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発話量と実店舗の販売に貢献!花王エッセンシャルのトレンドテイクオーバー活用術

 本記事では、花王がヘアケアブランド「Essential THE BEAUTY(以下、エッセンシャル ザ ビューティ)」を対象に行ったTwitter活用について、同ブランドのマーケティングを担当する花王の小林氏と、企画の支援を行った博報堂ケトルの小野寺氏、Twitter Japanの西山氏にインタビュー。Twitterで商品購買を促すためのヒントが明らかになった。

新商品ローンチに合わせて、Twitterのリーチを活かした発信を

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、花王エッセンシャルのTwitter公式アカウントをどのように運用しているのか教えてください。

花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業統括部門 ヘアケア事業部 シニアマーケター 小林 達郎氏

小林:花王エッセンシャル公式はブランドの考えを知っていただくことを目的に、生活者との対話を意識して日々運用を行っています。ブランドに関するニュースがあれば随時お知らせし、日常の何気ないこともツイートして、エッセンシャルというブランドに触れていただく機会を作っています。

 また、その時々のモーメントをくみ取ったツイートも心掛けています。たとえば、梅雨時期は髪のうねりやくせが起きやすいので、それに合わせた商品を紹介したり、1週間の終わりには「今週もお疲れ様でした」とツイートしたりしています。

 このようなツイートを行いながら、「一人一人の可能性を広げたい」というエッセンシャルブランドのパーソナリティ作りを行っています。

MZ:今回、エッセンシャル ザ ビューティを対象にTwitterを活用したキャンペーンを実施したのはなぜでしょうか。

小林:エッセンシャル ザ ビューティの特徴を、テレビとデジタルできちんと生活者の皆さんに届けていきたいと考えたためです。エッセンシャル ザ ビューティは、花王が1976年から生活者の髪の研究を行い、2021年に45周年を迎えたエッセンシャルブランドの集大成として、同年8月にリリースされた新商品です。

 新商品では、キレイな髪を実現するために「髪のキメ」に着目し、髪の1本1本の流れがそろった状態を作り出せるようになりました。この特徴をテレビはもちろん、Twitterの持つリーチ力を活かして、届けていきたいと考えました。

発話を促すハッシュタグでトレンドテイクオーバーを実施

MZ:では、実際に行った施策の内容について教えてください。

小林:今回の施策では、2021年の8月30日を皮切りに、計3回(※2022年2月時点)のトレンドテイクオーバーを活用しました。トレンド欄の一番目立つ箇所に掲載できる広告メニューのトレンドテイクオーバーを活用することで、多くのTwitter利用者へのリーチを実現するとともに、エッセンシャル ザ ビューティに関する発話を促しました。

 1回目に関しては、「 #アリスの髪に何が見えた 」というハッシュタグでトレンドテイクオーバーを実施しました。エッセンシャル ザ ビューティのテレビCMには女優さんの髪にハート型のツヤが映るシーンがあり、それをクイズ形式で答えていただくキャンペーンをTwitter上で行いました。

 こうすることで一方的な発信だけでなく、Twitter利用者の方からの反応を狙いました。

MZ:博報堂ケトルの小野寺さんにうかがいますが、企画やクリエイティブ部分で意識したことはありますか。

小野寺:今回は、トレンドテイクオーバーの先にある投稿文に遷移してもらうことを意識したハッシュタグを設計しました。私は、トレンドテイクオーバーには大きく2つの活用方法があると思っています。1つはブランドの伝えたいことを広める方法、もう1つはハッシュタグの内容に関心を持たせて投稿文に誘導する方法です。今回の場合は後者を選択しました。

 そのため、今回はテレビCMの内容をベースにして、「なんだこれ?」と思わずハッシュタグをクリックしたくなるような引っ掛かりを生むものを選びました。

MZ:1回目の実施に関して、Twitter Japanから何かアドバイスはしたのでしょうか。

Twitter Japan株式会社 西山氏

西山:プレゼントキャンペーンの期間について、トレンドテイクオーバーに掲出されている24時間限定にすることを提案させていただきました。限定性を持たせることで広告効果の最大化が図れるのではないかと考えたためです。

 その他にも、キャンペーンの参加条件にハッシュタグを付けてツイートすることを追加したほうが良いとアドバイスいたしました。こうすることで、Twitter利用者が広告を見るだけでなく、広告の内容や商品に対してユニークな声を発してもらうことを狙いました。

1回目、2回目を経て出てきた改善点とは?

MZ:では、2回目のトレンドテイクオーバーの内容に関しても教えてください。

株式会社博報堂ケトル プラナー 小野寺 正人氏

小野寺: 2回目は「 #とろめきの髪のアリス 」で2021年の10月25日に出稿しました。前回よりも思わず突っ込みたくなる、目に留まるハッシュタグを意識的に設計し、1回目より広い層へのアプローチを心掛けました。また、今回はトレンドテイクオーバー用に動画素材を作成し、髪のとろめきやキメのそろった状態を訴求することを狙いました。

 ただ、1回目、2回目と実施する中で良かった点と改善すべき点が見えてきました。1回目と2回目で良かったのは、「ハートが見えた」など狙い通りの発話を促すことができ、一定数の方をキャンペーンに誘導できた点です。

 一方、改善すべきと感じたのは、狙い通りではない発話も一定量起きてしまった点です。具体的には、今回起用した女優さんとは違うアニメのキャラクターや作品など、異なるアリスで大喜利をするツイートが散見され、中にはバズったものもあり、狙いと少しズレが生じてしまっていました。

ブランドの会話につながるハッシュタグ設計を

MZ:多くの人にリーチできるがゆえに、狙い通りの会話を引き出す難しさもあるのですね。3回目はどのように改善したのでしょうか。

小林:3回目は2022年の1月18日に「 #パサつく季節に髪のキメ美容シリーズ 」で実施しました。これまでよりも商品にフォーカスしたハッシュタグで会話を促すことにより、エッセンシャル ザ ビューティに関する会話につなげたい狙いがありました。

画像:#パサつく季節に髪のキメ美容シリーズ ツイート

小野寺:1回目と2回目は誘導目的でしたが、今回はブランドの伝えたいことを多くの方に届けることを目的に行いました。トレンドテイクオーバーを実施する場合、気の利いたコピーワークが求められるように思いますが、今回のように訴求ポイントをシンプルに伝えるだけでも、効果的なのが今回の施策でわかりました。

西山:Twitter利用者の多くは、新しい情報を探したいというディスカバリーマインドセットを持っています。そのため、新商品に関する情報を届けても受け入れられやすいのです。

トレンドテイクオーバーで実店舗の販売にも変化

MZ:今回の施策で得られた成果について教えてください。

小林:計3回トレンドテイクオーバーを実施しましたが、1回目の掲載からPOSデータの変化が見られました。また、Twitterでの「髪のキメ」に関する発話量もトレンドテイクオーバー実施前日の30倍程度に増加しました。3回の実施を通じて、一定の手応えを得ることができました。

MZ:今回の施策を通じて得られた知見・学びがあれば教えてください。

小林:一番の学びになったのは、トレンドテイクオーバーが持つインパクトの大きさを理解できたことですね。また、トレンドテイクオーバーの活用方法も模索できました。生活者の発話を促すのはとても難しく、発話量が増えたとしても私たちの狙い通りになるとは限りません。そのため、事前の設計がとても重要だと感じています。

小野寺:トレンドテイクオーバーが売上増加に貢献できることに気づけたのが良かったです。リーチ、エンゲージメントともに申し分ない広告メニューなのは理解していましたが、今回はPOSの変化とも相関が見られました。今後「Twitterトレンドテイクオーバー売れ」のようなことを狙って起こせるのではと期待しています。

今回の施策が上手くいった理由とは?

MZ:西山さんは今回の施策が上手くいった理由について、どのように考えていますか。

西山:Twitter Japanのリサーチチームと今回の施策について分析を行ったのですが、大きく3つの仮説にたどりつきました。1つ目はリップスティックエフェクトが働いたのではないかということ。リップスティックエフェクトとは、不景気な時代に口紅などの手の届きやすい価格帯の小さな贅沢品が売れる現象のことを指します。エッセンシャル ザ ビューティも、その効果が働いたと考えています。

 2つ目は、テレビCMのクリエイティブを見せるきっかけ作りが上手くいった点です。テレビCMに髪のツヤがハートに見える仕掛けを用意したことで、トレンドテイクオーバー経由でキャンペーンに参加したTwitter利用者が多かったと思います。

 そして3つ目は、Twitterのリーチスピードの速さです。Twitterは日常的に利用するユーザーが多く、情報に到達するスピードも必然的に速くなります。そのため、トレンドテイクオーバーの実施当日に広告を見たTwitter利用者が、そのままドラッグストアなどの店舗で手に取ったのではと考えています。

MZ:最後に今後の展望を教えてください。

小林:今後もブランドからのニュースがあるときに、トレンドテイクオーバーをどのように活用するか検討したいです。3月はエッセンシャルブランドが掲げるパーパスを届ける施策を展開しています。

小野寺:トレンドテイクオーバーは、Twitter利用者の方も広告枠と理解しながらクリックしています。そして、一日中目立つ位置に掲載できるので、見る人が嫌な気持ちにならず、思わずクリックしたくなるようなものを企画していきたいです。

西山:Twitterは生活者とブランドの距離を身近にするプラットフォームです。今後もサービスはもちろん、広告メニューを含めて活用できる方法をお伝えして、Twitter経由でモノが売れるような提案をしたいと考えています。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/05 10:30 https://markezine.jp/article/detail/38553