市場を牽引する4つの消費者プロファイル
前編では、消費者とプロダクトデザイン予測を専門とする英国のWGSNが、2023年に向かって消費行動を左右すると考える4つのセンチメント「不確かな時間感覚」「鈍感力」「希望」「モチベーション管理」をその注目の背景とともにご紹介しました。WGSNでは、そのような動きから、2023年に私たちを取り巻く世界を牽引するであろう消費者像を「未来予測家」「新しいロマンチスト」「不可能の実現家」「遂行家」と名付けています。
後編では、これらの人々がどのように感じ、どのように行動するか。何を求め、何を必要としているかといった視点からそれぞれの姿を探り、明日の製品、サービス、戦略のヒントを見い出せればと考えています。
1.この先何が起こるかをきちんと理解しておきたい「未来予測家」
1つ目の消費者像である「未来予測家」は、言い換えると、「想定外は欲しくない」というタイプの消費者です。未来をきっちり想定して準備したい、安定と安全を確保し想定外の事態を極力回避したいと考える人々で、前編でご紹介した4つのセンチメントすべてが関連しています。時間感覚の歪みからくる不安、心の疲れ、不安定な経済状態に直面していますが、未来に希望を持っているので、動くべきか動かざるべきかを適切に判断したいと考えている人々です。
未来予測家は、ちょっとした予測のエラーすらも避けたいと思っています。不測の事態と言うと大げさですが、電車の遅れやスーパーで商品が売り切れていて買えないといった日常の中の予想外も嫌います。未来予測家にとって「想定外」は、単純に不便なだけでなく、すでに疲れ果てた神経をさらにすり減らすものなのです。
また、デジタルを中心に回る世界で「未来予測家」も含めて大きな問題になっているのは、消費者として画面に向かっている最中に、さまざまな邪魔が入るということです。たとえば、オンラインで買い物をしている最中にSNSのメッセージが届くなど、周囲の誰かによって注意が削がれるといった状況が頻発しています。この2年余りの感染症絡みのストレスは大きく、軽やかに注意先を切り替えることができないため、予測や期待と違うことが起きた時にリカバリープランを考えるのにより時間がかかってしまい、余計イライラしやすくなっています。
では、想定通りに物事が動くことを願い、経済的にも安定を第一に考えるこの「未来予測家」とのエンゲージメントには、どのようなアプローチがあり得るのでしょうか。いくつか例を挙げてみます。
リフィルステーション
時間をセーブし、環境に優しく、買い物の時期を気にしなくてもいい=注意の分散を防ぐ自動リフィルは、未来予測家と企業にとってウィンウィンなチョイスです。
サブスクリプション
パンデミックの中、初めてトライする人も含めて、世界中で数多くの人がサブスクリプションに移行しました。定期購買には、自分で注文したものであっても、届いた箱を開ける時にドーパミンが分泌され、瞬時に満たされた気持ちになる「ドーパミンデリバリー」と呼ばれる効果もあり、セルフケアにもつながります。
オーダーメイド
生産者側は過剰生産を避けられ、注文側は確実に受け取れるため、オーダーメイドは計画通りに物事を進めたい消費者にピッタリです。
ベストな条件を探すサービス
時間やリソースがない消費者に代わって、ベストな価格を見つけられるサービス。検索から購入後のキャッシュバックまでをシームレスに繋げて提供できるような、ショッピングロイヤリティプログラムもよいアプローチ方法のひとつでしょう。