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小林佳徳のネットメディア通信

第3回 SNSはビジネスになりえるのか?


消えるサービス・残るサービス

 こうした流れから、ユーザはインターネットの強みを活かしたサービスにシフトしてきたことがわかると思います。ユーザにとって利便性が高く、より深いコミュニケーションが可能な環境へ、と。これまで、掲示板などでやりとりされていたものが、SNSのコメントに取って代わり、コミュニティであれば、よりニッチな趣向のコミュニティがあるところへユーザが集まっていったわけです。

 誤解を恐れずに書くと、インターネット黎明期によく叫ばれた「インターネットはビジネスになるのか」と、本記事のテーマである「SNSはビジネスになるのか」は大筋では、同じ問いかけなのではないかと思うのです。

 2005年3月に書かれた「SNSという難しいビジネス」という記事では、当時閉鎖されたSNSを取り上げて、悲観的な見方がされていました。しかし今、10年前を振り返ってみると、たくさんのインターネットビジネスが生まれ、そのうちのいくつかはビジネスとして立ち行かずになくなってしまいましたが、現在、立派に収益を上げ、継続されているサービスもあります。

 つまり現在、成功事例が少ないからといって「SNSはビジネスとして成り立たないのでは?」と悲観的にとらえる必要はないと思います。

 一例としてあげるなら、「大塚製薬とスカパーによるmixiプロモーション事例」は、成功のためのヒントのひとつかもしれません。また、SNS内のコミュニティ検索結果に関連性の高い広告を表示する「SEM(サーチエンジンマーケティング)」といった、すでにインターネットで成功した仕組みを適用するというのも成功への近道ではないでしょうか。

 語弊はあるかもしれませんが、「やり方次第でSNSは今後十分成功する」というのが今のところの見解です。もちろん、単なる掲示板などと比べれば、ユーザ登録をして、利用するにはそのつどログインしなければならないわずらわしさはあるのですが、それを補ってあまりあるメリットを提供し、それを享受したいと思うたくさんのユーザを獲得しました。

 ただし、「SNSを導入すれば、とにかく今の状況を改善できる」という安易な考えも危険だと思います。冒頭に述べたように、あくまでインターネットの特性を活かせるメディアとして提供されてはじめて効果があるのであって、「日記」「足あと」「コメント」「メッセージ」「コミュニティ」「招待制」を組み合わせた「場」だけを提供すれば、必ずしもビジネスになるとは限りません。

まだまだ広がるSNSの可能性

 SNSの今後の展開として、とにかくネットワークを広げていくことで広告収入によるビジネスメリットを出すパターンでは、やはり大手のmixiの動きは見逃せないでしょう。ニュース記事を配信することで、そこにコメントしたユーザ同士をつなげたり、ユーザが再生した曲目の情報を共有することで、好きな音楽という嗜好性でネットワーク化したり、携帯版の機能強化などはさらにユーザの依存度を上げると思われます。

 反対にむやみに友人を増やすのではなく、すでにリアルでのネットワークを持っている人向けのサービス(旧来のSNS)であれば、より深いコミュニケーションツールとしてニッチな方向へ進む道もあるでしょう。日記や個人情報の細かい公開範囲設定や、友人の分類機能などの強化などにより、例えばVIPのみが登録できる有料プランによるSNSビジネスも考えられます。

 企業内社員のみが登録できるSNS(NTTデータの社内SNS)によるビジネスへの活用なども、昨今のイントラネットの普及度を考えると大いにありえそうですし、今後の効果が期待されるところです。

 また、「ビルコレ」のような、友人がECサイトで購入してレビューを書いた商品を購入することで、レビュアーにポイントバックするアフィリエイトを応用したSNSも面白いでしょうし、各社ポータルサイトであれば、ブログはもちろん、ニュースや占いなどに加え、株式のポートフォリオ情報などを共有したり、ネットオークション、共同購入によるディスカウント部分との連携など、既存のサービスと絡めていくことで利用者をさらに集めていくことができそうです。

SNS型クチコミサイト「ビルコレ」。
ポータルとの連携も注目の「livedoorフレパ!」。

 個人的には、通常の電子メールはスパムが多く配信されてしまうので、大事なメールや、頻繁にやりとりをしない人とのメールはSNSのメッセージ機能でやりとりするということが多くなりつつあります。こういった「アドレス帳」「広義のオンラインプロフィール」「共通の名刺」としての役割なども、今後SNSがインフラとして磐石になれば認められるようになるかもしれませんね。海外ではお見合いSNSなんてのもあるそうです。

 いずれにしてもインターネットがそうであるように、ある一定数以上のユーザを集め、そこで有益な情報のやりとりが行われること、さらに現在の「mixi」のような形にとらわれすぎないことで、「SNS」のビジネスとして成長していく道はまだまだあるのではないでしょうか。

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この記事の著者

小林 佳徳(コバヤシ ヨシノリ)

 1973年山梨県甲府市生まれ。幼少時代にNEC PC6001と出会いコンピュータに興味を持つ。 新潟大学大学院自然科学研究科在籍中にインターネットの可能性に惹かれ、1998年に上京。大日本印刷、ベネッセコーポレーション、と大企業を経験後、livedoor、モバイルファクトリー、イトクロなどのベンチャー企業を経て、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/11/28 21:49 https://markezine.jp/article/detail/384

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