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WGSNが予知する1年後

【前編】先が見えなくても、未来を考える手立てはある。消費に影響を及ぼす4つのセンチメント

先が見えない一方でポジティブなマインドも

【3】希望:状況をより良くするためのポジティブなマインド

 鈍感になろうとするのは、心を安定させるためですが、状況をより積極的に捉えようとするセンチメントもあります。それがこの3つ目の「希望」です。

 1年ほど前には「徹底的楽観主義」というセンチメントが提示されましたが、楽観主義はより良い明日を望む気持ちであるのに対し、今回の「希望」はそれを実現するために果たすべき個人の責任を含み込んでいます。つまり、受け身の気持ちから行動が伴った積極的な感情にここ1年ほどでシフトしている、と見ています。

 神経科学の分野では、希望の効果について、こんな風に説明しています。

希望を感じる時、脳からはモルヒネに似た作用をもたらすエンドルフィンとエンケファリンが放出され、それによって脳は困難を乗り越え、回復へと向かうことができる

 信じる気持ちをもって回復の時を待っていると言い換えることもできますし、またそのようなセンチメントが消費を左右すると考えています。

 特にZ世代は人種差別、経済格差、環境危機など、前の時代から引き続く社会問題を意識し、プレッシャーを抱えつつも、希望を原動力に今の状況を復興、改革、再考するチャンスにしようと、ポジティブなマインドを見せています。

 向こう数年における希望の重要性は、Gallupなどが行った調査からもわかります。未来に情熱を持つリーダーの元で働く社員は、そうでない社員より69倍も仕事熱心な傾向にあると言います。GallupのシニアサイエンティストShane Lopez博士は、「希望を持たずに成功するのは難しい。現在よりもより良い未来を考える時、人は前よりも一生懸命働き始める」と指摘します。

 希望を感じられるような環境づくりをサポートするようなビジネスやサービスは、まさに持続的な社会とそこに住む私たち人類の未来に寄与するものです。

【4】モチベーション管理:挑戦したいけれど、慎重でいたい気持ちもある

 4つのセンチメントの中で一番わかりにくいのが、この「モチベーション管理」かもしれません。これはどのような気持ちなのでしょうか?

 日本では2021年11月ごろからほぼ活動を再開できる状況になってきましたが、多くの人が活動を再開したいという願望と、慎重でいるべきという感覚の中にいます。

 せっかくロックダウンが解除されても、その後に揺り戻しがきている国や地域も見られます。感染症拡大前のような自由な移動やコミュニケーションができる状態に戻る道はシンプルではない、と誰もが(ストレートに戻れないことに苛立ちながらも、どこかで)理解しています。

 つまり、いろいろなモチベーションが湧いてきていますが、どこかでそれを制御したり、待機を迫られたりしているような気分であることを反映したキーワードなのです。

 モチベーションの高低をコントロールすることは、なかなかに難しいものです。この状況で、駆り立てられるように新しいダイエットやワークアウトなどを手あたり次第に試したり、新たな趣味を次々と始めた人も多かったことと思います。一方で、一日一日を乗り切るために、何もしない日があってもいいのだと、自分に言い聞かせるようなこともありました。

 両極端な、針が振り切れるほどがんばったかと思うと、凪いだように何もしない、という状況があるとすると、モチベーションのレベルをうまくコントロールする必要性が高まっていることもうなずけます。一体、このセンチメントがどう消費につながるのか? これは、後編で具体的に触れたいと思います。

 その後編では、2023年の消費行動を動かす4つのセンチメント「不確かな時間感覚」「鈍感力」「希望」「モチベーション管理」がどのような消費者像(プロファイル)を形作っているのか、またそのような人々に響くアプローチとしてどのようなものがあり得るのか、について考えていきたいと思います。

WGSNが発信する知見についてより詳しくお知りになりたい方は、こちらよりご覧ください。資料をご希望の方はこちらよりお問い合わせください。(2022年1月末まで)

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この記事の著者

浅沼 小優(アサヌマ コユウ)

伊藤忠ファッションシステム株式会社 ifs未来研究所 上席研究員 大手住宅メーカー、米国でのインテリアディスプレイデザイナー、バイヤー業務を経て、帰国後LVMHグループ、ロエベ他にてマーケティング、マーチャンダイジングを担当。デザイン予測を提供する英国WGSN日本統括を経て、2019年より現職。W...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2022/01/05 07:00 https://markezine.jp/article/detail/37899

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