「共通・統合ID」を新しく作る動き
そういった不公平感もあってか、新しい共通IDや統合IDを各社が集まって作っていこうという動きもあります。それは、各社のユーザー許諾済みのメールアドレスや携帯番号などのPII(Personally Identifiable Information)を使って統合ID化し、暗号化した上で管理するものが多く、ユーザー許諾済みの統合IDを使った今までと同様「個」に対して広告配信ができるというもの。また、The Trade Deskが提唱している「Unified ID 2.0」は、最近オープンソース化し、Web広告の業界団体IABの技術LabであるIAB Tech Labが技術開発をリードし公共性を高めています。日本でも複数社が共通IDの構想を立ち上げています。
GoogleとAppleのプライバシー保護のスタンスの違い
どちらもプライバシーに配慮した世界を構築しようと自主的に規制を行っているものの、現状は彼らのメイン事業が異なるために、規制の施策も異なっています。Appleは広告事業の比重が高くないため、より強固なプライバシー保護の施策を事業戦略的に行っており、広告事業をメインとするGoogleとはレベルが異なります。
Appleは、2021年からスマートフォンのデバイスIDもオプトインの許諾性(ATT)となっているほか、新しいiOSでは「メールプライバシー保護機能」と称し、メールマーケティングではよく使われていたメール開封有無の情報も分かりにくくなりました。また、「メール非公開」設定では、自分の興味のあるWebやアプリサービスに登録する際、「Appleでサインイン」の機能を使えば自分のメールアドレスを教えなくても登録できる機能を導入するなど、広告に留まらない範囲でプライバシー保護施策を行っています。これらによって、広告以外の多くの事業者も対応が必要となったりデータ取得に影響が出たりしています。
一方Googleは、広告事業がメインであることもあり、プライバシーへの配慮や分かりやすい許諾説明を通じて、継続して広告活動やデータを使ったマーケティングを行っていく方針だとうかがえます。この具体的な取り組みに関しては、次回紹介したいと思います。