“クラスでおもしろいやつ”のネタが拡散する「シミュラークル型」モデル
テレビタレントやインフルエンサーが発信の主語となっていた従来と異なり、誰でもユーザー自身が発信の主語になる形に変化しているのがTikTokです。
ここで1つ事例を紹介しましょう。2021年にTikTokで大流行した「#超チルなラッパー」をご存知でしょうか? 現時点(2022年3月)で合計2億回以上再生されている一大現象になったハッシュタグです(テキストだと、おもしろさが伝わりづらいので、ぜひ動画を見てみてくださいね)。
▼オリジナルとなったTikTokクリエイター「とびばこ」さんの動画
@k122206211050 #おすすめ #チル #ギャル ♬ #超チルなラッパー - とびばこ
最初の発信源は、TikTokクリエイターの「とびばこ」さん。ファンの質問に対して何気なく唱えた言葉でした。秀逸なワードセンスとテンポ感で「え、あたしの夢っすか? ……超チルなラッパー。」という部分にアテレコして遊ぶユーザーが続出。本家の動画だけではなく、真似して遊んだコピー動画も加わり、二次拡散、三次拡散と拡がっていきました。
興味深いのは「とびばこ」さんのフォロワー数は当時4.6万フォロワーだったこと。このフォロワー数は、従来のインフルエンサーマーケティング観点では決して多いとは言えない数字です。しかし拡散を重ねた結果、多くの人に見てもらえるハッシュタグを生むことになりました。

TikTokでは、“誰でも”話題の発信源になり得ます。この情報消費の新しいあり方は「シミュラークル型」と呼ばれています。
テレビの「マス型」、YouTubeのような「インフルエンサー型」とは異なり、話題の発信源になるために数十万フォロワーを集める必要はありません。たとえ無名に近い存在であっても、自分も投稿したい、真似したいネタであれば、無数に拡散されていきます。
▼GENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバー 数原 龍友さんも投稿
@generations_official_ #CDTVライブライブ #本番前 #数原龍友 #超チルなラッパー #僕の夢はパッパラパー #fyp ♬ #超チルなラッパー - とびばこ
みなさんも小中学生のときに、“クラスのおもしろいやつ”発信のネタが学校中で流行った、という経験があるかと思います。シミュラークル型は、まさにその世界観に近いです。"クラスのおもしろいやつ”のネタが、1つの学校規模を超えて、日本全国・グローバル規模で流行していきます。

企業はどう振る舞えばいい? 動画クリエイター協業というアプローチ
まとめると、TikTokをはじめとする最新動画コミュニケーションに起きた変化は下記の2つです。
・投稿ハードルが下がり、動画コンテンツもUGC化。誰もが発信者になり得る
・"クラスのおもしろいやつ”の動画がグローバル規模で真似され、拡散されていく
こうした変化に企業やブランドはどう対応していけばいいのでしょうか。
先程の"クラスのおもしろいやつ”の例をあげると、企業やブランドはまるで転校生。すでに面白さのトレンドや文化ができあがっているクラスに突然入ってくる存在です。そのなかでクラスメイトとなるユーザーと、どのようにコミュニケーションとるかが問われています。
転校生がクラスに馴染む最短ルートの1つは、まず人気のクラスメイトと仲良くなることでしょう。では広告コミュニケーションにとってこの橋渡し役となる存在は? それは、プラットフォームで人気の「動画クリエイター」だと考えます。転校生である企業やブランドが自分だけで動画コンテンツを作るのではなく、彼ら・彼女らと協力してコンテンツを作るというアプローチへの切り替えが必要です。
こうしたことを意識すると、ユーザーから浮かない・ズレのないコミュニケーションを取ることができるでしょう。うまくいけば企業やブランド自身が”クラスのおもしろいやつ”に認定されることもあるかもしれません。
次回以降の記事では、ワンメディアが最近実践した動画クリエイターと協業するブランディングについて紹介しながら、クリエイター目線の動画コンテンツづくりのヒントを探っていきます。