「一本釣り」と「投げ網」の2つで成果を出す
ターゲット企業が限定されている製品・サービスのBtoBマーケティングには、「一本釣り施策」と「投げ網施策」の2通りのアプローチがあります。特定の企業に対して手紙を送付したり、テレアポで直接連絡したりといった、1対1でアプローチするのが「一本釣り」施策です。一方で、ターゲットとなる企業のキーマンが来場する展示会への出展や、業界別のウェビナーなどを行って、ターゲット企業のリードを1対Nで広く獲得するのが「投げ網施策」です。

1対1アプローチする、一本釣り施策
ターゲットとなる企業名や、キーマンとなる方の部署・役職が特定できている場合には、1社ごとに個別でアプローチする一本釣り施策が効果的です。代表的な手法はテレアポや飛び込み営業ですが、無作為なアプローチを繰り返すと、早々にリストが枯渇してしまいます。そもそも、アプローチしたい部署・役職のキーマンに繋がらないことがほとんどでしょう。ターゲットとなる企業数が少ないからこそ、1社1社にカスタマイズした丁寧なアプローチを心掛けましょう。
たとえば、大手企業向けのITシステムを提供している某社では、1社ごとに中期経営計画やIR資料を読み込み、個別にカスタマイズした手紙を送付しています。他にも、次のような方法があります。
社内外の繋がりを活用する
1対1でアプローチするためには、社内・社外の繋がりの有効活用する方法もあります。たとえば、社内の名刺共有システムから過去に名刺交換した社員を特定して取り次いでもらったり、社内チャットで繋がりのある社員がいないか呼びかけたりといった取り組みを行っている企業も存在します。社内にターゲット企業との繋がりがない場合は、i-commonや顧問バンクといった顧問紹介サービスの利用を検討しても良いでしょう。大手企業の経営層に対してアプローチしたい場合には、有効な手段となる可能性があります。
顧客にとって魅力的なコンテンツを“勝手に”送付する
接点のない企業に対する新規アプローチにおいては、商談を獲得するのが難しいケースも多数存在します。そのような場合には、顧客にとって魅力的なコンテンツを用意し、ターゲット企業に勝手に(≒プッシュ型で)送付するアプローチが有効です。
大手企業に特化したITシステムの提供を行っている某社では、著名人を招いたカンファレンスを開催し、接点のないターゲット企業1社1社に招待状を送付することで集客を行っています。ターゲットとなる企業が非常に少ないため、一般的な集客手法であるWebマーケティングではなく、「招待状の郵送」という手段を用いていると考えられます。
また、業界特化型の製品を販売している某社では、月1回ペースで業界特化のフリーマガジン(紙)を作成し、すべてのターゲット企業に毎月送り続けることで、業界内の認知を獲得しています。
1対Nでアプローチする投げ網施
ターゲット企業のキーマンが来場する展示会への出展や、業界別のウェビナーなどを行ってリードを獲得する「投げ網施策」を展開する際には、事前にターゲット企業を定義しておく必要があります。それがなければ、「大量のリード獲得には成功したものの、ターゲット外の企業が大半を占めていた」といった失敗を招いてしまう可能性があるためです。
投げ網施策は正しいチャネルの選択が鍵
投げ網施策における最重要ポイントは「チャネルの選定」です。ターゲット顧客がいない(もしくは、非常に少ない)チャネルを選択してしまい、成果に繋がっていないケースが数多く見られます。その代表例がWeb広告やSEOといったオンラインのチャネルなのです。
Web上での情報収集は一般化していますが、特定の業界においては「Webで情報収集していない」ということも起こりえます。私が前職で担当していた「医療業界におけるIT製品」という市場では、Webで製品・サービスを検索している方はほとんどいませんでした。
「SEOをやろう」「Web広告を出そう」といった施策ありきで考えず、ターゲット顧客が情報収集しているチャネルを把握することから始めましょう。既存顧客や営業担当者にヒアリングしてみると、意外な場所で情報収集しているかもしれません。業界紙への出稿や、業界団体への協賛など、幅広く目を向けて投げ網施策を検討しましょう。
ターゲット企業が少ない製品・サービスのBtoBマーケティングにおいては、書籍やインターネットで定説となっている手法が通用しないケースが散見されます。本記事でご紹介した「一本釣り施策」や「投げ網施策」が、暗中模索している方のヒントになれば幸いです。
「Webマーケティングありき」は失敗のもと
Webマーケティングという手法ありきで考えると失敗しやすいので、注意が必要です。私自身、過去にターゲット顧客がWebで情報収集していないにもかかわらず、Webマーケティングに固執して成果を出せなかった苦い経験があります。「顧客はWeb上に存在するのか」「他の場所で情報収集していないか」という観点で、チャネル選定を行いましょう。