「初対面の人とどう打ち解けるか?」という視点を大事に
企業のSNS運用については、「ユーザーと企業の間にミスマッチが起こるケースが非常に多い」と小山氏は話す。企業が情報を発信する場合、独りよがりな発信になってしまい、ユーザーは知りたい情報を得られず、両者のバランスが崩れてしまうのだ。企業が情報発信を行う際は、たとえ自社が伝えたい情報であってもユーザーに寄り添った形で進めていくのが鉄則となる。
「ユーザー目線に合わせていくことは、初対面の人と打ち解けていく方法と一緒で、相手の目線で考えるのがとても大切です」(小山氏)
また、小山氏によれば「伝えたい情報と知りたい情報をマッチさせるためには、何より”伝え方”が重要」だという。どんなに良い情報でも、ユーザーが聞く耳を持つ状態でなければ、スルーされてしまう。そして、伝え方で重視すべきは「身内感」だという。
「初対面の人に、場の雰囲気を無視していきなり近づいてこられたら、警戒しますよね。逆に、場に合った形で、親しみやすくニコニコと話しかけてくれると、打ち解けやすい。人と人とのリアルなコミュニケーションと同じことを意識すれば、自社の話に耳を傾けてくれるようになり、結果的に企業が発信したい情報も受け取ってくれるようになります」(小山氏)
ユーザーが知りたい情報を理解するのに重要なインサイトは、SNSから推察することができる。そして実際のSNS運用では、各SNSに合った伝え方や届け方に注意を払う必要があるのだ。
ユーザーに合わせて内容を変える。各SNSの特徴と具体的な運用
SNSと言っても、それぞれで特徴が異なる。ドミノ・ピザでは、SNS全体を通してユーザーに親近感を感じてもらうために、各SNSの特性を理解し、最適な情報発信方法を模索しているという。小山氏らがまとめた各SNSの特徴を紹介すると、以下の通りだ。
Twitterの特徴
・リアルタイム性
・会話型チャネル、話したがり
・プレゼントキャンペーンなどに参加したがり
Instagramの特徴
・憧れの集まる場所
・ジャンルごとにトレンドがある
・フォロワーは、フードやプレゼントキャンペーンを見慣れている
・ヘビーユーザー、ロイヤルユーザーが多い
TikTokの特徴
・共感と発見、親近感が重要なチャネル
・日々移り変わるトレンドへタイムリーに乗ることが重要
・フォロワー数より動画一本一本の再生回数
たとえば、Twitterで行われた「ピザライスボウル」の企画では、ユーザーの関心を高めるため、あえて「二項対立構造」が成り立つように仕掛けたという。
「二項対立」とは倫理学の用語の一つ。平たくいうと、相反する2つの意見が存在する状態のことで、企業のプロモーションでも「○○派、△△派、あなたはどっち?」のような企画に用いられることがある。
「この施策では『ピザライスボウルはドリアなのか?』をテーマにアンケートを行う体裁で、意見を募りました。すると『ドリアだ』という意見に触発されて『ドリアじゃない』という意見が盛り上がり、逆も然りという状況が起こります。この構造を作ることで、コミュニケーションが活性化するように企画しました」(小山氏)
小山氏によれば、「どちらもユーザー自身の直感的な主観なので、そこにある種のあいまいさが生まれる」という。そのあいまいさが議論や共感、期待や探究心につながるのだという。Twitterの会話型チャネルという特徴を活かしたキャンペーンと言えるだろう。

