切る。

 そのファクト探しに欠かせないのが、マーケティングリサーチである。一般的な手法は「Asking(質問)」で、定性調査(グループインタビュー、デプスなど)と定量調査(アンケートなど)に大別できる。定性調査により把握できるのは「WHY」で、インサイトの発見と仮説の構築に役立つ。一方、定量調査では「WHAT」として、事実の把握と仮説の検証ができる。

 Askingに加えて、比較的新しい手法として松本氏が取り上げたのが「Listening(傾聴)」だ。Askingとの違いはコミュニケーションの有無。Listeningは「ユーザーの自然な会話にこっそりと耳を傾ける」ようなイメージだ。

 松本氏はListeningの有効性について、「消費者の発言と実際の行動に矛盾が生じるときもある」と「消費者の“本当”の行動や態度を知るためにも重要な手段になる」と2つ挙げる。

AskingとListeningのメリット/デメリット
AskingとListeningのメリット/デメリット

 このようなことから、Listeningの本質は「傾聴というより、消費者の本当を理解するための『観察』」にあるといえる。中でもソーシャルリスニングは、観察手段として有効性が高いそうだ。

 ソーシャルリスニングとは、Twitterなどのソーシャルサービスからの情報を自然言語処理などのAI技術を使って分析する手法で、マーケターの期待や関心は高い。しかしTwitter APIを使って大量の情報を収集できたとしても、そのすべてに目を通すことは現実的ではない。また、その中にアフィリエイトなどの無関係な情報が含まれていたり、ツイートの理解ができずインサイトを簡単に得られないなどの課題があり、なかなか使いこなせないという障壁もある。これらの課題を解決すべく、同社が開発したのがFASTALERT for Marketingだ。

ツイートから隠れた感情を探索

 FASTALERT for Marketingは、ソーシャルリスニングを簡単に始めることができるマーケティングリサーチサービスだ。法人・行政向けに提供しているFASTALERTを土台に、ソーシャルリスニング向けの機能を加えたもので、2021年4月にローンチした。

FASTALERT for Marketingの概要クリック/タップで画像拡大
FASTALERT for Marketingの概要
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 特長は、SNS上に溢れる様々な情報から自社には関係のないノイズを除去できる点だ。顧客の声、炎上の火種などの重要な情報をきちんと拾うだけでなく、ロゴ検知、画像検知機能により、キーワードを含まない画像だけの投稿も、画像解析と文章解析により正しく分類できるという。

 また、優先度をつけて見るべき対象を絞ることも可能という。たとえば、認知・未購買の顧客が初めて使う瞬間、一回使った顧客が再び使う瞬間などの声を収集し、態度変容のきっかけを探るなどのことができるという。競合サービスのユーザーが何をきっかけにロイヤル顧客になったのか、どのような投稿をしているのかを見るために使う例もあるそうだ。

 続いて松本氏は、ソーシャルリスニングを使うとどのような洞察が可能になるのかを、FASTALERT for Marketingの活用方法にも触れながら紹介した。

ソーシャルリスニングでできること

 ソーシャルリスニングを通じて、どんなことが可能になるのだろうか。主な使い方は以下の3つである。

 1つ目は、消費者の理解を深めることだ。FASTALERT for Marketingでは、消費者の興味関心に寄り添い、モノ・サービスそのものをリスニングするのではなく、より領域を拡張して観察する支援をしている。

 2つ目は、消費者の感情の発露を手掛かりに、口に出ないインサイトを探り出すことだ。ソーシャルリスニングのデータを使いながら顧客企業と共にディスカッションし、その示唆を出す支援も行っているという。

 3つ目は、感情のフレームワークを用いて、さらに消費者の解像度を高めることだ。たとえば8つの基本感情とその組み合わせで感情を分析する「プルチックの感情の輪」や、Atlas of Emotionsの「5つの基本感情」などを利用して、ツイートに隠れた感情を探る。

感情のフレームワークの例(プルチックの感情の輪、5つの基本感情)クリック/タップで画像拡大
感情のフレームワークの例(プルチックの感情の輪5つの基本感情
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実際のツイートを用いて、手順を紹介

 松本氏は「冷蔵庫がビール保管庫になっていてなんか興奮する」というツイートを取り上げ、そこに隠された感情を探る手順を紹介した。

ツイートから隠れた感情を探索する
ツイートから隠れた感情を探索する

 このツイートを分析すると、事実は「冷蔵庫がビール保管庫になっている」で、言語化されている感情は「興奮」となる。感情のフレームワークを用いると、興奮は「喜び(Joy)」のグループに属する。しかしここで注目したいのは、「“なんか”興奮する」という言い方であり、投稿者は感情を揺さぶられつつもそれを明確に言語化できていない様子がうかがえる。では、そこにはどんな感情が隠れているのだろうか。

 松本氏が社内で議論した結果、仮説として「逸脱」「罪悪感」が挙がったという。感情のフレームワークを用いると、「喜び(Joy)」と「恐れ(Fear)」の組み合わせが逸脱しているというグループに属する。「社会人らしい生活感から逸脱している、その状況に対して恐れもあるし、面白さも感じている。おそらくは喜びの部分が強くなって『興奮』という表現が出てきたのでしょう」と解説した。

 このようにして隠れた感情への理解が深めることができたら、そこから先はAsking型の調査を活用していく。具体的には、得られたインサイトをベースにした商品開発に共感してもらえるか、買うのであれば何円以上なら高いと感じるのか、といった調査を進めることになる。

 ソーシャルリスニングを用いたマーケティング活動の研究は、国内外において10年以上も続いているという。松本氏は、「ソーシャルリスニングはマーケティング活動において重要なアプローチです。うまく活用することで本音を引き出すことができます」と要点をまとめ、講演を締め括った。

「FASTALERT for Marketing」資料のDLはこちら

 SNSを活用して、消費者の「ホンネ」と「リアルな行動」に耳を傾けるソーシャルリスニング型リサーチサービスが「FASTALERT for Marketing」です。詳細についてご覧になられたい方は、資料のダウンロードが可能ですので、ぜひご覧ください。

FASTALERT for Marketing 資料DLページ

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/05 10:00 https://markezine.jp/article/detail/37315