運用型広告の重要項目は、ターゲティングから“クリエイティブ”へ
デジタル広告を取り巻く環境は、小さなアップデートを重ねるように日々変化してきた。マーケターにとっては、仕様やルールの変更、新しい機能や広告メニューのリリースなど、一つひとつの変化に対応し続ける日々である。しかし、数年単位で振り返ると、大きなルールチェンジがひとつ起きている。「クリエイティブ」の重要性が格段に上がっているということだ。
Cookie規制の影響により、ターゲティングでこれまで通りデータを活用できなくなってきた。また、広告配信プラットフォームの機械学習による自動最適化が進み、数年前と比較すると配信の精度は非常に高くなっている。つまり、これまでデジタル広告の運用において重要な要素だった運用それ自体では、成果に差が出にくくなってきているのだ。
クリエイティブ×テクノロジーの力で企業の広告コミュニケーションをサポートするリチカのCMO 田岡氏は、こうした現状について次のように話す。
「デジタル広告には多くの変数があり、さらにその変数を決める仕組みすら変化していきます。マーケターの皆さんは、手探り状態の中でも何とか成果を出そうと日々尽力されているでしょう。ですが、ユーザーが必ず目にするのはクリエイティブであり、ユーザーに情報を届けるのもまたクリエイティブであるという事実が変わることはありません。よって、クリエイティブを磨き続けるということは、デジタル広告の運用において最も重要であり、変数が多い中でも中長期的に改善していける指針になりうるのです」(田岡氏)
意外とできていない。クリエイティブ制作における3つのポイント
リチカは、運用型クリエイティブクラウド「リチカ クラウドスタジオ」の提供を軸に、企業のデジタルマーケティングを支援。ヤフーやFacebookなどの広告配信プラットフォームとパートナー契約を結び、それぞれのプラットフォームにおける最適なクリエイティブについての研究も行っている。
実に400社以上のデジタルマーケティングを支援する同社が、これからのデジタル広告に欠かせないものとして提唱しているのが「運用型クリエイティブ」という考え方だ。これは一言でいうと、デジタル広告を運用する際「クリエイティブの運用」をその主軸に据える、というもの。なぜなら、前述のとおり、広告成果に最も影響を与えるのはクリエイティブであるからだ。
運用型クリエイティブを実践するにあたり、前提として企業に求められる要素として、田岡氏が挙げたのは次の3つ。基本的なポイントにも思えるが、3つともしっかりできている企業は多くないそうだ。
【1】動画+静止画:静止画と動画の両方を配信・運用することが大切。Facebook(Instagram)やヤフーをはじめとするプラットフォームでも、より精度の高い広告配信を実現するために、静止画と動画の両方を配信することが推奨されている。
【2】配信面にあわせた最適化:広告の配信面によって成果の出るクリエイティブ、特に構成、デザイン、サイズなどが大きく異なることは、すでにデータで検証されている。配信面によってクリエイティブの最適化が必要であるが、実際この最適化は全く進んでいないのが現状である。
【3】運用:何度も改善をしながら成果を高めていくというのは、デジタルマーケティングの基本の考え方。その中でも上流のメッセージ整理が肝。クリエイティブの運用においては、メッセージの要素と変数を絞りながら細かく検証を重ねて、勝ちクリエイティブを見つけていくのがセオリー。