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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2021 Autumn

企業規模より戦略が要 花王&銭湯ぐらし&いつも.と考える、ECビジネスの勝ち筋


EC立ち上げ時に、いかに顧客の解像度を上げられるか

望月:中小企業やスタートアップ企業におけるD2Cの立ち上げに必要なことについて伺います。伊藤さん、大事なポイントはどんなところでしょうか?

伊藤:立ち上げ時に必要なのは、ロイヤルユーザーになりうるお客様の購入理由や継続理由の解像度を上げることです。

 我々はサブスク型のD2Cですので、単月での売上ですとコストのほうが高い場合が多く、リピートなしには成り立ちません。ですからロイヤルカスタマーの満足度向上に振り切ることが重要です。より満足度の高い商品へ変更したりユーザーコミュニケーションを練ったりしています。

 リリース前はデータがなかったので、商品を出してからのほうが多くの気づきがあり、いろいろと変更が必要でした。

望月:でもそれに柔軟に対応できるのがスタートアップの最大メリットですよね。

伊藤:そうですね。フットワークは軽いです。ECを始めると決めてから、BASEやShopifyを使って1ヵ月半ぐらいでサイトをオープンし、商品を販売しました。我々のような資本力のない事業者でも手軽に始められる、いい時代ですよね。当初はサブスクではなく単品販売だけをしていました。

株式会社銭湯ぐらし EC事業部 取締役・EC事業管掌 伊藤 直樹氏

伊藤:リリース2日目くらいに美容系インフルエンサーさんに取り上げていただき、月商100万円以上を達成。そのまま美容推しで商品開発をしようと考えました。しかし、翌月になると売上は10分の1になりました。

 失敗したと猛省し、ユーザーさん30人ぐらいにインタビューを行ったところ、美容好きの方々は20~30代女性で、弊社が想定した「お風呂に浸かる習慣があって入浴剤を買う人」ではなかったのです。

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伊藤:リピートしてくれた層の方々は30~50代女性で、購入理由は「お風呂に毎日使うから」でした。その方々の家には常時3~4種類の入浴剤があり、その日の気分で使い分けるのだそうです。ご飯にふりかけをかけるのと同じように、毎日同じ入浴剤だと飽きるので、変化を求めて、珍しいものがあったら購入していることがわかりました。

 こうしてインタビューがきっかけでサブスク型に変更し、訴求対象に合わせてクリエイティブも変更しました。

手作り感を重視したカスタマーサクセス

伊藤:活動レベルで大事なことは3つあります。1つ目は、先ほどもお話しした、ユーザーさんの購買理由を深堀りするユーザーインタビューです。2つ目はロイヤルユーザーさんがより満足できるよう商品自体を変更すること。今回なら単品販売からサブスクへの移行です。3つ目が、商品だけではどうしても他の商品に興味が移りがちなので、ロイヤルティを上げるためのカスタマーサクセスの実行です。

望月:ユーザーインタビューは具体的にどのようにお願いされるのですか。

伊藤:梱包の中に「良かったらお話を聞かせてください」と手紙を入れるなどしてご購入いただいた方に個別にご連絡します。エンドユーザーさん側も事業者からインタビューを希望される機会は少ないようで、申し出を喜んでいただけました。インタビューは電話やZoomなどで実施します。お客様の生活のどこに我々の商品が根付いているのかを知るための質問を作成し、リピートの糸口を模索します。

望月:なるほど。カスタマーサクセスは具体的にはどのようなことをされていますか。

伊藤:攻めと守りに分けて、守りは、問い合わせ対応やFAQの整理など、いわゆるカスタマーサポートの部分です。攻めの部分は、お客様により共感や愛着をもっていただくための梱包や生産者マガジン、ビデオレターなどです。

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伊藤:弊社の良さは手作り感。それがリピートの理由として多かったのです。大量消費時代の中で、逆に作り手の顔が見えることが差別化になっています。

ですからパッケージのダンボールに書いてあるイラストもスタッフが1つずつ手で描いています。スタッフからの手紙や手書きのメッセージも喜んでいただけています。毎月、メッセージの内容も変えています。お客様からダンボールのイラスト部分を切り取って保存しているとお聞きした時は嬉しかったですね。

望月:手書きや手作りへのこだわりはそこにつながってくるんですね。ビデオレターとはどんなものですか。

伊藤:ビデオレターは、実際の梱包スタッフが日々の思いをビデオで話してお伝えしています。他にも、我々はその商品の生産者さんと二人三脚で運営していますので、一緒にイベントをしたり、生産者マガジンを毎月作ったりしています。

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多彩なECの出口を分類・系統化して筋道を立てよ

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/17 09:52 https://markezine.jp/article/detail/37462

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