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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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顧客起点のビジネスはどう実施する?インバウンドの思想を取り入れた成功事例(AD)

HubSpotグローバル2位の導入支援担当者が実践している「CRM・MA導入の3ステップ」

 顧客関係管理ができるCRMを導入しても、必ずしも期待通りの成果が出るとは限らない。CRMを提供するHubSpotでは、導入支援専門の担当者がついて、定着と活用に向けて伴走するプランも合わせて提供している。同社で600件の導入支援を担い、現在は導入支援チームを率いる三瀬氏に、成功するCRMの導入・活用のポイントをうかがった。

年間100社以上の導入を手掛ける、グローバル2位の導入支援担当者

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、自己紹介をお願いします。

HubSpot Japan株式会社 Senior Customer Onboarding Specialist and Japan COS Team Lead 三瀬薫氏
HubSpot Japan株式会社 Senior Customer Onboarding Specialist and Japan COS Team Lead 三瀬薫氏

三瀬:HubSpot Japanで2018年より導入支援を担当し、現在導入支援チームのチームリードを務めています。

 HubSpotでは、導入支援とカスタマーサクセスでチームを分けて、日々お客様のサポートに当たっています。日本企業でこのようなチーム体制を組んでいるところは少なく、カスタマーサクセスが導入支援も受け持っていることが多いのではないでしょうか。

 実はHubSpotも、過去にカスタマーサクセスが導入支援を行っていたことがあります。しかし、スムーズな導入を目指す導入支援と、継続して利用していただくことを目指すカスタマーサクセスとでは、ゴールや見るべき指標が異なります。そこで、HubSpotではチームを分け、導入支援チームが最初の3ヵ月間でツールの定着をサポートし、その後はカスタマーサクセスのチームが継続的な支援を行うという体制を取っています。「いかにツールを継続して利用してもらうか」ではなく、純粋にお客様のゴールに即した適切な活用に向き合えるので、カスタマーサクセスとはまた違ったやりがいがあると感じています。

MZ:三瀬さんは、これまでに600件以上の導入支援を手掛け、グローバルで2位の成績を出していらっしゃると伺いました。導入支援において、大切にされていることは何ですか?

三瀬:3ヵ月間の導入支援では、お客様が自分たちで運用できる状態まで持っていくことを目指します。そのために大事にしているポイントは、お客様が掲げられている目標のうち達成できそうなものをまず1つ実現していただくことです。導入当初はどうしても小難しいイメージがあるかもしれませんが、成功体験が1つでも出てくると雰囲気がガラッと変わり、お客様自ら積極的に活用を拡大されていきます。

導入支援のプロが実践する、CRM・MA導入の3ステップ

MZ:ここからMAとCRMの導入を成功に導く秘訣を伺っていきます。三瀬さんが、どのように導入支援をされているのか、実際の流れを教えて下さい。

三瀬:はい。HubSpotでは、「1.ゴールのヒアリング」「2.ペルソナの設定」「3.カスタマージャーニーマップに沿った施策の実践」の3ステップで導入を進めています。それぞれ順を追って説明していきましょう。

 最初の「ゴールのヒアリング」のフェーズでは、HubSpotが提唱する「SMARTの法則」を用います。はじめの段階で、そもそも目標(ゴール)が適切であるか、いつまでに・何を・どのように達成していくのか、人や予算のリソースは十分かなど細かくチェックし、お客様とゴールについて認識をしっかり共有します。

 お客様の中には、ツールに対して「何でもできる魔法のようなもの」といったイメージを持たれている方も時々いらっしゃいますが、ツールは使って初めて成果が出るものです。目標達成のために、お客様自身でどのような取り組みをする必要があるのかを明確にするためにも、このステップは重要です。

SMARTの法則:実現的かつ効果的なゴール設定に必要な5つのポイント

1.Specific(具体的に):目標値や期限を明確に定める。

2.Measurable(測定可能な):追跡可能な目標を設定する。

3.Attainable(達成可能な):挑戦しがいがありながらも達成可能な目標にする。

4.Relevant(経営目標との適合性):ビジネスに直結する目標を設定する。

5.Time-bound(期限がある):いつまでに目標を達成するか、期限を定める。

HubSpotが提供する「CRM・MA導入のチェックリスト」。導入前に確認しておきたい細かいポイントまで網羅しています。ぜひ、日々の業務の参考にしてください。

ペルソナ設定&カスタマージャーニー作成は、営業も巻き込む

三瀬:こうしてゴールを設定したら、次は「ペルソナの設定」です。ペルソナについては、すでに設定されているお客様も多いですが、具体的に考えられていないお客様にはHubSpotのフレームワークを使って、設定を進めていただきます。

 ここでのポイントは、業種・役職・居住地などだけでなく、たとえばBtoBのビジネスを展開されているお客様の場合、どのような悩みや疑問を抱えている人なのか、何を達成するために日々業務を行っている人なのかまで考えることです。ここが曖昧だと、マーケティングメッセージにしても、セールスのアプローチにしても、何を打ち出せばペルソナに刺さるかがわからなくなってしまいます。あわせて、購買プロセスにおけるペルソナの立ち位置によっては社内承認に時間がかかるなど、考えられる障壁も書き出しておきます。

 ペルソナの課題まで洗い出したところで、「カスタマージャーニーマップの作成」に入ります。ここでは、必要に応じて営業担当や顧客へのヒアリングを実施することもあります。

MZ:なるほど。この段階から営業担当者を巻き込んでいくのですね。

三瀬:マーケティング担当者はお客様との接点があまりないので、ペルソナやカスタマージャーニーを作る時に、「実は顧客のことをよく知らなかった、わかっていなかった」と気づくことがよくあります。ですので、ペルソナ設計の段階から、営業担当者やお客様の声を実際に聞いているカスタマーサクセスやカスタマーサポートのチームも、ぜひ巻き込んでいただくといいと思います。

 また、営業担当に過去の失注理由を聞くこともあります。なぜ受注できなかったのか、どんな問題があったのかがわかると、マーケティング担当も具体的な対応策を練ることができます。

「1日2時間、作業に割ける人が1人でもいれば」CRM・MA導入に必要なリソースは?

MZ:ご説明いただいた3ステップは、一般的にどのような体制で進めるとうまくいくのでしょうか?

三瀬:全体を俯瞰してみることができる管理者が1人いることが理想です。導入時は部署を横断して設計や設定をすることが多いので、それぞれの部署に担当者を置いた場合、責任の所在が曖昧になってしまうからです。管理者はただ責任を持つのではなく、自らも状況を把握して、マーケティングと営業など部門間の連携を促す役割を担います。

MZ:社内に人的リソースがないために活用が進まない、あるいは導入を見送っているというケースもよく聞きます。

三瀬:CRMやMAに知見がある担当者がいれば良いのですが、実際にはなかなかそうもいかないでしょう。我々が導入支援させていただいた企業様の中には、こうしたツールの活用が初めてという例も多数あります。新しいことを積極的に学ぶ意欲がある方、様々な部署間のやり取りをまとめられるコミュニケーション能力がある方であれば、CRMやMAの知見がなくてもしっかり活用を軌道に乗せられると思います。また、担当者の作業量の目安としては、1日2時間をHubSpotなどの設定に使える人が1人いれば、導入を進められるとお伝えしています。

 もし、人的リソースがないために導入を先送りしている、あるいは導入および活用が滞っているのであれば、パートナーや運用会社を見つけるべきです。最近はクラウドや業務委託などによるサポートを提供している企業もあります。ツールに投資しているのに、何も改善されていない、成果が生まれていないのであれば、ロスが発生している状態であると言えます。そのような時は、なぜ導入したかというそもそもの目的に立ち返ると良いと思います。

HubSpotが提供する「CRM・MA導入のチェックリスト」。導入前に確認しておきたい、細かいポイントまで網羅しています。ぜひ、日々の業務の参考にしてください。

要注意!導入失敗の典型的な3ケース

MZ:CRMやMAの導入失敗例として、典型的なケースはありますか?

三瀬:多いケースを3つご紹介します。1つ目は、よく聞くパターンかもしれませんが、導入すること自体がゴールになっているケースです。この場合、「データを揃えて一元管理できた!」というところで終わってしまいます。データを一元管理できても、どう活用するのかが見えてないのであれば、「Excelから入れ替えただけで何も変わっていない」と言われかねません

 関連して、これまで使っていたExcelをそっくりそのままツールに移さないと、営業が動いてくれないというお話しをよく聞きますが、そんなことはありません。ツールを使うために頑張るのではなく、そのツールがないと業務が回らない状態を作るのが理想です(参考記事:CRM利用定着率100%!AnyMind Group事例に学ぶ、ツールの利用定着化5つのポイント)。最初の設計にあたってExcelなどをそのまま移すという考え方は捨てていただいていいと思います。

 続いて2つ目は、部門長が導入に踏み切ったものの、全体を見る責任者、導入活動の推進役がいないケースです。業務量を考慮せず、現場担当者にツールの活用が押し付けられたり、データ管理のルールが定まっていなかったりすると、結局誰も使わなくなってしまいます。

 3つ目は、目的をしっかり定めないまま導入を決定したケース。キックオフのミーティングで「HubSpotの機能を一通り教えて下さい」と言われることがありますが、こういった場合は「CRM・MA活用の目的」よりも「導入」が先行していることが多いです。ツールを選考する際は、目的から逆算して考えることが重要でしょう。

情報の一元管理・業務の効率化の先に何を見据えるかが大事

MZ:今CRMやMAの活用に課題を抱えている読者、あるいはこれから導入することを考えている読者へ、アドバイスをいただけますか?

三瀬:ツール導入の際、「ひとまずCRM・MAを導入して業務効率化や顧客の一元管理を実現したい」とおっしゃるお客様がよくいらっしゃるのですが、「その先に何を目指すのか」こそが重要です。従業員の業務がラクになる、今バラバラになっているデータがまとまる……で終わらせてはいけません。

 ゴールに見据えていただきたいのは、「いかに顧客体験を良くするか」ということ。そして、それは最終的にビジネスの成長にも繋がっていくはずです。経営層からツール導入の成果を問われて困窮するのは、恐らく導入時に目指すゴール設定が間違っているからだと思います。

MZ:今日のお話しの全体を通して、CRMおよびMAの導入は事業全体に関わるものとして捉えることが重要であることがわかりました。

三瀬:そうですね。導入はゴールではありません。“顧客管理”というと1つのツールだと思われがちですが、お話しした通り、その先には「顧客体験の改善」や「経営ゴールの達成」が求められているはずです。そう考えると、CRM、もMAも事業全体に関わるものと言えるでしょう。

 とはいえ、とても難しいものとして、身構えることはありません。HubSpotには、マーケティングやセールスの基礎を学ぶことができるオンライン講座HubSpotアカデミーがあり、そこで基礎知識を学んでいただけます。さらに、設定の手順を細かく説明したガイドラインがあり、基本的にこれに沿って導入を進めていただければ、3ヵ月で活用を軌道に乗せ、1年ほどで成果を出すことができます「CRM・MA導入のチェックリスト」では、通常お客様のみに公開している細かいポイントも記載しているので、ぜひ活用いただければと思います。

HubSpotが提供する「CRM・MA導入のチェックリスト」のダウンロードはこちらから

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/37725