もうひとつの“リアル”を真剣に考える時
2022年の秋、中央大学教授の岡嶋裕史さんにお目にかかりました。岡嶋教授は、『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』(光文社)を上梓され、ご自身をその住人とも称されています。メタバースを深く理解されている、まさに日本における第一人者です。
岡嶋教授によると、ヘッドセットなどを装着して完全に没入するようなメタバースが日常化する、いわゆる“ティッピングポイント”はもう少し先なのですが、オンライン会議をイメージすればすぐわかるように、デジタル空間は既に日常的に存在しています。また、ガートナーは、2026年には世界人口のうち25%が1日1時間以上をメタバースで過ごすようになると予測しています。Web3.0時代へと進む今、私たちはこれまでよりも一歩踏み込んでデジタル空間上での生活=時間を考えるタイミングに来ていると感じます。
社会生活全般がメタバース上で繰り広げられるとは考えにくいものの、ゲームなどのエンターテインメントを通じて既にメタバースに親しんでいる方も多いことでしょう。消費者として楽しむ傍ら、マーケティング業界にいる皆さんはこの動きがもたらす影響やメリット、事例などにもご関心が高いのではと思います。
そこで今回、WGSNという英国の未来予測企業が取りまとめたエンターテインメント業界におけるWeb3.0時代のアプローチ、NFTの活用事例を前後編でたっぷりご紹介したいと思っています。そこはまさに「トークンが物を言う」とも言うべき世界かもしれません。そもそも、なぜそのような世界観が求められるようになっているのか、についても探っていきたいと考えています。よろしくお付き合いください。