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社会の変化を追い風にするには?電通デジタルに聞くコロナ禍でも成長する企業の特徴とキーワード

 MarkeZine編集部が刊行した『マーケティング最新動向調査2022』において、コロナ禍で成長した企業の多くがCRMやMAなどのツールを導入し、WebサイトやSNSへの投資も積極的であるという知見が得られた。成長はその直接的な結果なのか、それとも別の要因があるのか。企業支援に注力し、実際に企業の声を聞いてきた電通デジタルの永井康晴氏に、何がコロナ禍での成否を分けたのか取材した。

※本記事は、2022年4月25日刊行の定期誌『MarkeZine』76号に掲載したものです。

コロナ禍で成長した企業の共通点とは

――永井さんはコミュニケーション戦略やマーケティングプラットフォーム導入の支援を行われていますが、コロナ禍に成長した企業の共通点をどうお考えですか。

永井氏:結論から申しますと、「変化への適応」です。コロナ禍では特に顧客とのコミュニケーションにおいて大きな変化が生じました。自宅で過ごす時間が大幅に増えたことでWebサイトやSNS、アプリを利用する時間も増えました。

株式会社電通デジタル テクノロジートランスフォーメーション部門 CRMソリューション事業部 事業部長 永井康晴氏
株式会社電通デジタル テクノロジートランスフォーメーション部門 CRMソリューション事業部 事業部長 永井康晴氏

 業種や企業によっては実店舗ありきの対面コミュニケーションを戦略の中心にしていましたが、顧客が実店舗に足を運べなくなったことで非対面コミュニケーションをせざるを得なくなりました。あまりにも急な戦略変更を迫られたわけですが、これは逆に新たな顧客体験価値を創造するチャンスが生まれたと捉えることもできます。制限が多くどのようにコミュニケーションをすべきか悩んだ企業もあるかと思いますが、この制限をポジティブに捉え、ニューノーマルに対応した新しい顧客体験のアイデアと真摯に向き合い、トライ&エラーを試みている企業、すなわち「変化への適応」が柔軟にできた企業が成長しています。

 具体的には、顧客へのアプローチをリアルだけ、あるいはデジタルだけに限定せず、顧客の嗜好を理解し、マーケティング、およびセールスのプロセスにおいて使い分けられたかどうか。マーケターにとって、コロナ禍は、自社の各チャネルの特性やCXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)の仕組みを再構築するよい機会になったのではないでしょうか。

 また、コロナ禍以前にはチャネルが分断されており、顧客データが散在していた企業もあるはずです。その分断を乗り越え、一人の顧客に正しく情報を紐付けて一貫したコミュニケーションができたかどうかも重要です。チャネルとデータを繋ぎ、対面でも非対面でも一貫性のあるコミュニケーションを実行しなければなりません。

 対面が中心だった企業で非対面を導入するには、まずは、対面・非対面の「デュアル化(アプローチの冗長化)」について、シミュレーションすることが必要です。対面・非対面、それぞれのアプローチに長所・短所があります。先入観を持たず「デジタルならどうか」と考え、さらに「メールよりLINEのほうがいいのでは」など、より適切なチャネルを見つけることも欠かせません。こうした小さな検証を繰り返せている企業は効果を実感できているでしょう。

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2022』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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『マーケティング最新動向調査 2022』の詳細をみる

企業が感じる3つの限界と対応

――様々な課題から、変化したくとも足踏みする企業もあると思います。どうすれば前に進めるのでしょうか。

永井氏:「変化への適応」という視点で、マーケティングアプローチにおいて、自社が感じている課題や限界を明確にしなければなりません。弊社に相談に来られる企業の多くはコミュニケーション、エンゲージメント、イノベーションの3点で既存の方法に限界を感じており、CRMなどのテクノロジーを活用して効率化し、競争優位を築きたいと考えています。

 まず、コミュニケーションについてです。

 たとえば、顧客とのコミュニケーションにおいて、コールセンターが重要なチャネルであることは周知の事実です。しかし、顧客セグメントによっては、Webサイト上でのチャットのほうが、効果が見込めるアプローチがあるかもしれません。ちょっとしたお知らせであればLINEで友だちとして繋がって発信することも当たり前になりました。顧客と繋がるチャネルの多様化・複雑化を捉えつつ、チャネルの特性を踏まえ、顧客が望むコミュニケーション手段の在り方を再定義する必要があります。

 次に、エンゲージメントについてです。

 顧客やユーザーとの関係性を維持するには、もはや、デジタルとリアルのアプローチの融合が不可欠です。

 CRMはデータドリブンな観点で、効率的に顧客と繋がり、関係性を維持・強化するために有効です。また、MAは、適切な顧客に、適切なタイミングで、One to Oneのアプローチでメッセージを配信し、顧客の態度変容を促すソリューションです。従って、顧客とのエンゲージメントを高める視点で、テクノロジー・データの活用が差別化のポイントとなります。成長している企業では、コロナ禍であるからこそ、デジタルを活用した顧客との物理的な距離を埋める取り組みや、これまでアプローチできていない顧客へのアプローチの強化が加速しています。

 最後に、イノベーションについてですが、デジタル施策の利点をビジネスチャンスに活かせているかどうかがポイントになります。デジタル化の大きなメリットとして顧客への素早いアプローチとデータに基づく顧客の反応捕捉が可能になる点があります。施策の反応がすぐわかるようになりますし、最適化もやりやすくなります。場合によってはデータ分析から兆候を捉え、未来を予測するなどサービス自体の在り方も変えていけます。

 ただし、現実的には、デジタルに振り切る企業は少なく、リアルをベースにデジタルを融合させたい、デジタルでしかできないことを取り入れたいという要望が大半です。分断ではなく融合の視点で、リアルとデジタル双方の価値の最大化を目指すことが重要です。

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2022』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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成長の鍵は組織改革と人材育成

永井氏:こうした課題と限界を認識した上で、変革を進めるには“仕組み創り”が大切です。その仕組みの根本にあるのが組織と人。テクノロジーを導入するだけでは変革は起きません。

 組織改革と人材育成をいかに実現していくかが鍵ですが、そのためには、上層部からスタイルの変革に関するコミットメントを全社へと強く伝える必要があります。今までとは異なることをやっていくには多大なエネルギーが必要であり、それは全社的に取り組まなければ生まれないのです。

MarkeZineの調査でもツール投資に比べ、役員や組織設置に取り組む企業は少ない(タップで画像拡大)
MarkeZineの調査でもツール投資に比べ、役員や組織設置に取り組む企業は少ない(タップで画像拡大)

 組織改革については、部門横断的なコア組織を作ることが重要です。部門ごとにKPIが異なることが障壁になるかもしれませんが、共通のKPIを段階ごとに設計して分断を解いていくことで、シームレスなコア組織を形成することが可能です。そうすれば、一貫性のあるマーケティング戦略を実施できるようになっていきます。

 もちろん、組織改革が最も難関でしょう。ですから、リーダーやプロジェクトオーナーを経営層がサポートすることが欠かせません。たとえば、会議で出たアイデアを持ち帰って部署の責任者におうかがいを立てていては時間がかかりすぎます。その場で意思決定をして横断的に部署を動かせる権限をリーダーに持たせなければなりません。そして、組織を可視化する必要もあります。誰がどこで何をやっているかが周りから見えなければ、協力は得られにくいですからね。

 変革を前に進めるなら、価値をしっかりと共有した上で、組織整備から始めることをお薦めします。企業によって文化やスタイルは異なりますが、短期集中でトライ&エラーに取り組むことが功を奏するのではないでしょうか。

 人材育成については、もう少し中長期で計画します。新しく導入したツールの使い方や汎用的なスキルの習得には段階を策定し、進捗を定期的にチェックすることが有効です。

ナレッジの蓄積が今後を左右

――お話をうかがうと、コロナ禍の前後で変革を進める下地ができた企業が結果を出したのだと感じます。一方で成長の二極化が進んでいる今、既にできてしまった差を埋めることは可能でしょうか。

永井氏:どのようなゴールを設定するかによって違いますし、何をもって変革と呼ぶのかにもよりますが、ビジネスは継続していくことがなによりも大事です。長いスパンで絵を描いてみたとき、半年や1年の差はそれほど大きくありません。

 いずれにしろ、現時点での競合他社との差を見るよりも、自社がどれだけビジネスを継続できるのか、変革に向き合っていけるのかを考えたほうが有益です。それができれば、他社との差はおのずと埋まっていきます。

 変革に向き合うこと、変化に対応することとは、要するにナレッジがどれだけ蓄積したかです。数字的な結果、たとえば売上の成長だけがゴールではありません。失敗のナレッジの蓄積こそ、変革にどれほど取り組めたかの証しであり成長の足跡です。他社に尋ねても教えてもらえませんし、自社が取り組んだからこそ残していける重要な資産、競争優位性の源泉となるはずです。

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2022』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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『マーケティング最新動向調査 2022』の詳細をみる

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/18 12:00 https://markezine.jp/article/detail/38788